My賃貸経営スタイル:設備でなく好条件で入居につなげる

賃貸経営空室対策

マーケティングで培った顧客分析力
設備でなく好条件で入居につなげる

玉崎孝幸オーナー(44) (東京都多摩市)

 山口県をメインに約100戸を所有する玉崎孝幸オーナー(東京都多摩市)は「お金とキャリアの専門家」として、音声プラットフォーム「Voicy(ボイシー)」のパーソナリティーや講演会などの講師を務める。「不動産経営があるからこそ、自分のやりたいことを実現できています」と話す。
 前職では教育サービス会社に勤務していた。独立を視野に入れたとき、会社員の給料以外の収入の柱が必要となった。そこで出合ったのが不動産投資だった。毎週日曜日に物件の見学をし始めてから1年、2012年1月に千葉県の戸建てを購入。現金で購入できる戸建てから始めたのは、万が一失敗しても撤退に苦労しないことを考えたためだ。
 最初の一歩を踏み出した後は早かった。その翌々月に、京都市にある1棟40戸のRC造マンションを購入したのだ。金額は2億円超。
最初の一棟ものは数千万円規模でアパートを考えていたが、想像以上の物件を不動産会社から紹介された。
 その物件には当時10戸の空室があった。しかも、京都市には全く土地勘がない。それでも、最寄り駅から徒歩3分かつ大きなショッピングセンターがあるという好立地には心引かれた。築25年で利回りが13%弱というのも、1都3県に比べて好条件だった。

どんな入居者に訴求するか、デメリットをメリットにする

ちょっとした飾り付けで3点ユニットの印象を変える

 実際に物件を見学すると、課題が見えてきた。共用部は掃除が行き届いておらず、退去後の空室も手入れがされていなかった。それらを解決するだけで、この立地であれば十分満室が狙えるのではないかと考えた。
 また、3点ユニットという不人気設備であったが、「それでも構わない」という入居者はどういうタイプなのかを思い浮かべた。「湯船にゆっくり漬からなくてもいい。家には寝に帰るだけという入居者層は、体力勝負の職種が想定されます。それならば『マッサージ店がすぐ近くにあります』といったうたい文句を募集に盛り込めば効果があると考えました」(玉崎オーナー)

 このような考え方は、サラリーマンとしての営業・マーケティング経験があったからだという。ビジネスをするにあたって、まず大事なのは「顧客」がいること。その顧客が何を求めているのかを分析することが、成功につながると考えている。そのため追加投資しての設備導入は必ずしも必要ではないという。便利な設備が欲しい層なのか、あるいは初期投資の安さを求める層なのか。そこを見極めるのだ。

 この京都市のマンションを購入し、手残りが会社員時代の月収を超えたことで思い切って退職。36歳で独立を果たした。比較的若い年齢で独立した経験を基に、これからの生き方に悩む同世代に向けて発信を続けている。「ばくち的なやり方でなく、しっかり不動産を勉強することで将来の不安が軽減できるし、自分のやりたいことに時間を割けます。まだ一歩を踏み出せない人の背中をそっと押す活動を続けていけたら」と玉崎オーナーは話す。

(2024年3月号掲載)

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