【連載】資産価値を維持する 高性能賃貸住宅:1月号

賃貸経営住宅設備・建材

VOL.3 高性能の価値をアピールして賃貸経営の安定を図る

「資産価値を維持する高性能住宅」とはどのようなものかについて、省エネルギー以外の視点から取り上げていく。高気密・高断熱住宅を手がける建築会社を家主に紹介する住まいるサポート(神奈川県鎌倉市)の高橋彰代表取締役がわかりやすく解説する。

借り手に性能の価値を示す 第三者認証取得のススメ 

 近年、住宅・建築物の性能をさまざまな観点から認証する公的な第三者評価制度が充実してきています。
借り手にアピールすべき性能としては、次のような項目が挙げられます。
・省エネ性能:光熱費が安い
・健康・快適性:夏涼しく、冬暖かく、結露が生じにくい
・防犯性能:空き巣や性被害などに遭うリスクが低い
・耐震性能:大地震が起きたときでも安全性が高い
 この中で、第三者認証による省エネ性能、健康・快適性、防犯性能をアピールすることが特に有効だと思われます。 

 耐震性能ももちろん重要ですが、持ち家に比べると、賃貸住宅は居住者の耐震性能へのこだわりが、相対的に弱いように思われます。

賃貸マーケットに影響 省エネ性能ラベルが有効 

「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」による「省エネ性能ラベル」の表示が始まっています。2024年4月1日以降に建築確認申請を行う新築建築物には、建築・不動産の販売・賃貸事業者に対し、この制度による省エネ性能表示の努力義務が課されているのです。

 「SUUMO(スーモ)」をはじめ、大手不動産情報サイトの物件情報にも省エネ性能ラベルの内容が掲載されます。

 さらに将来空室が生じて再賃貸される場合も対象なので、この制度による性能のレベルが、中長期的な賃貸マーケットでの競争力に大きな影響を与えることになります。

 省エネ性能ラベルに表示されている主な項目は、エネルギー消費性能と目安光熱費です。省エネ性能が高い賃貸住宅ならば、入居後の光熱費負担が少ないことを強調できます。

 断熱性能の高い住宅が、夏涼しく、冬暖かく、結露が生じにくく、健康にもいいことを知っている消費者が増えています。断熱等級6以上の高断熱の性能を確保して、健康・快適な暮らしを求めている借り手に、もっとアピールすることをおすすめします。なお、この制度は、自己評価か第三者評価のいずれであるかが左下に表示されます。

 第三者評価というのは、建築物省エネルギー性能表示制度「BELS(ベルス)」に基づく評価を指します。基本的には、BELSの評価を取得して、第三者評価による表示にするほうが信頼性は高まります。

省エネ性能を表示する BELS評価とは

省エネ性能ラベルの第三者評価の取得に必要なBELSとは、建築物省エネ法に基づき建築物の省エネ性能を表示する第三者認証制度です(図2)。一般社団法人住宅性能評価・表示協会(東京都新宿区)が運営しており、同協会に登録されたBELS登録機関が省エネ性能を客観的に評価します。

 25年4月から、新築住宅は省エネ基準への適合が義務付けられます。それに伴い、確認申請時に省エネ適合性判定という手続きが必要となり、適合性判定通知書が交付されます。BELSの申請時には、この適合性判定通知書の写しでの申請が可能です。そのため、BELS評価取得に掛かる費用や手間はとても軽微となります。これからの新築賃貸住宅はBELS評価を取得するべきでしょう。

防犯性能の認定制度は 自治体によって異なる

 住宅への侵入を伴う窃盗や性被害などの犯罪の防止に配慮した構造および設備を有する賃貸住宅であるとアピールすることは、特に高齢者や若い女性が借りる際の安心につながります。防犯性能を評価・認定する制度は、複数あります。

 全国を対象にした制度としては、一般財団法人ベターリビング(東京都千代田区)が運営する「防犯優良賃貸集合住宅認定事業」があります。自治体ごとの制度としては、東京都、神奈川県、福岡県などがそれぞれ独自制度を運営しています。
 所有物件のある自治体で防犯性能の認定制度がないか調べてみてください。
 

震度7に耐える耐震等級3 確保したうえで認証取得 

 耐震性能は、耐震等級3を確保することをおすすめします。この等級は震度7を2回観測した16年4月の熊本地震で被害が大きかった益城町でもほとんど被害が出ませんでした。

 耐震等級3を確保することには、二つの意味があります。第一に、借り手に対して、大地震が発生したときに、命や生活を維持できるという、大きな安心感を与えられます。

 第二に、大地震が起きた際の賃貸事業の継続性を高めることが可能となります。

 耐震等級3についての公的な証明書は複数ありますが、「長期優良住宅認定通知書」もしくは「住宅性能評価」のいずれかが一般的でしょう。

住まいるサポート (神奈川県鎌倉市)
高橋 彰代表取締役

全国で180社以上の工務店などと提携し、家主とのマッチングを中心に高気密・高断熱住宅に特化した住まいづくりのサポートサービスを提供。性能にこだわる建築家の紹介や、高断熱賃貸住宅プロジェクトサポートも手がける。東京大学大学院修了。現在、同大博士課程で高断熱木造建築について研究中。

(2025年1月号掲載)

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