「日管協標準版 賃貸住宅管理業務」
適正な管理がされているのかを家主もチェック可能
家主にとって大事なビジネスパートナーである管理会社。会社によってその業務内容は千差万別だ。家主側も選択基準がなく、どの管理会社に委託すればいいのかわかりにくい。そのような状況の中、賃貸住宅業界の団体である公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(以下、日管協:東京都千代田区)が、「日管協標準版 賃貸住宅管理業務」を策定。管理業務の質の向上を図る。今回は同協会の加藤豊理事にその内容について聞いた。
(公財)日本賃貸住宅管理協会(東京都千代田区)
加藤豊理事

管理会社の業務診断可能
管理業務の範囲は多岐に渡る。2021年に施行された賃貸住宅管理業法でも、具体的な業務項目や内容までは規定されていない。また管理業務の範囲に明確な決まりがない中で、賃貸オーナーや入居者から求められることも増している。
日管協ではこのような状況を鑑みて、賃貸住宅管理事業の専門団体として、さらなる適正な管理業務を推奨していくため、具体的な管理業務を87項目に細分化し「日管協標準版 賃貸住宅管理業務(以下、87のメソッド)」を21年に策定した。

▲日管協標準版 賃貸住宅管理業務は一般公開されている
87のメソッドは、賃貸住宅管理業法に明記された内容(14)と、日管協が定める、通常求められるであろう内容「標準業務」(56)、日管協が定めるより高度な内容「推奨業務」(17)とに区分している。
「賃貸住宅管理業法の内容が公開されたとき、その仕組みは理解しましたが、管理業務は何をすればいいのか、明示されていなかったのです。そこで、全国371社に実態調査を行い、まとめることにしました。当初は約130項目あったのですが、87項目に絞りました。推奨業務の中にはオーナーの相続対策や収益向上などについての提案も含まれています。全項目できている会社は少ないでしょう。ただ一方で、策定から3年がたち、推奨業務をすでに標準業務として行えている会社も増えています」と加藤理事は説明する。
87のメソッドは、当初は同協会の会員限定で公開。管理会社が自社の管理業務の見直しを行う際や今後の管理業務の一助となるよう、ほかにもコンテンツを用意している。
会員向けに周知を進めてきた日管協だが、会員以外の賃貸住宅管理会社などへの理解促進も必須であると考え、24年10月に一般公開したのだという。
管理業務への理解を深める

87のメソッドは管理会社向けだが、オーナーにとっても委託する管理会社が実際にどのような費用に見合った業務を行っているのかを知るためのツールとなる。管理会社が縁の下の力持ちであることも理解できるのではないか。
管理会社に支払う管理費はどのような業務への対価なのか、実際何をどこまで行っているのかを確認できるだろう。特に標準業務に区分されている項目については確認したほうがいい。
ただ誤解を避けたいのが、この87のメソッドの内容すべてが、通常の管理費で賄えるわけではないということだ。「あくまでも管理会社としてこのメソッドの項目の業務を行う体制があるということを示すものです。通常の管理費の範囲で行う項目はありますが、追加の費用が必要なものもあります」(加藤理事)
例えば、設備のメンテナンス費用や点検費用などは、たいてい通常の管理費以外の費用がかかる。通常管理に含まれない業務の中には何があるのか、管理会社に確認しておく必要はあるだろう。
ほかにも留意したいのは、「賃料・敷金等の管理」だ。87のメソッドには、管理受託契約に基づいて、受領する家賃・敷金等を自己の財産と分別して、管理している(賃貸住宅管理業法16条)に従い、日管協預り金保証制度へ加入するなど、敷金、家賃等の預かり金の保全に努めていると明示されている。
「賃貸住宅管理業法では家賃や敷金などを分別管理することが明記されていますが、分別した口座にきちんと入金がされなければ、管理会社が持ち逃げする可能性はゼロではありません。当協会には長年取り組んでいる預り金保証制度があります。オーナーはこうした制度を利用して、健全経営をしている管理会社に自分の大切な財産を預けることが重要です」(加藤理事)
もし、今委託している管理会社に不安があったり、あるいは新規で管理会社を探していたりする場合は、まずオーナー自身が87のメソッドを確認して情報を集めることが役立つだろう。
日管協とは
【賃貸住宅管理業界の適正化と発展を目的とする業界団体】
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の略称で、賃貸住宅管理業界の適正化と発展を目的とする業界団体。不動産を管理する管理会社が加入することで、管理会社が倒産した場合にオーナーからの預かり金を保証する「日管協預り金保証制度」を運営。
(2025年 4月号掲載)
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