【連載】店舗のプロが解決! 店舗不動産オーナーの困りごと:6月号掲載

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VOL12.テナント貸をする前に決めておきたい「良い管理会社」の見極め方

店舗不動産をテナントに貸し出す際に、事前にしっかりと決めておきたいのが管理会社です。管理会社が行う業務には、どのようなものがあるのでしょうか。また、信頼して長期的に付き合っていける管理会社をどのように見極めればいいのでしょうか。今回は、不動産オーナーの良きパートナーとなってくれる管理会社を見極めるポイントについて紹介します。

契約・建物・工事関連 管理会社の三つの業務

 まず、管理会社が行う基本的な業務ですが、大きく分けて三つあります。一つ目は、契約書の作成やテナントの管理、市場調査、収支報告などの「契約管理」です。不動産に関する法律は数多く存在し、用途や地域などによっても守るべき内容が異なります。管理会社には、法律の専門家や建築関係の資格の保有者が在籍していることが多く、何かトラブルが生じた際には迅速な対応が行えるため、リスク軽減対策にもなるでしょう。

 二つ目は、不動産運営に欠かせない法定点検や設備点検、修繕、日頃の清掃などの「建物管理」です。不動産を健全な状態で維持することは、賃借人の満足度向上につながるほか、周辺地域との円滑な関係を育み、結果的に所有不動産の価値を守ることができます。

 三つ目は、「工事管理」です。不動産運営を行う中で、大きな規模の工事が発生することがあります。工事によっては、専門家の判断を仰いだり、工法や価格の調整を行ったりする必要があります。管理会社を活用することで、法令順守のうえ、適正価格で安心・安全な不動産運営を行えます。

不動産の特性を把握する対応力やレポートも重視

 大事な資産である不動産の核となる運営管理業務を任せるわけですから、信頼できる管理会社に依頼したいものです。管理会社を選定するうえで重要なのは、自身の不動産の特性を知ることです。レジデンスなのか、商業ビルなのかによって、選ぶ管理会社も異なります。

 レジデンスと商業ビルでは、管理に関する問題や、順守するべき法令も大きく異なります。レジデンスにおいては、住人の快適な生活環境を維持するだけでなく、セキュリティーに焦点をあてた管理が重要です。一方、商業ビルは、空室率の低減や賃料の最適化に向けた戦略的な管理を行ってもらえるかが、選定においてのカギとなります。

 契約に関しても、個人との契約が一般的なレジデンスとは対照的に、テナントとの契約を行う商業ビルでは、契約の処理が非常に複雑になるので、契約までサポートしてもらえるかどうかも、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。自身の不動産の特性とマッチする強みを持った管理会社を選ぶようにしましょう。

 管理会社のホームページに掲載されている管理の実績などを参考にするのもいいでしょう。不動産賃貸事業の大きなリスク要因である貸主責任を担保するためには、アセットタイプに特化した管理会社を選定し、順法性を確保することが重要です。

 そのうえで、管理棟数が豊富であること、レスポンスが早いこと、用途に特化している、提案の質といった点を重視するといいでしょう。連絡が常日頃から滞る管理会社は、緊急時の連絡もスムーズにいかない場合があります。設備トラブルが生じた際の対応が滞ると、入居者とのトラブルにまで発展しかねません。

 とはいえ、管理会社の担当者はいくつもの担当物件を抱えています。1回の電話に出なかったから対応が悪いと判断するのではなく、電話がつながらなかった後にどのような対応をしてくれるかで判断するといいでしょう。

 また、お金の出入りや契約状況を収支報告レポートなどにまとめ、きちんと報告してくれるかどうかも判断基準の一つになります。不動産を適正に運用するには、収支の把握は必要不可欠です。管理会社を選ぶ際には、どのようなレポートを作成してもらえるのか、忘れずに確認するようにしてください。

オーナーの意見や考えを確認しない会社は要注意

 逆に、こういった管理会社は注意が必要といった見極めポイントも伝えます。

 例えば、入居者の更新の時期が来たからといって、不動産オーナーに確認することなく、単に更新手続きのみを進めるなど、事務的に業務を行う管理会社は要注意です。この場合、不動産オーナーは賃料改定のタイミングを逃すことになってしまいます。

 特に、契約に関わる部分は、管理会社が勝手に判断せず、その都度不動産オーナーの意見や考えを確認してくれる会社が安心です。それに加えて現地に赴いてくれない管理会社は、清掃方法の改善案や修繕箇所の提案がおろそかになるため避けましょう。

 不動産の管理が行き届いていないと、大きなトラブルに発展しかねません。トラブルによっては、入居者から営業補償を請求されてしまうこともあります。大切な資産である不動産の運営・管理を依頼するわけですから、不動産オーナー自身が納得したうえで、信頼できる管理会社に依頼することが一番だといえます。

TRNグループ
TRNシティパートナーズ
柳文基取締役

2019年、店舗流通ネット入社。自社物件のコンストラクションマネジメント業務や、物件購入後のバリューアップ業務に従事。22年4月、TRNシティパートナーズ設立に伴い出向し、23年6月に同社取締役に就任。24年4月には、戦略的視点を持って、取得する商業不動産の価値を最大化させることをミッションに、取締役兼プロパティマネジメント事業部部長に就任。

(2024年6月号掲載)

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