業界トレンド最前線! Topics:ZEH水準の賃貸にフルリノベ

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奥村組所有の築48年の社宅 一棟全戸ZEH水準の賃貸にフルリノベ

 総合建設会社の奥村組(大阪市)と、住宅メーカーの積水化学工業(同)、ワンストップリノベーションサービスを提供するリノベる(東京都港区)の3社は、奥村組が社宅として使用していた兵庫県西宮市津門大箇町にある築48年の集合住宅をフルリノベ。3月、一棟全46戸がZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)水準の賃貸マンションとして生まれ変わった。

 物件名は「OC RESIDENCE(レジデンス) R NISHINOMIYA OGO(ニシノミヤ オオゴ)」で、阪急電鉄今津線阪神国道駅から徒歩7分の好立地。敷地面積は1850・31㎡で、RC造7階建てだ。単身者向けが21戸、ファミリータイプが25戸となっている。

 

 最大の特徴は、全住戸で建築物省エネルギー性能表示制度「BELS(ベルス)」の「ZEH Oriented(ゼッチオリエンテッド)」を取得していること。建物の構造体以外のすべてを解体し撤去するスケルトン工事を行い、給排水管や配線、内装、設備などをすべて新設。断熱には、積水化学グループが展開する「マルリノ」の断熱特許工法を採用した。

 この工法は、湿気・熱を遮断する断熱気密構造で結露・カビを抑制するほか、施工時に電源が不要で、建物サイズに合わせた断熱ボードをはめ込む技法だ。そのため、施工しやすく安定した品質を確保できるという。このほか、インナーサッシの新設や高効率エアコンなどで省エネを実現している。目安光熱費は年間約11万5000~15万2000円と試算され、新築住宅の省エネ基準と比較しても年間約3万~4万円の削減効果を見込めるという。


 全戸がZEH水準である以外にも、自然を都市や建築に取り込む「バイオフィリックデザイン」を採用している点が魅力だ。奥村組の創業地である奈良県の間伐材「ならもく」を部屋番号のサインや意匠のアクセントに採用するなど、共用部・専有部の各所に木のぬくもりが感じられる。建物の中央には中庭を、その奥にはドッグランを設けた。

 同リノベは、奥村組のCRE(企業不動産)戦略の一つ。現在の基準においても十分な耐震性や耐久性を有していることを確認したうえで、デザイン面・機能面のバリューアップを行っている。同物件のほか、25年に5棟の所有社宅を賃貸物件として再生し、収益化まで行うことにより、良質な住宅ストックを循環させ、持続可能な事業性を実現した。

 通常のスケルトンリノベと比較した、工事坪単価の増額分は8万~10万円ほど。家賃は9万9000~13万5000円(共益費込み)と周辺相場よりも高く設定することができている。
(2025年 6月号掲載)

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