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築50年の戸建て賃貸をカフェにリノベ 今と昔が同居する空間に人々が集う 松葉ビレッジ
井上美恵子オーナー
福岡県久留米市の住宅街の一角に、今と昔を同時に感じられる場所がある。カフェとコミュニティースペース、賃貸住宅から成る「松葉ビレッジ」だ。250坪の敷地に、カフェを含む平屋の木造戸建て賃貸住宅「松葉ハウス」が4戸と、2階建て4戸の木造アパート「松葉荘」、木造戸建て賃貸「松葉ハウス離れ」3戸が立っている。松葉荘の2階の1戸はコミュニティースペースだ。
▲カフェの店内は、大きな窓から入る日差しで明るい
松葉ビレッジは井上美恵子オーナー(福岡市)の夫が2009年に相続したとき、すでに全棟が築35年前後だった。建て替えも検討していた中、京都市内の町家長屋「あじき路地」や古民家などを巡るうちに、寺社仏閣も含めた木造の建物は人の手で直して使い続けられることを実感したという。
折よくDIYで賃貸物件の価値向上を目指すオーナーと出会い、勉強会やセミナーなどに参加。18年からは退去のあった部屋を自らDIYし始めた。「自分が住みたい、自分がワクワクする部屋を意識してDIYをしています」(井上オーナー)
次第に、人々が自然と集える場所をつくりたいと思い始め、松葉荘の1戸を地域のコミュニティースペースとして開放。「お母さん業界新聞」を発行する「お母さん大学」福岡支局の拠点としても利用されている。
さらに、当時築50年の松葉ハウスの1戸を改装し、22年10月にオープンしたのがカフェ「おごちそう”とあんこ 空cafe(カフェ)」。「柱に残る傷や木材の色味など、建物の“味”になる部分は極力生かしました」(井上オーナー)
元は床面積53.8㎡の3DKに納戸が付いた平屋の居住用物件だった。改装にかかった費用は200万円弱。そのうち100万円は、カフェの店主に自由に使ってもらった。井上オーナーの友人で、工事を請け負ったDIY的手法を得意とする職人チーム「BASE(ベース)」や、カフェの店主と相談し、以前の床の間や梁はりを生かした和モダンなデザインの店内に仕上がった。
今では、近隣住民やSNSで見た人など多種多様な年代の人が、ゆっくりした時間を過ごせる空間となった松葉ビレッジ。不動産会社に「このままでは2万円台まで下がります」と言われた家賃が、一連の改装で最大2万2000円アップしたうえ、入居者の年齢も若返った。
「古さがデメリットにならないように魅力を高めて、地域の人や受け継ぐ次の世代にも喜んでもらえる物件にしたいです」と井上オーナーは笑顔で話す。
▲(After)古さと新しさが同居する落ち着いた空cafeの外観
▲(Before)改装時に道路からの目隠しと
なっていたブロッグ塀は取り壊した
▲元々あった床の間をそのまま生かした改装後の店内
▲改装前の松葉ハウスの室内。
古さは感じるもののきれいな状態だった
▲リノベ後の松葉荘202号室。
築50年以上とは思えないほどのモダンな印象
▲松葉ハウスの玄関で使われていたタイルを空cafeの柱に埋め込んだ
▲自宅のようにくつろぐことができる
コミュニティースペース
(2024年6月号掲載)
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