第44回 変わりゆく損保業界のスタンスについて考える④
保険契約の引き受け制限②
損害保険業界が火災保険契約の引き受け条件を厳格化した背景には、全体的な建物の老朽化が大きく関係しています。自然災害の多いわが国では、経年による屋根や外壁などの劣化・老朽化が、災害時に建物の被害を拡大させる傾向にあることは、統計上明らかになっています。
自然災害以外の要因でも破損や故障が発生し得るのが、さまざまな付属設備です。そしてこの傾向は、建物そのものよりも付属設備に顕著に表れています。
建物付属設備は火災保険では補償の対象
建物付属設備を分類すると、次のようにさまざまなものがあります。
①構造上、建物と一体となっているもの(庇ひさし、雨樋どい、雨戸、階段、バルコニー、ドア、サッシ、建具など)
②給排水設備、給湯設備、ガス設備、電気・通信設備、空調設備、昇降設備などの主に生活インフラを担うもの
③門扉、塀、垣根、カーポート、駐輪場、物置など、建物と分離しているが、付属が必要とされるもの
これらの付属設備は、火災保険では一部の商品を除き、自動的に補償の対象に含まれます。いずれも建物と同じ事故事由に対して補償の対象になりますが、建物と同様、あるいはそれ以上に経年による劣化・老朽化の影響を受けやすいのです。前述の①のような付属設備の耐用年数は、税務上では建物と同等とされていますが、火災保険では建物と同じ耐用年数とは認めていません。
②、③は独立した付属設備であるため、建物とは異なるそれぞれ個別の耐用年数となります。
風災、雹ひょう災、雪災などによって付属設備が被害を受けても、建物以上に経年による劣化・老朽化の影響が大きいと判断され、免責、または保険金が減額されるケースも増えています。
事故の種類や築年数によって 最低免責金額引き上げ
住宅物件の火災保険では、建築年数によって最低免責金額を段階的に引き上げる制度を各社とも導入しています(おおむね築15年以上、建築年月不明の場合を含みます)。また保険期間中に複数回事故が発生した場合には、2事故目以降の免責金額が大きくなる「増額方式」を採用している保険商品もあります。これらはすべての補償項目に適用されるわけではなく、比較的少額な損害事例が多いとされる、風災事故、盗難・水ぬれ事故、破損・汚損事故に適用されています。
築10年未満の建物にしか付帯できない特約も
②のような建物付属の電気・機械設備の故障による損害を補償する「電気的・機械的事故補償特約」は、ほとんどの保険会社、保険商品で新築時から10年以上の建物には付帯することができなくなっています。
個々の電気機械設備で耐用年数は異なるものの、10年を超えたそれらが故障した場合、経年による劣化・老朽化が原因である蓋然がいぜん性が高いとされているからです。
賃貸物件には付属機械設備が数多くあるので、この特約の引き受け制限は家主にとって大きな痛手であるといえるでしょう。
施設賠償責任保険にも引き受け制限
賃貸物件には必要不可欠な「施設賠償責任保険」の単独契約では、申込時に過去の事故履歴を告知しなければなりません。5年以内に人身事故や大規模な漏水事故などの重大な事故が発生していた場合、保険料が大幅に割り増しになったり、契約の引き受けが拒絶されたりすることもあり得ます。
ただし火災保険の特約として契約する場合には、告知内容による引き受け制限はないので、火災保険に付帯して契約するといいでしょう。
「電気的・機械的事故補償特約」は、築10年以上だと付帯できないことが多い
免責金額を設定する必要性
火災保険の収支を改善すべく、損害保険各社は1事故あたりの免責金額を引き上げる措置を取りました。
これは単に支払保険金を削減するという目的だけでなく、少額の事故案件を排除することによって事務費や人件費、調査費などが大幅に削減できるといった効果が期待できます。契約者にとっては、保険料が割り引かれるというメリットがあります。
さらにこれによって保険金支払いまでの時間が大幅に短縮され、顧客サービスの向上にもつながっています。
解説
保険ヴィレッジ 代表取締役 斎藤慎治氏

1965年7月16日生まれ。東京都北区出身。大家さん専門保険コーディネーター。家主。93年3月、大手損害保険会社を退社後、保険代理店を創業。2001年8月、保険ヴィレッジ設立、代表取締役に就任。10年、「大家さん専門保険コーディネーター」としてのコンサルティング事業を本格的に開始。
(2025年 4月号掲載)
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