著者インタビュー:作業療法士が伝えたい ケガをしない家づくり 住宅内事故を防ぐ50の方法

賃貸経営リフォーム・リノベーション

作業療法士が伝えたい ケガをしない家づくり 住宅内事故を防ぐ50の方法

著者:満元貴治
出版社:学芸出版社
価格:2420円(税込み)
概要
住宅内のけがを防ぐにはどうすればいいのか―。作業療法士の著者が、バリアフリーにとどまらない医療の視点に立った安全な家について解説している。独自に作り上げた「安全持続性能」の基準をイラスト入りで紹介しており、家の中の玄関や廊下、階段、トイレなどで、どのような対策が効果的かがわかる。高齢者や障がい者が安全に住まうことができる賃貸住宅を建てるときに最初に読みたい一冊だ。


「安全持続性能」備えた家の普及を目指す

─作業療法士として医療の視点に立って、生活の中でのけがを防ぐ家について啓発していますね。
「安全な家づくりアドバイザー」として講演活動や住宅関連企業の顧問を務めながら、家の安全性を評価する独自の「安全持続性能」基準の普及を進めています。
─きっかけは何だったのですか。
 作業療法士として3000人以上のリハビリテーションに従事し、多くの人が、転倒など住宅内の事故でけがをしていることがわかりました。患者の退院支援の一環で住宅改修や家屋調査にも携わり、「住宅内の事故を予防できる家であれば、住む人をけがから救うことができる」と思ったのです。
─安全持続性能について教えてください。
 子どもからお年寄りまでの体の特徴を捉え、病気や老化で体が変化しても安心して住み続けることができるように、間取りの安全性をみる基準です。玄関、階段、トイレなど、対象を13項目に分けて、それぞれ一つ(最下位)から三つ(最上位)の星の数で安全性を評価します。例えば階段であれば、手すりが設置されていたら星一つ、利き手側もしくは両側に設置され、かつ足元灯や踏面に滑り止めがあれば星三つです。階段の手すりも最初の数段というごく低い段数であっても設置することで安全性が高くなります。現在、申込者には基準を書面化したものを無料で配布しています。
─家主がけがをしない居室をつくるために何に重点を置くべきか知りたいです。
 トイレの設計ですね。入居者がけがや老化で介護が必要になることも想定して、ドアを引き戸にし、便器の向きも引き戸と並行にすることで、転倒のリスクにつながる方向転換を少なくすることができます。また、中古物件では、トイレを引き戸にするだけであれば大きな改修にならず効果的です。フローリングと畳の部屋の境目に段差があれば、段差解消のスロープの設置もおすすめです。戸建ての賃貸物件の場合は、玄関土間や浴室に椅子を置くと靴や服の着脱時の転倒を予防できます。
─賃貸業界で、そのような住宅を普及させるには何が必要ですか。
 実績ですね。安全持続性能を取り入れた20戸の高齢者向け賃貸住宅が広島県で計画されています。この広島での事例が普及への一歩になれば幸いです。


著者プロフィール
満元貴治(みつもと・たかはる)

1987年、広島県生まれ。作業療法士。病院に11年間勤務し、3000人以上のリハビリテーション、100件以上の住宅改修、家屋調査に携わる。2021年に退職後、独立。安心・安全な住宅内環境をテーマに「安全な家づくりアドバイザー」として活動している。22年にHAPROT(ハプロット)を設立。顧問先、協業先は20社以上で講演実績も多数。

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