【連載】色彩の力:5月号

賃貸経営住宅設備・建材

Vol.5 環境によって変わる赤の作用 魅力を生かす使い方を考える

自然の中と都市では違う効果

 今回は賃貸住宅において、赤の取り入れ方を考えてみます。

 1月にフィンランドの北極圏を旅しました。一面の雪景色の中に、赤い壁の木造の家が点々と見える風景はとても美しいものでした。雪に囲まれた環境では、赤は遠くからでも目立ち、自分のいる場所をはっきりと認識することができるため、安心感を与えてくれます。

 また夏の緑の中でも赤い建物はよくなじみます。例えば、木々の緑の中に赤い実がなっている風景を思い浮かべると、自然の中で赤が美しく映えるということがよくわかるのではないでしょうか。

▲雪景色の中で映える赤

 日本でも、自然が多い地域では赤の魅力が発揮されます。しかし、都市部では少し扱いが難しい色といえます。前回話したように、赤は日本では特別な意味を持つ色です。神社仏閣や鳥居などの宗教建築に使われるほか、歓楽街の建物にも多く取り入れられており、日常とは少し違った雰囲気を感じさせる色だからです。

 ただし、赤には大きなメリットもあります。外壁などに赤を取り入れることで、ほかの物件との差別化が可能になり、入居希望者の目を引くことにつながります。

居心地を考えて使用する

 一方で、赤にはデメリットもあります。まず、好みが分かれやすい色であること。また周囲の建物や景観との調和が難しいことも考慮する必要があります。

 取り入れる際には、赤の明るさを少し抑えるとなじみやすくなります。建物全体を赤くしたい場合には、れんが色に色みを寄せるといいでしょう。建物の一部にポイントとして使うと、程よいアクセントになります。

 もう一つ注意したいのが、赤がもたらす「暖かさ」の印象です。夏が長く、暑さが厳しくなっている現状では、使い方によっては居心地が悪くなってしまうことがあります。特に、西日が強く当たる部屋の内装に赤を使うと、実際の温度以上に暑く感じてしまうことがあるので、取り入れる場所には注意が必要です。

 物件の色を決める際には、その物件がどのような地域にあるのか、部屋の日当たりや間取りはどうかをよく考え、それらを補う色を選ぶことが大切です。入居者が長く住みたいと感じるかどうかは、「住んでいて気持ちがいい」と思えるかどうかが大きく影響します。

 次回は、配色を考える際のヒントについて話します。

眞井彩子(さないさいこ)

プロフィール
色と旅をこよなく愛するカラーコンサルタント。自らも賃貸物件の運営を行い、色の力で満室を継続中。不動産のカラーコーディネートのほか、パーソナルカラー診断やカラーセラピー、色がテーマのまち歩きなど、色彩を通じて空間や人生に彩りを添える専門家として多方面で活躍中。著書「365日の色 彩暦」シリーズで、多くの読者から支持を得ている。

(2025年 5月号掲載)

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