話題のスポット:多世代交流型老人ホーム

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多世代交流型老人ホームで数多くのイベントを開催
地域交流によって社会問題の解決を目指す

「オーナーズテラス自由が丘Ⅰ」は2020年1月にオープンした多世代交流型老人ホームだ。ホーム内では地域住民と交流できるイベントを開催しており、住みよい地域の実現の一端を担っている。

▲ハロウィンの時期には子どもたちが仮装して建物内を練り歩いた

一般社団法人HAHA(東京都目黒区)
伊藤敬子代表理事(54)

地域住民との触れ合い生む

 高齢者がリビングに集まり、楽器の演奏や合唱を楽しんでいる。ここは、東急電鉄東横線自由が丘駅から徒歩11分の場所にあるオーナーズテラス自由が丘I。築4年、木造3階建ての戸建ての老人ホームだ。6人の高齢者と、住み込みのスタッフが生活している。

 このオーナーズテラス自由が丘Iでは、数多くのイベントを行っている。毎月第3水曜日には、NPO法人Dカフェまちづくりネットワーク(東京都目黒区)が「Dカフェ」を開催。Dカフェは、認知症発症者や認知症に関心がある市民が、ベテランの介護者や医療専門職のスタッフに相談できるイベントだ。

 そのほか、体操や書道などの教室が週4回ほど開催されている。特に人気がある絵画教室では、描いた作品が同区内の美術展に出展される。

 これらのイベントには、同物件に居住する高齢者だけでなく、徒歩1分圏内にあるシニア向け・シングルマザー向けの家事・介護付きシェアハウスである「オーナーズテラス自由が丘Ⅱ」の入居者や、地域住民も参加することができる。さまざまな地域住民が関わることにより、イベントの参加者にも良い影響を与えているという。

 例えば、イベント参加者の小学生は、環境の変化があり、登校できない時期があった。不登校の期間、週4回のイベントに参加し、高齢者と交流。多世代間のコミュニケーションにより、ふさぎ込まなくなり、小学校に通えるようになったという。

▲イベントで作った表札が入居者の部屋のドアに飾られている 

つながりがトラブル防ぐ

 オーナーズテラス自由が丘Iを運営する一般社団法人HAHA(ハハ:同)は、伊藤敬子代表理事がソーシャルビジネスとして2018年に立ち上げた。設立のきっかけは伊藤代表理事の会社員時代の経験による。「男女雇用機会均等法の施行後、女性総合職の1期生として働いていました。ところが、当時は産後2週間で復帰しなければ、そのポストを外されました。出産後の体調が整わない中での仕事復帰には苦労した経験があるため、女性のサポートをしたいと考え当法人を設立しました」(伊藤代表理事)

 家事や育児、介護といった、女性の社会活動の支障をサポートする手段として「家事代行・食事付きシェアハウス」が必要だと考えた。それが形として表れたものの一つが、オーナーズテラスの取り組みなのだ。

▲オーナーズテラス自由が丘Ⅰの外観

 「家事代行・食事付きシェアハウスが増えれば、解決の一助になるかもしれません」と伊藤代表理事は話す。問題の解決には、昔ながらの近所付き合いを行い、地域住民との関係を構築することが重要だと考えた。ただし、近所付き合いを復活させるのは、住民同士では限界があり、孤立する人が出てしまう。「地域が介護と子育てに関わることを誰も強要できません。しかし、法人が人々のつながりも提供すれば、孤立を防止できると考えています。午前6時から高齢者が屋外でラジオ体操をしていても、地域との関係性が構築できていれば、騒音トラブルに発展することはないでしょう」と伊藤代表理事は語る。

 そのために、老人ホームのように建物の中だけで完結するのではなく、地域に出て交流を活性化させることを目指している。

 地域住民が互いに顔を合わせる機会をつくれば、トラブルのない住みよい地域を実現できる。そしてそのつながりが、育児や介護の問題点を地域全体で解決する糸口にもなるのだ。

(2024年10月号掲載)
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