【連載】店舗のプロが解決!店舗不動産オーナーの困りごと:9月号掲載

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テナントは、こんな物件を求めている 入居したい物件・付き合いたいオーナーとは?

  不動産オーナーが抱える課題の一つにリーシングがあります。所有する不動産にテナントを誘致できなければ、空室が続き、賃料収入を得ることができません。また、コンバージョンやリノベーションに投資しても投資費用だけがかさんでしまい、回収が難しくなります。テナントを誘致するには、「この物件に入居したい」と思ってもらうことが大切です。今回は、テナントの視点で入居したいと思う物件や、付き合いたいと思うオーナーの特徴について紹介していきます。

 まず、テナントが物件を探す際に注目するのは、立地条件、物件条件、契約条件の3点です。その中でも特に重要なのは、立地条件です。最寄り駅から徒歩5分以内、メイン通りに面している、その土地の生活圏内で活発な人流が望める、などの条件にマッチする物件は好まれる傾向があります。特に、飲食店は駅から徒歩5分圏内の路面店、坪数20坪以下の物件が人気です。これらの条件をクリアしていれば、比較的高い賃料を設定できる飲食店を誘致することをおすすめします。

看板スペースは必須

 次に物件条件ですが、商業テナントを誘致したい場合、看板スペースの有無が重要になってきます。空中階だったとしても、比較的大きな袖看板(道路に突き出すように設置する看板)やファサードサイン(建物の正面に取り付ける看板)が設置できるようになっていれば、通りから店舗の認知が可能です。そのため、路面店ではなくても商業テナントを誘致しやすいでしょう。エントランスやエレベーターなどに看板を設置できるスペースがある物件も好まれます。

太いガス管を検討しよう

 これから商業テナントの入居を想定したビルを建設する予定があれば、注意したいことが2点あります。それは、間口を広く取ることと、ガスメーターを最低でも10号以上のものにすることです。飲食ビルにし、中華料理屋や焼き肉店といった火力を必要とする重飲食の誘致を想定しているのであれば、ガスメーターは16号にしておくとより安心です。

 ガス管の引き込みは、基本的に1物件につき、1経路です。後からガス管を太いものに替えることも可能ですが、工事に伴い、ほかのフロアでガスを利用できない時間が発生してしまいます。また、ガスメーターの設置位置が前面道路から遠い場合や、掘削する前面道路がタイル張りといった場合は、数百万円単位の高額な費用がかかります。

 あらかじめ太い管を設置しておくことで、余計な費用を抑え、テナント誘致の選択肢を広げることができます。それに加えて、給水管の口径は25㎜以上、電灯・動力はそれぞれ100A以上あれば、重飲食でも問題なく誘致できるでしょう。

看板スペースがある物件は好まれる

▲柳橋Food Market
(フードマーケット)暗くなっても通りから視認しやすい看板

▲TRUNK(トランク)
名古屋椿町  エントランスに設置された看板

契約は5年以上が前提

 契約条件に関しては、5年以内の定期借家の物件は敬遠されてしまいます。なぜなら、商業テナントの場合、設備や内装を整えるための投資を行っているからです。設備の減価償却期間なども考慮すると、5年以上営業を行える環境を提供できることが前提となってきます。

 また、賃料は初めから高い設定にするのではなく、段階的に上げていく方法も有効なリーシング手段でしょう。店舗を始める際には、初期費用がかかります。開業後1~2年は資金繰りが厳しい状況にあり、いくら立地が良かったとしても、賃料と釣り合わない物件だと、入居先の選択肢から外されてしまいます。

 退去時に内装設備を残置してもいいといった条件も好まれます。次のテナントも同じ業態を考えているのであれば、内装設備が残っているほうが誘致しやすくなりますし、退去テナント側も退去費用を抑えることができます。

円滑な関係を心がけよう

 商業テナントを誘致した場合、契約書には工事や屋号の変更などの承諾事項が定められています。そのため、スピーディーな対応を行ってくれるオーナーは、大変好まれます。入居したテナントに長くその場で営業してほしいのであれば、オーナー区分の設備トラブルに迅速に対応することも心がけましょう。また、入居テナントが飲食店であれば、定期的に店舗を利用するなどしてコミュニケーションを取ることも大切です。

 誘致したいテナントの業種は定まっているものの、リーシングがなかなかうまくいかない場合は、その分野に強い不動産事業者に依頼するのも一つの方法です。リーシングに強い事業者であれば、各方面とのつながりが広く、今までつながりがなかった取引先にもアプローチすることが可能になります。空室期間が長くなれば賃料収入が得られない期間も長くなってしまうため、まずは専門事業者に相談することをおすすめします。

TRNグループ
TRNシティパートナーズ
リーシングマネジメント部 リーシング課 末川浩平課長

2017年、店舗流通ネット入社。事業用ビルの店舗リーシングやプロパティマネジメント業務を中心に行い、飲食店のリーシングだけでなく、さまざまな業態の店舗へのアプローチを行う。顧客の要望をかなえるために、他社物件への仲介や同社による与信を使ったサブリースなども実施。テナント候補者へのヒアリングも実施し、生の声を反映した物件開発や購入検討物件の賃料査定を行っている。

(2024年9月号掲載)
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