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空き家をシェアハウスとシェアラウンジへ
地域住民が集う「まちのリビング」を目指す
地域に開かれたシェアハウス「こずみのANNEX(アネックス 以下、アネックス)」は、2023年3月、横浜市金沢区にオープンした。地域住民が集まる第2の家になるような場所を目指して、運営されている。
(左から)
関東学院大学 建築・環境学部 酒谷粋将准教授(36)
食卓八景(横浜市) 平野健太郎代表(46)
藤原酒谷設計事務所(横浜市) 藤原真名美代表(37)
地域住民が気軽に利用する場所へ
幅広い年齢層の地域住民がラウンジに集まり、宿題や仕事を進めている。ここは、京浜急行電鉄本線金沢文庫駅から歩いて10分の場所にあるアネックス。築55年の空き家をリノベーションし、学生が住むシェアハウスと、誰でも利用できるシェアラウンジにした。
手がけるのは、関東学院大学建築・環境学部の酒谷粋将准教授と、藤原酒谷設計事務所(横浜市)の藤原真名美代表の夫妻。2人は2019年横浜市金沢区に引っ越してきた。その後、まもなく新型コロナウイルスの流行が始まった。夫妻が入居したアパートには、住民が活発に利用していたシェアラウンジがあった。しかしコロナ下で使われなくなり、夫妻はもったいないと感じていた。そこで、家主である任意団体の食卓八景の平野健太郎代表に、シェアラウンジのイベントの企画を持ち込んだところ、3人は意気投合。
夫妻が建築や設計の分野に携わっていることもあり、平野代表はかつて祖父が住んでいた空き家の活用方法を相談した。夫婦は空き家の現況を確認し、ポテンシャルの高さを確信。再生プロジェクトが決まった。
以前から平野代表は、同区に地域住民が手軽に利用できる低料金のシェアラウンジが必要だと考えていた。ただ、ラウンジだけでは施設の運営が成り立たない。物件の収益によってラウンジを運営するという、シェアハウスの構想を得た。
改修のワークショップには、酒谷准教授のゼミのメンバーや地域住民が参加。地域住民の利用を促すためには、物件がある小泉町内会の協力が欠かせないため、その人々の要望を集めた。改修時から地域住民と協力した理由の一つに「ヨコハマ市民まち普請事業」の補助金申請条件を満たす目的もあった。
だが、補助金だけではリノベ費用のすべてを賄うことができなかった。人々のつながりを生むためにも、現在も「考える・つくるワークショップ」を開催し、改修を続けている。
地域住民の活用機会を増やす
「シェアラウンジを開放していても、中が見えないと入りにくいと思います。外から見えるようにリノベし、地域住民が立ち寄りやすい仕掛けをつくりました」と酒谷准教授は話す。
シェアラウンジは、予約制の貸し切り利用と、シェアラウンジの開放日なら誰でも気軽に滞在できる「ふらっと利用」の使い方がある。宿題やテレワークをする場所など、さまざまな目的で利用されている。
ふらっと利用の日には、運営メンバーが見守りを担当する。運営メンバーは、10~70代までの約20人。ふらっと利用を経験し、運営メンバーに加入するケースも多い。幅広い年代の運営メンバーが見守りを担当することで、アネックスの利用者も多様だ。
「地域住民にはアネックスを第2の家、『まちのリビング』として使ってほしいですね。利用者同士で、第2の家族のような関係性を築くことができるように、ふらっと利用のオープン日を増やすことが目標です」(藤原代表)
アネックスがまちのリビングとして定着するためには、地域住民の利用頻度を増やす必要がある。そのために、今後も継続した取り組みを続けていく。
(2024年8月号掲載)
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