商店街の空き家をホテルに再生
汎用性高い地方創生モデルとして成長中
クジラ(大阪市)は、2017年に最初のSEKAI HOTEL(セカイホテル)をオープン。商店街の空き家を客室とし、「旅先の日常に飛び込もう」をコンセプトに街を丸ごとホテルにする。汎はん用よう性の高い地方創生モデルとして新たな地方への進出を検討中だ。
クジラ(大阪市)
矢野浩一代表取締役(41)
――ビジネスの発想の原点は何ですか。
SEKAI HOTELはもともとクジラの新規事業でした。ほかの会社がやれない事業を行うことで、人が辞めない会社をつくって業績を伸ばしたかったのです。そこで着目したのが、一定エリア内でいくつかの空き家をリノベーションすることでブランド化し、運営することでした。世界中どこでもホテルになるという意味を込めてSEKAI HOTELと名付けたのです。会社の事業内容も仲介中心からリノベメインに変えていきました。
――どのような困難がありましたか。
12年に着想を得てから、エリア選定、物件探しなどを進めました。17年には「SEKAI HOTEL NISHIKUJO(ニシクジョウ)」(大阪市、現在は休館中)を、18年に「SEKAI HOTEL FUSE(フセ)」をオープン。昔ながらの商店街の中にある複数の空き家をリノベしたのです。商店街でモーニングを食べたり、地元の人に混じって銭湯に入ったりと、人との関わりを楽しむことができるのが魅力。今SEKAI HOTEL FUSEは全19室です。ホテル業界経験者が少ない中、観光地ではなく、魅力はあっても知名度がないところでの集客に苦労しました。さらに新型コロナウイルス禍も重なってしまって。しかし、コロナでホテルの営業ができない時間を、社内会議やブランディングの再考に充てたのです。組織が強くなり、コンセプトの打ち出し方がより明確になりました。ウェブの宣伝写真を撮り直したあたりからインフルエンサーが取り上げてくれるようになり、客層も広がっていきました。
――今後の目標を教えてください。
関西圏は直営、それ以外は、高岡のようにフランチャイズ展開が前提です。交通アクセスが良いか、商店街の中にあるか、大学が近いかといった視点で候補地を見て、複数の街で現地の企業と商談中です。まず当社が空き家を視察。ホテルとして運営できそうであれば、所有者が費用を負担してホテルに改修するのか、当社が買い取るかといった話に移ります。将来的にはSEKAI HOTELを全国20カ所で展開することが目標です。
――どのような人と展開したいですか。
地元に貢献したいと思っている企業です。さらにそれだけではなく貢献のために資本を投下したいと思っている経営者が必要です。そこで働く人々を雇うことになる以上は、ビジネスとしても絶対に成功させないといけません。先ほど述べた立地の条件はありつつも、結局は地元で本気で踏ん張る人がいることが一番の決め手になると思います。(五林麻美)
(2024年8月号掲載)
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