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- Regeneration ~建物再生物語~古民家再生:古民家がギャラリーに
再建築不可ゆえ残っていた古民家
ギャラリーとして復活させる
接道わずか90cmの小道を進むと、豊かな緑に包まれた庭とクラシカルな丸窓のある古民家が現れる。JR中央線吉祥寺駅からバスで10分ほどの場所にある古民家ギャラリーカフェ「庭のみち」だ。ギャラリーでは作品展示のほか、月に1回幼児向けの読み聞かせ会やセミナーなどを催している。
長広洋子オーナー(東京都武蔵野市)
「ギャラリーをつくることは私の夢でした」と長広洋子オーナー(東京都武蔵野市)は話す。というのも、亡くなった友人で絵本作家の三井小夜子氏の作品を保管・展示できるスペースをつくるため、都内に築古の庭付き戸建てを購入しようと思い立ったことがきっかけだったからだ。
だが、ギャラリー経営だけでは生活を成り立たせるのは難しいだろうと、賃貸経営を開始。自宅マンションの貸し出しから始め、2022年に購入した群馬県桐生市の戸建てや岡山県の実家を含め4戸を取得した。
こうして戸建て再生の勉強・実践を重ねながらも、なかなかこれぞと思えるギャラリー向け物件には出合えなかった。23年になり、不動産会社から「いい物件が出た」と連絡を受け見学に行ったところ、屋根は落ち、畳からは草が生えているような築70年の戸建てに案内された。
普通であれば尻込みしそうな状態ではあったが、すでに築古戸建てを所有していたことで「どんな物件でも再生できる」という自信があった。さらに、破れた天井部分からのぞいている太い梁を見て、古民家かもしれないという期待もあった。
20年ほど空き家になっており、持ち主も地方に住んでいたことから、1000万円割引の1980万円で購入した。天井を剥がしてみると、やはり立派な梁のある古民家だった。「再建築不可で建て替えができなかったからこそ東京23区内にまだこんな立派な古民家が残っていたのでしょう」(長広オーナー)
土地・建物は安く入手できたが、リフォーム代がかかることは明白だった。そこで賃貸に出していた自宅マンションを売却し、その費用で取得費とリフォーム代を賄った。梁と柱を残し、ほぼ全面リフォームを行い、屋根は瓦ぶきからスレートぶきに変更。壁には筋交いを入れることで耐震性を強化した。
築古戸建て再生勉強会で知り合った仲間たちも一部DIYで参加しながら1年半かけ、24年6月に庭のみちがオープンした。インターネットで知った人や近所の住民が訪れているという。
細い小道の先で長年、誰にも顧みられなかった古家が、オーナーの亡き友人の作品をきっかけに息を吹き返した。
(2024年12月号掲載)
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