著者インタビュー今月の一冊:マンションバブル41の落とし穴

賃貸経営不動産投資

マンションバブル41の落とし穴

資産価値を維持・向上させる物件の見分け方

─出版のきっかけは何でしたか。  

東京都心の物件を中心に、マンション価格が上昇を続けています。しかしながら、専門家が見ると、現在1億円で売られているマンションでも将来は5000万~6000万円に価値が下がりそうな物件も見受けられます。そこをどう見分け、資産価値を落とさないためにはどうすればいいのか。読者の処方箋になればと思い書き上げました。

─RC造のマンションはメンテナンスをしっかりすれば、100年持たせることも可能だと聞きます。  

そのとおりです。しかし、修繕積立金が十分にたまっていないマンションは、1回目の大規模修繕はできても、2回目以降が難しくなります。極端に言えば、築50年で十分な修繕がなされずに劣化して売れないマンションと、100年持つマンションとの間で、資産価値の格差が生まれます。ところが、住宅ローンを取り扱う国内の金融機関は、その点に注視せずに築年数だけを見て融資の査定をします。

─こういった査定方法は海外では珍しいそうですね。  

先進国では恐らく日本だけです。アメリカでは築年数がかなりたっていようと、建物があと何年持つかで融資の期間が決まります。ただ、日本でも今後、金利が上がりインフレになれば、住宅ローンの延滞率が上がるでしょう。金融機関が担保物件を引き取った場合、価値が下がって売れないようだと困ります。そこで、日本の金融機関も遠くない将来に建物があと何年持つかで融資の期間を決めるようになると思います。

─そうなると日本の住宅業界において、築年数に関係なく建物の状態が良いことが重要視されそうですね。賃貸経営をする家主にとってもインパクトがあります。

 これからは、すでに持っている物件の資産価値をいかに維持・向上させていくかが、家主の腕の見せどころになります。まずは、定期的に建物の状態をチェックすることが重要です。建物は水に弱いものです。外壁からの雨漏りや配管の水漏れに特に注意してください。共用部の配管には、点検口を設けておくと点検しやすいです。また、①建物の設計図面②設計プロセスがわかる写真やデータ③修繕履歴がわかる書類の三つをそろえておくといいでしょう。特に修繕履歴があれば「この建物はしっかりメンテナンスしてある」と評価されると思います。

著者プロフィール
長嶋修(ながしま・おさむ)

1967年東京都生まれ。不動産コンサルタント。さくら事務所会長。NPO法人日本ホームインスペクターズ協会理事長。99年、第三者的な立ち位置からホームインスペクション(住宅診断)を行う業界初の個人向け不動産コンサルティング会社のさくら事務所を創業する。著書に「バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日」(小学館新書)など多数。

著者:長嶋修
出版社:小学館
価格:990円(税込み)

【概要】
新築、中古ともマンション価格の高騰が続き、「不動産バブル」といわれる中、専門家が見れば、将来資産価値が下がる物件も散見されるという。そういった「落とし穴」について41の視点から紹介している。また、著者はマンションの資産価値を維持・向上させるキーワードとして「管理力」を挙げる。初心者にもわかりやすく解説されており、実需向けでも投資用でも、マンションの購入前に一読しておきたい一冊だ。

(2024年10月号掲載)

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