韓国・清州の不動産事情
ソウルから120㎞の地方都市
韓国は、日本以上に首都一極集中が進んだ国です。ソウル首都圏だけで、韓国全体の人口の5割以上を占めます。同じ国内でも教育機会やインフラ整備に大きな格差があり、ソウルへの一極集中と地方の過疎化は止まりません。不動産市場においても、ソウル首都圏と地方都市では大きな格差があります。
今回紹介する清州(チョンジュ)市は、ソウルから南へ約120㎞離れた韓国中部の地方都市で、人気の肉料理サムギョプサルの発祥の地とされます。忠清北道の道庁所在地で、人口85万人、韓国内では14位ですが、交通インフラが優れています。「清州国際空港があり、日本や中国への直行便が就航」「韓国高速鉄道『KTX』の駅があり、ソウルまで最速40分で到達」「高速道路のインターチェンジが多数存在する」など、空港、高速鉄道、高速道路が揃った便利な都市です。それでも人口は横ばいで、不動産価格もソウルとは大きな差があります。

築浅区分が約4000万円
韓国都市部の住宅の多くは区分マンションです。清州では、ソウル都心部の約10分の1の価格でマンションが買えます。清州の平均的なマンションは30坪(日本の専有面積換算で24~25坪)程度のファミリータイプで、坪単価84万円なら、2500万円程度です。比較的ハイエンドな築浅物件や市中心部の物件は、4000万円程度で流通しています。
ところで韓国には「チョンセ」という独特な住宅賃貸の制度があります。簡単にいうと、「借主は物件の売買価格の5~8割程度を保証金として家主に預ける代わりに、家賃の支払いがない」「家主は預かった保証金を運用して利益を得る」という仕組みです。

▲日本とよく似た雰囲気の、清州市内の風景
以前は韓国の金利が高く、家主は有利な運用ができました。しかし、近年は金利が下がったため、ソウルなど大都市では月額で家賃を得る家主が増えています。他方、清州を含めて地方では今でもチョンセが一般的で、家賃は普及していません。
ソウルでは月額家賃で貸すことが多く、売買価格に対するチョンセ価格は下落傾向です。一方で、清州などの地方都市では、売買価格の約8割を保証金として受け取るマーケットが維持されています。

アジア太平洋 大家の会
代表 鈴木 学

[PROFILE] 海外不動産に精通し、6カ国語を操るアナリスト。国際不動産エージェントの取締役としても多数のセミナーを主催する。自身も6カ国で物件を所有し、投資・経営を行うグローバル家主。
(2025年 4月号掲載)
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