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- 賃貸住宅フェア 2024in東京 セミナーダイジェスト:空き家活用
8月6〜7日の2日間、「東京ビッグサイト」で開催された「賃貸住宅フェアin東京」から、セミナーレポートとして2つの講座をダイジェストとして紹介します。
セミナーテーマ
借地権を買い戻し古家再生「753village」でエリアの価値上げる
■講師
八廣(横浜市)代表取締役 齋藤好貴氏(62)
まちに新しい価値〝空き家活用〟先駆け
横浜市緑区中山で、「753Village(ナナゴーサンビレッジ)」というエリアの運営をしている。この地域は、私が借地権を買い取った土地の空き家物件を活用しているうちに、いろいろな人が集うようになったものだ。現在8軒が一つのエリアに集まっている。753は「なごみ」をあてたもので、Villageは村。大きなまちではなく、一地主が管理している狭いエリアに人が集まってできた共同体と考えてもらいたい。
私は元々この地域の地主で、この土地も誰かに貸していたものを、建物と併せて買い戻した。築50年を超えるような古い戸建てを建て替えずに再生しようと思ったのは、この中にある「なごみ邸」がきっかけとなっている。
1990年代当時は少子高齢化時代が始まり、急速に進行していくといわれていた。借地人の中にも高齢者の予備軍ともいえる人がたくさんおり、5年後、10年後には高齢化が進む。庭付きの広い物件には住み続けられない、というような状況がたくさん発生すると予想した。
更地にして賃貸物件を新しく建てることで土地の価値を保ち、さらに上げていけるのか疑問に感じた。賃貸住宅を建てることは、ほかの地区の地主もやっている。この場所を「選ばれる土地」にしたかったのだ。
土地の価値を上げるためには、みんなに興味を持ってもらえる地域、土地にしなければならない。そう考えたとき、試しにこの古い建物をそのまま使ってみたらどうかと思った。今でいう〝空き家活用〟だ。
カフェや貸しスペース 口コミで縁つながる
そうして誕生したのが、なごみ邸だ。敷地が広く、建物は風情がある純日本家屋で、桜の木が植えられた庭もある。これを貸しスペースとして運用したところ、いろいろな人たちが使ってくれた。最も多い用途は30人くらいの規模のサロンコンサート。小さな規模でコンパクトな演奏会をするのに便利ということだった。
続いて、なごみ邸の近くに貸していた土地を家付きで引き取り、カフェにした。現在は発酵食に特化したカフェレストランをやりたいという人に貸して、「菌カフェ753」として運営してもらっている。
それ以降も、周辺の土地の借地権を買い戻していき、さまざまな用途で使える建物として運営するようになった。教室専用の貸しスペースである「楽し舎」。小規模の貸しスペース「季楽荘」。情報交流センターをはじめ、多様性がある用途のスペースを集めた「Co─coya(ココヤ)」などだ。いろいろな発想の人が、口コミやインターネットなどをたどり、巡り巡って縁としかいえないようなつながりを持って、このエリアに集まってきた。
私自身もCo─coyaで月に何度か駄菓子屋を開いている。地域の子どもたちとコミュニケーションの場をつくることができたのはうれしいことだ。
今では、ここに住みたいという人も出てきた。2024年の4月にはこのエリアに、戸建てを3戸新築した。いろいろな世代の人たちが、活気を持って生活をし、仕事をして、楽しみなことをする。これからはそれができるエリアの価値が高まり、人に求められていくのだと思う。
八廣(横浜市)代表取締役 齋藤好貴氏(62)

(2024年12月号掲載)
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