【特集】事前の対策で差がつく 高齢者の受け入れ方④

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見守りサービスでリスクを回避

 死後事務委任契約は入居者の死後に効力を発揮するが、入居者の「いざというとき」を見逃さないためのサービスが見守りサービスだ。近年、IT技術を用いて入居者のプライバシーに配慮した、各社各様の見守りサービスが登場している。

ヤモリ/みまもりヤモリ

高齢入居者を見守り、月額1100円

ヤモリ(東京都渋谷区)
藤澤正太郎社長(37)

 不動産オーナー向けに情報発信やシステム提供を手がけるヤモリ(東京都渋谷区)は、高齢入居者の見守りサービス「みまもりヤモリ」を提供している。

 通信機能を搭載した専用端末のモーションセンサーで入居者の動きを検知する同サービス。居室や玄関付近などの生活動線にモーションセンサーを設置することで、検知漏れを抑制。一定時間内に動きがなかった場合、管理会社やオーナー、親族などに通知する仕組みだ。

 端末は単4形乾電池2本でおよそ2年間稼働する。公共電波で通信を行うため、Wi-Fiは不要。管理会社には専用のクラウドソフトを無料で提供する。初期費用は無料、月額1100円(税込み)から。23年5月にリリースし、24年5月末時点で約50社の利用がある。

オプションで保険も付帯

 さらに、あいおいニッセイ同和損害保険(同)と共同開発した孤独死保険もオプションで提供する。居室内で死亡事故が発生した際に、清掃費や家賃減額分を補償。1室あたり月額200円からみまもりヤモリに付帯することができる。

 3月には、山梨県道志村とも提携。高齢者住宅の10世帯に設置し、緊急時には役場が連絡を受ける形で1年間、試験運用をしている。同村ではこれまで、単身高齢者に月2回、電話をかけて安否を確認していたが、運用上の負担が大きかったため、みまもりヤモリの導入を検討した。

 5月からは朝日新聞社(東京都中央区)と提携し、「朝日みまも郎」の名称で販売店を通じて新聞購読者にサービスを訴求している。まずは大阪府内の販売店およそ70社が、40万世帯に向けて折り込みチラシを使って周知を開始した。

 藤澤正太郎社長は「サービス付き高齢者向け住宅や介護施設からのニーズも⾼く、既に導⼊を進めています」と話す。

▲モーションセンサーは縦3㎝、横7㎝ほどの⼤きさで、⽞関ドアに設置しても気にならない

R65/らくらく物件見守りサービス

スマートメーターを活用したサービス開始

 R65(東京都港区)では、「孤独死による事故物件化」の解決を目指して、7月から「らくらく物件見守りサービス」の販売を開始した。

  同サービスは、電力データを利用して単身高齢者を見守る仕組み。スマートメーターから得られる電力使用量データを1日1回取得し、居住者の日常の様子を見守る。通常の動きと異なるデータを検知したら、同日の夕方に入居者本人やあらかじめ設定した見守り者に連絡が入る。スマートメーターが設置された部屋であれば1⼾から導入可能となる。費用は販売する不動産会社により異なるが、⽉額数百円からとなっている。見守り者には入居者の親族や友人のほか、家主、管理会社など最大5件登録することができる。

 電気事業法の改正に伴い23年9⽉より、電⼒データ集約システムの運⽤がスタート。いわゆる「電気事業者」ではない事業者も⼀定のルールの下で全国の電⼒データの利⽤が可能となった。そのため、同サービスも入居者がどの電気事業者と契約していても利用可能で、電気事業者の契約変更や切り替えの手間はかからないので導入しやすい。さらに、「室内にカメラやセンサーの設置がないので、見守り対象である高齢入居者の心理的負担が少ないのも導入しやすい理由の一つです」と山本社長は話す。

 R65は同年12月から電力データをはじめとしたデータ活用サービス事業を手がけるGDBL(東京都千代田区)と連携して、単身高齢者向けの見守りサービスの実証実験を行っていた。「実証実験を通して管理会社や高齢入居者の見守りサービスに対するニーズが明らかとなったことで、今回の販売につながりました」(山本社長)

(2024年9月号掲載)
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