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- 【特集】原状回復のコスト削減術:部分工事や清掃で費用を抑える
部分工事や清掃で費用を抑える、内見者に好印象を与える点も重視
築30年以上の築古物件の再生工事を強みに賢くコストを削減するアイデアを生み出すほか、現在管理会社でもある満室ラボ(愛知県一宮市)の傍島啓介社長に聞いた。
床材選びは長期的な目線も重要
「最近はたばこを吸う人が減ったため、部屋の壁全面を貼り替えることは少なくなりました。部分貼り替えとクリーニングで予算を抑えることが多いです」と話すのは、傍島社長。
同社の管理物件は愛知県、岐阜県、三重県内にあり、そのうちの約75%が築30年以上の築古物件だ。退去時には100%入居者立ち会いの下、借主負担となる傷、汚れなのかをまずはっきりさせる。そして、クリーニングできれいになる汚れかを調べるという。
クロス・クッションフロアなどの経過年数と貸借人負担割合(耐用年数6年・定額法の場合)
「壁紙の場合、消しゴムとメラミンスポンジがあれば、落ちる汚れがどっちかを調べられます。キッチン周りは油汚れになるので、市販の台所用洗剤を使います。汚れが落ちる箇所はもちろんクリーニングで、落ちない箇所は一面を貼り替えます」(傍島社長)
クリーニングだけで済む場合、全面貼り替えにかかる費用に比べて、2~3割の費用で済むという。もちろん作業時間も1日あれば十分であるため、時間的メリットも大きい。
一面貼り替えになるのは、キッチンや洗面室など水が飛ぶ箇所、ベッドやソファの周り、エアコンや天井照明の設置部分で電気焼けした箇所だ。貼り替える壁紙の色は、周囲と合わせるが、メーカーや品番が異なるため、色が微妙に異なり、変に目立つことも多い。
「一面貼り替えにはアクセントクロスを使っています。そこだけ貼り替えた安っぽい感じにならず、手をかけた印象になるのです。周囲の壁紙の色と全く違う色を組み合わせたり、周囲と同じ色でも少し柄があるものを選んだり。最近は、一番安い価格帯にも色や柄入りのクロスがあり、種類も増えています」(傍島社長)
フローリングは、傷んできて貼り替えが必要になった場合、オーナーの意向に合わせて2パターン提案していると傍島社長は話す。
「費用をとにかく抑えたいオーナーには、クッションフロア。将来発生する費用を抑えたいオーナーには、フロアタイルを提案しています。30㎡の部屋なら、クッションフロアはフロアタイルより5万円前後安くなるので、原状回復する部屋数が多い場合、クッションフロアを選んで、次回、フロアタイルに変えてもいいと思います」
積極的な設備投資で汚れを目立たせない工夫
満室ラボの原状回復工事の事例から2点
「壁紙を貼り替えずに済ませるための工夫として、天井の照明器具やキッチンのコンロを付帯設備にするという手もあります」と傍島社長は話す。
照明器具の電気焼けで天井の壁紙が変色した場合、照明器具を外した状態だと変色が目立つが、設置されていれば隠れるケースが多いからだ。
「天井のシーリングライトは、リモコン付きで3000~4000円で購入できます。それで汚れが隠せて貼り替える費用が省けるのです。LED電球だと交換も10年はしないで済みます。照明器具が付いていると部屋の電気をつけて内見者を案内でき、部屋の印象もよくなるため、付帯設備にする提案もオーナーによくします」(傍島社長)
同様に、キッチンのステンレス部分も、コンロを設置することで汚れが目立たなくなるケースが多いそうだ。ガスコンロは2万~3万円で購入することができ、ポータルサイトに物件を掲載する際にも、「ガスコンロあり」として表記することができるようになる。部屋探しをしている人や内見者へのアピールになることから、オーナーに提案しているという。
そうした設備投資では、キッチンや浴室の水栓交換も有効だという。水用とお湯用、二つのハンドルで湯温の調整をする混合水栓から、シングルレバーの混合水栓に取り換えることで、クリーニングの費用を抑えつつ、入居者の使い勝手向上につながるアップデートを行うことができる。一部の設備が新しくなっていると、内見者に新しさをアピールする作用もある。
クリーニング事業者の腕前はカーテンレールに表れる
傍島社長はもともとハウスクリーニングを請け負う清掃会社で働いていて、原状回復のクリーニングを担当することも多かった。今もハウスクリーニングが終わった際、三つのポイントをチェックするという。
一つ目は、キッチンなど水回りにおいて、金属製の水栓やシンクといった、きちんと掃除されていれば光るべきものが光っていること。内見者の視線が行く場所でもあるからだ。二つ目は、同じくキッチンや浴室の排水口。ふたを外して、掃除されているかを確認する。三つ目はカーテンレールで、カーテンをつるすランナーが左右どちらかにそろっていることだという。
「きれいにするという観点だと、カーテンランナーのばらつきは汚れではないですが乱れて見えて、気になるはずです。それを見逃すということは、あちこちの汚れを見落としている可能性が高いのです」(傍島社長)
(2024年2月号掲載)
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