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- Regeneration ~建物再生物語~10年放置されていたメッキ工場 緑あふれるカルチャースポットに
ROUTE BOOKS(ルートブックス)
JR上野駅から徒歩5分。メッキ工場の倉庫兼事務所として使われていたRC造3階建ての建物(築年数不詳)が、2016年にブックカフェ「ROUTE BOOKS」として生まれ変わった。手がけたのは、リノベーションに特化した工務店、ゆくい堂(東京都台東区)の丸野信次郎代表だ。
ROUTE BOOKSは、4000冊を取り扱う書店を兼ねたカフェ。亜熱帯植物が展示販売された緑あふれる空間で、コーヒーやパンを片手にゆっくりと本と向かい合うことができる。「路地裏に本屋があったらおもしろいと思って始めましたが、この空間が本業の工務店の宣伝になっています」と話す丸野代表。
同店の向かいには、ゆくい堂の事務所と作業場がある。元メッキ工場で、築約40年のRC造4階建て。15年に同社が本社ビルとして、工場を丸ごと借りたのが始まりだ。4階で書店を開き、翌年に空いていた向かいの建物も借りることにし、ROUTE BOOKSを移転した。
メッキ工場は土壌汚染の恐れがあるため建物の取り壊しが難しく、丸野代表が見つけたとき、建物は10年間放置されていた。だが、リノベを専門とする丸野代表にとっては「宝のようなビル」だった。オーナーから建物を自由に使っていいという許可を取り、更新して借り続けられる普通賃貸借契約を結んだ。
丸野代表は、モルタルが剥がれ落ち、雨漏りもしていた建物を自ら補修。工務店の現場で出た廃材を再利用して床や建具、家具を制作することで、武骨な雰囲気でありながら、木のぬくもりを感じさせる空間を作り上げた。オーナーからは、資産価値を大きく向上させたと喜ばれているという。
同店では陶芸教室、英会話教室も開催し、週末には本格的な南インド料理を味わえる「ROUTE CURRY」がオープンする。また、向かいのゆくい堂本社ビルでは、多様なジャンルのミュージシャンによるアコースティックライブも多数開催していて、ライブ鑑賞を機に、ROUTE BOOKSやゆくい堂を初めて知る人も多い。地元との関係を大切にし、地域の人々をイベントに招待することもある。
店を訪れる人同士のつながりも多く生まれ、ROUTE BOOKSはさまざまなカルチャーの発信拠点となっている。「僕は場所をつくっただけ。ここにはクリエーティブな人たちが集まり、地元住民ともつながって新しいコミュニティーができました」と丸野代表は語る。