相続した駅前ビルの入居率を改善 賃料を見直し、建物をメンテナンス
東京メトロ千代田線と小田急線が乗り入れ、交通の利便性が高い代々木上原駅周辺は、人気のエリアだ。その駅前に5階建てビルを所有する和田寛オーナー(川崎市)は「私が子どもの頃は1964年の東京五輪開催に向けて、山手通りなどの道路工事が盛んな時期。ぜんそくになるような環境だったのですよ」と話す。
父親は緑茶販売事業を営んでいて、自宅兼店舗は井の頭通りの近くにあった。90年に道路の拡幅工事で立ち退くことになったが、代々木上原駅前に20坪弱の土地をタイミングよく購入することができたという。
「父はお茶の仕事に見切りをつけ、ビルを建てて賃貸事業を始めました。1階から3階が店舗、4階と5階が自宅です。私も家業についていましたが、業態転換を機に、一般企業に就職しました」(和田オーナー) 和田オーナーが賃貸経営に関わることになったのは、2010年のこと。父親が高齢になったためだ。
「駅前という好立地ながら、父は入居者のことをあまり考えていなかったので、短期入居で終わったり、2~3年空室が続いたりしていました。私はこのビルなら収益をもっと上げられると思いましたね」(和田オーナー)
両親の自宅だった4~5階はメゾネットタイプの住戸に改修して貸し出し、テナントは相場よりも高かった賃料を下げた。竣工以来、建物のメンテナンスを行っていなかったため、外壁修繕と防水工事も行った。
「テナントにネイルサロンが入ることになり、女性客がメインだと考えて、防犯カメラを設置しました。テナントのお客さんの命も預かるのが、ビル経営者の使命ですから」(和田オーナー)
こうした取り組みにより、和田オーナーが引き継いでから入居したテナント、住戸はともに10年以上の長期入居が続いている。
アパート購入して夫婦で賃貸経営
和田オーナーは13年から賃貸経営を本格化し、ビルを担保に東京都大田区と江戸川区に計4棟のアパートを購入した。いずれも新築で、そのうち1棟は土地から仕入れてテラスハウスを建てた。「相続したビルが古く、建物管理の難しさを感じていたので、管理の手間が少ない新築を選びました」(和田オーナー)
賃貸経営を行う中で頼りになったのが、妻の洋子氏だ。「私が賃貸事業に関わるなんて思ってもみなかったです。入居者や管理会社と付き合ううちに、夫から任せられるようになって」と洋子氏は話す。
購入した4棟は現在、すべて売却している。和田オーナーは「それぞれ、高値で売れそうなタイミングで売却しました。今は新築の賃貸住宅か中古のビルの購入を検討中です」と話し、夫婦で物件探しにあたっているという。
(2024年3月号掲載)
アクセスランキング
- 【PR・特集】相続で 困ったときに頼りになる 専⾨家・サービス①
- Regeneration ~建物再生物語~:既存不適格建築物を店舗併用住宅に再生
- 【特集】非住宅ではじめる 遊休地活用ビジネス第六弾:①
- Regeneration ~建物再生物語~:築古アパートをシェアハウスに改修
- 【特集】持ち味発揮 共用部を変えた家主の工夫①:エントランス
- 【特集】押さえておきたい不動産の共有リスクと解消法①
- Regeneration ~建物再生物語~:アトリエ付き住宅へリノベして受賞
- 【特集】古くなったら避けられない 大規模修繕の基礎知識①
- 【特集】24年のカギを握る入居者を引き付ける設備9選
- Regeneration~建物再生物語~:魚屋を複合施設へリノベ
- 【特集】基本を知れば怖くない 税務調査への 対応策:①税務調査概要編
- 【特集】時代に乗り遅れるな今こそ省エネ化①:省エネ賃貸住宅の夜明け
- 【特集】不動産購入で伝来の土地を守る
- 地名・土地の名前の由来 その隠された意味とは?
- 地主・土地持ちはずるいvs大変?地主になるにはどうやってなる?
- 武家屋敷(大名屋敷・江戸屋敷)の特徴とは? 跡地に建つ有名施設
- 大家さんとは? 不動産の大家さんになるには