東京23区と比較する
ボンジュール、坂田夏水です。今回はパリの街を東京23区と比較して紹介します。
街の大きさと人口
皆さんはパリ市の大きさを知っているでしょうか。JR山手線内側の面積(約63㎢)の1・7倍程度です。中心部から外側に向かっておよそ10㎞歩けば市外に到着します。移住し実際に生活して、パリは想像以上に小さいと感じました。パリ20区の面積(約105・4㎢)に対して、東京23区はおよそ6倍(約626・7㎢)、ちなみに東京都全体では20倍(約2194㎢)の大きさにあたります。
人口も大きく違います。パリに住んでいる人は約215万人、一方東京23区は約985万人。パリは世界一観光客が多く、一年中にぎわっており、中心部を歩いている人の8割が観光客だといわれています。
そして、街は小さくても中心部の家族向けの住居は広く、150㎡が平均です。300㎡あるという貴族の家もあり、中心部はこういった広めの物件ばかり。そのため、住める人は限られており、人口は大きく変わりません。
しかし、観光客が増えレストランやショップを経営するには良い環境のため、店舗を持ちたいと考える人は増えていると思います。
地域それぞれの特徴
東京23区と同様、パリにもそれぞれの地域の特性があります。例えばセーヌ川右岸には、3区から4区にかけてマレという地域があり、おしゃれなショップやレストランが並んでいます。東京でいうと、渋谷が思い浮かびますね。銀座は、6区のサンジェルマンデプレにあたるでしょうか。セーヌ川左岸にあり、ピカソやシャガールが過ごしたカフェが今も残っています。
パリジェンヌたちからは、「今日は右岸にいたけれど、左岸に帰ってくると落ち着くわ」という会話をよく聞きます。左岸側に住んでいる人にとっては、右岸は商業地が多く、観光客が集まってくる場所のようです。左岸にはカルチェ・ラタンというパリで最初にできた古い地域があり、大学のキャンパスも多く、文化的な雰囲気が漂っています。
さて、パリにもガイドブックには書けないような危ない地域があります。知らずにパリに引っ越したら、周りが英語もフランス語も通じない移民ばかりの地域で、パリが嫌いになったという話も聞きます。例えば19区のラ・ヴィレットの北側には、驚くほど治安が悪いエリアが広がっています。違法滞在している移民が多く、パリのイメージとは懸け離れています。スリが多く、ドラッグ販売も行われているようです。こういった地域は不動産価値も安価になりますが、治安に気を配らなければなりません。
区により違う環境
パリは中心の1区から始まり、外側の20区まで貝の渦巻き状に番号が振られています。数字が大きい外側ほど治安が悪くなる傾向があります。例外的に、16区のトロカデロと17区のシャンゼリゼ付近は高級住宅地が広がっています。東京の六本木や丸の内などのような高層オフィスビルが集まる地域は中心部にはありません。景観を保全するための規制があり、建て替えが非常に難しいのです。
都市開発のための超高層ビルは郊外のラ・デファンスという地域にあります。そのため、そういったビルにオフィスがある大手企業に勤める人は、パリの郊外に住んでいることが多いです。
こういった事情があるにもかかわらず、居住用の超高層マンションが15区にあります。なぜ古い建物ばかりの市内に超高層マンションの建築が許されたのか、不思議に思っていました。以前、そこには大手自動車メーカーのシトロエンの工場があったとのこと。居住用の古い建物が存在せず、1950年に工場が解体されてからの開発だったため、建設が許可されたようです。
一口にパリといってもさまざまな顔があり、住んでみないとわからないことも多いです。
「Décor Stucco(デコールスタッコ)」は、まるでバターやクリームを塗るような感覚で壁の仕上げが可能な自然素材の塗り壁材の漆喰。
水を加えたり混ぜたりする必要がなく、容器のふたを開けたらすぐに塗り始めることが可能なため、DIY初心者にも扱いやすいです。調湿効果や消臭効果があり、壁紙の上から塗ることができます。
夏水組(東京都武蔵野市)
坂田夏水 代表
【プロフィール】
1980年生まれ。2004年武蔵野美術大学卒業。アトリエ系設計事務所、工務店、不動産会社勤務を経て、夏水組設立。空間デザインのほか、商品企画のコンサルティングやプロダクトデザイン、インテリアショップ「Decor Interior Tokyo(デコールインテリアトーキョー)」、インターネットショップ「MATERIAL(マテリアル)」の運営などを手がける。22 年よりパリで日本の建材店「BOLANDO(ボランド)」の運営を開始、現在パリ在住。
(2024年10月号掲載)
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