【連載】店舗のプロが解決!店舗不動産オーナーの困りごと:10月号掲載

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最終回 空中階やげた履き(テナント付き)物件の空室対策~ターゲットの設定やアピール方法~

 リーシングを行っていても、なかなかテナントを誘致できないという悩みを抱えたことはありませんか? リーシングを行ううえで注意したいのは、路面店や空中階といった条件で、アピールする業種の対象が異なるということです。今回は、それぞれの条件において、ターゲットをどう設定するべきか、アピールポイントをどこに置くといいのかなどについて説明します。

空中階のターゲットは 予約制メインの業種に

 テナントを誘致したい物件が、一棟丸ごと商業テナントのみの物件なのか、1階が商業テナント用で上の階は住居として貸し出しているげた履き物件なのかによっても、アピール方法が異なります。まず、一棟丸ごと商業テナントのみの物件について説明します。

 商売を念頭に物件を探すのであれば、空中階より、視認性が高く人の流入施策を行いやすい、通りに面した路面店が人気であることは、想像に難くありません。ところが、路面店は空中階と比較して賃料が高くなる傾向があります。そのため、賃料を少しでも抑えたいという考えから、空中階での出店を望むテナントも少なくありません。

 特に、空中階での出店を選択する業種としては、美容室やネイルサロンなどがあります。美容室やネイルサロンは、基本的に集客をSNSやポータルサイトで行います。予約制であることが多く、必ずしも道を行き交う人の目に留まりやすい路面店である必要はありません。反対に、飲食店の場合は道行く人に認知してもらい、入店を促すことが多いため、路面店などアクセスが良い立地の物件にニーズが集中します。

 つまり、店舗の宣伝において、広告媒体依存度が低い業種は路面店などの立地の重要度が高く、広告媒体依存度が高くなればなるほど、出店においての立地条件や階数の重要度は低くなるといえます。リーシングを行う際は、この点を意識して誘致を行うといいでしょう。

上層階が住居の路面店 医療系や飲食系に需要高

 次に、上層階が住居になっているげた履き物件のリーシングについて解説します。住人の利便性や評価に重点を置いて行うのであれば、コンビニエンスストアやフィットネスクラブ、ドラッグストア、医療施設がおすすめです。コンビニの場合、24時間営業ということから防犯効果も期待できます。

 一方で、賃料収入での収益面に重きを置くのであれば、飲食店のほうが期待する効果を得られます。前述したとおり、飲食店の出店においては1階路面店での需要が高く、リーシングも行いやすいため、退去者が出たとしても空室期間を短くすることができます。騒音や臭い、排気などのトラブルを懸念し、敬遠する不動産オーナーも多くいますが、防音加工やダクトの設置方法を工夫することでこれらの問題は回避できます。

 とはいえ、住人の意見も気になるというのであれば、カフェやベーカリーを誘致するといいでしょう。居酒屋などと比較すると賃料は少し低くなってしまうかもしれませんが、カフェやベーカリーは、住人の朝食や昼食としての需要があり、利便性も高まります。

 ただし、忘れないでほしいのは、貸し手と借り手、双方の利益を同様に高めるのは難しいということです。両者は、利益相反関係にあるからこそ、どこで折り合いをつけるかが重要になってきます。

区画分割してリーシング 賃料収入にも影響

 リーシングのしやすさという点では、物件の広さも重要です。1区画あたりの坪数が大きいと、その分賃料も高くなってしまうので、リーシングはしにくくなります。一般的には、坪数が大きければ大きいほど坪単価は下がる傾向にあるため、広いスペースのリーシングに悩んでいるのであれば、区画を分け、1区画あたりの坪数を小さくしましょう。工事費用こそかかりますが、坪数を小さくしたほうがリーシングは行いやすくなり、賃料収入の総額も大きくすることができます。

 空室期間を少しでも短くしたいのであれば、リーシングの専門事業者に頼るといいでしょう。ですが、依頼する際に、専任契約は行わないようにしてください。専任契約を締結してしまうと、幅広く募集を行えなくなってしまいます。募集の間口は広いほうがあらゆる選択肢が生まれます。リーシングの専門事業者によって強みも異なります。

 効率良くリーシングを行うためには、誘致したい店舗が美容系なのか、クリニック系なのか、それとも飲食系なのか、所有する不動産にマッチする業種に強い事業者に依頼するようにしましょう。

 本連載は、今回で最終回となります。店舗不動産オーナーにはたくさんの困りごとがあるかと思いますが、そんなときは店舗流通ネットにいつでも相談ください。これまで読んでくださりありがとうございました。

TRNグループ TRNシティパートナーズ
リーシングマネジメント部 リーシング課
末川浩平課長

2017年、店舗流通ネット入社。事業用ビルの店舗リーシングやプロパティマネジメント業務を中心に行い、飲食店のリーシングだけでなく、さまざまな業態の店舗へのアプローチを行う。顧客の要望をかなえるために、他社物件の仲介や同社による与信を使ったサブリースなども実施。テナント候補者へのヒアリングも実施し、生の声を反映した物件開発や購入検討物件の賃料査定を行っている。

(2024年10月号掲載)
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