障がい者向けグループホームとは、障がいのある人が共同生活を行う小規模な住居、いわば「シェアハウス」だ。大脇ちさとオーナー(岐阜県白川町)は、岐阜県の2カ所で障がい者向けグループホームを運営している。最初は運営の知識も経験もなかったという大脇オーナーに、福祉事業を始めた経緯やグループホームの概要、やりがいなどについて聞いた。
生きるための居場所づくり 障がい者向けグループホーム提供
第43回 大脇ちさとオーナー(49)
[プロフィール]
おおわき・ちさと
1975年、岐阜県白川町生まれ。ふる里総合企画代表。父親から承継した会社の多岐にわたっていた事業内容を不動産と福祉に絞り、マンション1棟、戸建て2戸、貸地、グループホーム2事業所を運営中。
所有物件をグループホームに
投資目的で戸建てを購入したが、ただ賃貸に出すのではなく、利活用したいと考えていた大脇オーナー。調べる中でグループホームというものを知り、詳しく学ぼうと、障がい者福祉の研修会に参加した。その研修会で講師を務めていた福祉団体の理事は、偶然にも過去に仕事で関わりのあった人物だった。講師の「岐阜県の障がい者福祉を引っ張っていく」という言葉に感銘を受け、グループホームの運営に挑戦することを決めた。
グループホーム運営の知識やノウハウがなかったため、まずはグループホーム「ほたるの里」を展開する企業とフランチャイズチェーン(FC)契約を結んだ。そして2022年10月に女性専用の「ほたるの里 美濃加茂森山」を、23年1月には男性専用の「ほたるの里 可児長坂」をオープンした。
スタッフは両事業所を兼務しており、計10人。利用者はどちらも満室で計9人、日中は作業所などで仕事をしている人が多い。そのため夜間の支援が主だが、不測の事態に備え、スタッフは24時間、常駐している。
食事が楽しみという利用者が多いため、スタッフ募集時の条件は「料理が好きな人」だ。
「スタッフたちは『ここでは作った料理を皆喜んで食べてくれるので、うれしい』と言って働いてくれています」(大脇オーナー)
温かい町づくり目指す
大脇オーナーは、グループホームの運営において、スタッフと利用者の関係構築が一番大事だと考えている。「利用者に『この人だったら信頼できる』と思ってもらわないと、災害などの緊急時の対応もできません。ある社会福祉協議会の理事長が教えてくれた『関係性は専門性を上回る』という言葉のとおりだと思います」と大脇オーナーは話す。
利用者は30代から60代。親亡き後を考え、障がい者自身が決断して実家から移ってくる人もいる。「皆さんにここがいいと選ばれている以上、経営破綻などしてはならない。福祉事業だからこそ、継続していかなくてはという覚悟を持って運営しています」(大脇オーナー)
岐阜県白川町には空き家が約400戸以上ある。将来はその空き家をリフォームし、障がい者家族がまるごと移り住むことができる、温かい町づくりをするのが夢だという。
▲ほたるの里 美濃加茂森山の外観と、おいしいと評判の食事
(2024年8月号掲載)
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