入居者との思い出:水漏れ発生

賃貸経営入居者との関係づくり

築古アパートで水漏れ発生するも ほかの所有物件への転居勧め解決

 2019年秋、大木雅夫オーナー(東京都新宿区)が所有する築50年ほどの木造アパートで水漏れのトラブルがあり、1階の床下が水浸しになってしまったことがあった。その部屋には、12年から20代の男性Aさんが恋人と住んでいた。Aさんから電話があったときに地方にいた大木オーナーに代わり、同居する息子をすぐ現場に向かわせると、復旧するには転居を伴う大掛かりな修繕が必要であることがわかった。

木雅夫オーナー(68)東京都新宿区

[プロフィール]おおき・まさお
1956年、東京都新宿区生まれ。大手ハウスメーカーに30年間勤務。2003年に父の後を継ぎ兼業家主となった。会社員時代に数多くの相続トラブル対応や空室対策を経験し、父が亡くなった時にはきょうだい間のトラブルなく円満相続し専業家主に。現在東京都新宿区に6棟42戸を所有。

▲Aさんが気に入り、転居先となった1Kの物件。東南向きで日当たりも良い

 大木オーナーは帰京してすぐにAさんの元へ謝罪に行ったが、室内を確認したところ手狭な印象を受けた。元々Aさんは約17㎡のワンルームに1人で入居したのだが、途中で恋人と同棲を始めた経緯があったのだ。そこで大木オーナーは、自身が管理するほかの物件のフルリノベーションした二つの部屋を内見してもらうことにした。

 2部屋とも1Kでバス・トイレ別だったが、一つは約21㎡で家賃は7万6000円。もう一つは約29㎡で、浴室暖房乾燥機とバルコニー付き、東南向きの日当たりの良い部屋で、家賃は8万5300円だった。修繕中の仮住まいの部屋として見てもらったのだが、Aさんは後者の物件を気に入った。元の部屋は6万3000円だったため家賃は2万2300円高くなるが、Aさんは住み替えを希望した。

 大木オーナーは、入居者から退去連絡があった際、所有するほかの物件の内見を勧めている。気に入ったらそちらへ引っ越してもらうことで、家賃収入減を防げるからだ。この方法がトラブル発生時にも役立ったのだ。 トラブルで迷惑をかけたので、大木オーナーは前の契約の敷金をそのまま預かり、新たな敷金礼金はなしにした。Aさんとは日頃からあいさつを交わしたり、世間話をしたりして良好な関係を築いていたこともあり、転居はスムーズに進んだ。むしろ環境の良い部屋への引っ越しを喜んでくれている様子だった。

 「新しい物件は元の物件から徒歩2分のところなので、事業者に頼まず引っ越しができました。同じエリアに複数の物件を持っているからできたことですが、内見してもらって本当に良かったと思っています」と話す大木オーナー。日頃の関係性や、トラブルへの対応の大切さを実感した出来事だったと振り返る。

(2024年11月号掲載)

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