13棟の高齢者向けアパートを経営
支援者と連携し、入居後も支える
鈴木一也オーナー(42)(茨城県取手市)

2016年から高齢者や障がい者向けの賃貸アパートを経営している鈴木一也オーナー(茨城県取手市)。18年には住宅確保要配慮者の居住支援を目的とした一般社団法人LANS(ランズ:茨城県つくば市)を設立。行政や介護福祉事業者と連携することで、現在、13棟100戸を満室経営している。
鈴木オーナーが「高齢者向け」を意識するようになったのは、14年に茨城県取手市で築30年の戸建てを購入したことに始まる。「投資に興味があり、自己資金で買える範囲で挑戦しようと思い、戸建てを300万円で購入しました。
敷地内に駐車スペースがなく、車社会の茨城では競争力が乏しい物件でしたが、70代の夫婦が早々に借りてくれたのです」(鈴木オーナー)
次なる購入物件として、中古アパートを見据えるも、取手市や周辺の土浦市では、アパートの空室率は約40%と高かった。しかし、コンセプトのある物件なら、勝算はあると考えていて、そんなとき、赤尾宣幸オーナーの著書と出合った。高齢者向けアパートの経営を紹介する本で、鈴木オーナーは赤尾オーナーに指導を仰ぐ形で動き出した。
「地域のケアマネジャーや福祉事務所のソーシャルワーカー、自治体の地域包括センターを訪問して、ニーズをヒアリングするところから始めました。まず面談を取り付けるのが難しく、さらに高齢者向けアパート事業を理解してもらうことが大変でした。賛同してくれる事業者と知り合えたのは、118軒目の訪問でした」と鈴木オーナーは話す。
物件の付加価値づくりと社会貢献の両方を実現

▲経営する高齢者向けアパート
入居者が確保できそうになったところで、1棟目のアパートを購入した。築40年の2階建てで、8戸のうち6戸が空室だった。室内に手すりを取り付け、火事の原因とならないようIHクッキングヒーターを備え、冷蔵庫や洗濯機、エアコンなどの家電も完備。また、敷金・礼金は不要とするも、家賃債務保証への加入は必須とした。賃料を2万4000円から周辺相場の家賃である3万7000円に上げて募集したところ、半年で満室になった。
それ以降、鈴木オーナーは中古アパートを購入して高齢者向け物件を増やしていき、LANSを設立。入居支援だけでなく、入居後の生活においても、介護や医療、行政のサポートを提供できるようになった。入居者が安心して暮らせることで、トラブルが少ない賃貸経営ができているという。
「住まいの確保が難しい人に住居を提供できることに家主としてやりがいを感じています。空室率が高い地域ではありますが、付加価値を高めて、所有戸数を伸ばせました。今後も物件を増やす予定で、200戸を目指しています」(鈴木オーナー)
高齢者向けアパートを運営する中で、家族への感謝の思いも強まっている。「入居者の中には、頼る家族がいない人も多いので、私自身、家族と過ごす時間を大切にするようになりました」と鈴木オーナーは話す。
(2024年5月号掲載)
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