家主のアナザーストーリー:サロン経営

賃貸経営店舗・オフィス

最終回

こだわりの空間でのサロン経営
家主業にも生かされる接客・集客術

2007年に「トータルリラクゼーション Raum(ラウム 以下、Raum)」を開業した彦坂真介オーナー(愛知県豊橋市)。元々は実家のすし店で働いていたが、当時ニーズの高まりが感じられたリラクセーション業界に身を投じたいと退職。マッサージ店を展開する企業のセラピスト養成学校、同社の店舗勤務を経て、念願のサロン開業に至った。サロン経営と不動産事業には共通する部分が多くあるという彦坂オーナーに、その思いを聞いた。

彦坂真介オーナー(45)

[プロフィール]ひこさか・しんすけ
1979年、静岡県湖西市生まれ。家業のすし店を退職後、セラピスト養成学校で技術を学んだ。大手リラクセーション企業勤務を経て、2007年にRaumを開業。戸建て27戸とアパート4棟を所有。

 

顧客満足度の高い癒やし空間

 彦坂オーナーが豊橋市で運営するRaumは、5部屋すべてが完全個室のリラクセーションサロン。施術による気持ち良さだけでなく、サロン自体が心地よい癒やしの空間となっている。
「もともと飲食業界にいた影響もあり、カフェをイメージして設計しました。待合室のスペースを広く取ってアロマをたき、施術後はお客さまの好みのお茶を提供しています。音楽はジャズピアノを流して、五感すべてで癒やされるように演出しています」(彦坂オーナー)
 独立前に勤務していたショッピングセンター内のマッサージ店では、館内放送や子どもが廊下で騒ぐ声のほか、隣の部屋の会話が聞こえてきて顧客に落ち着いて施術を受けてもらえなかった。Raumではこうした前の職場で気になっていた点をすべて改善し、顧客が心からリラックスできる環境を整えた。価格勝負ではなく、高級志向で顧客満足度の高い店を目指したという。

縁を大切にし成約につなげる

▲カフェのような待合室 

 Raumが最も力を入れているのが、顧客との結び付きだ。例えば顧客が施術中に旅行の話をすれば、その情報をデータベースに入れて全スタッフで共有し、次の来店時にはその話題から会話を始められるようにする。また顧客にはなるべく来店時に次の予約を入れてもらうことでリピーターを増やし、経営が安定するようにしている。そうしたサロンで培ったノウハウは、不動産経営にも取り入れられている。

 彦坂オーナーは戸建て物件の内見者のデータベースをつくっている。こうすることで、たとえその物件で成約に至らなくてもほかの物件を入手したときに改めて案内し、成約につながったことが何度もあるという。サロン経営と同様、家主業も1度の縁で終わるのではなく、次につなげていくことが大切なのだと感じている。また入居者と会うときには子どものいる家ならお菓子を持っていくなど、会話がしやすくなるよう心がけている。トラブルが起きた際も、こうした付き合いの積み重ねから信頼関係ができているので、もめることはめったにない。


 「不動産事業も接客事業の一種だと思っているので、顧客である入居者とのコミュニケーションはしっかり取っています。飲食業界やサロン経営で学んだことが、家主業でも生かすことができていると感じています」(彦坂オーナー)

(2025年1月号掲載)

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