アルゼンチン・ブエノスアイレスの不動産事情
欧風建築物が並ぶ文化都市
アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスは都市圏人口1400万人超で、南米大陸ではブラジルのサンパウロに次ぐ巨大都市です。「南米のパリ」とも呼ばれ、ヨーロッパ調の重厚な建築物と美しい都市景観で知られています。
20世紀初頭のアルゼンチンは、世界有数の裕福な先進国でした。昭和期のテレビアニメ「母をたずねて三千里」では、主人公のマルコ少年の母親が1880年にイタリアから高収入を求めてアルゼンチンに出稼ぎに行く姿が印象的でした。巨大な農業生産力と欧州からの移民流入で大繁栄する当時のアルゼンチンの所得水準は、世界トップクラス。1920~30年代には早くも自動車が街を走り回り、高さ120mのタワーマンションが立つ、夢のような先進都市でした。

ところが、戦後のアルゼンチンは不安定な時代が続き、残念ながら先進国から脱落しました。しかし、かつて栄光の時代を過ごした片鱗は今でも感じられ、「街並みの洗練度」は巨大都市サンパウロに勝ります。またタンゴはもちろん、オペラも今なお世界最高レベルである、名高い文化芸術都市です。

▲「南米のパリ」と称されるブエノスアイレス。ヨーロッパ調の建物が立ち並ぶ
不動産市場は二極化進む
90年代以降、3度の債務不履行を起こしたアルゼンチンは、高いインフレ率と通貨アルゼンチンペソの下落が今でも続いています。ミレイ大統領による大胆な経済改革も道半ばです。不動産の売買価格にせよ、家賃にせよ、名目値はプラスでも、インフレ率で除した実質値ではマイナスの状況が続いています。
ただ、不動産マーケットが二極化していることも事実です。ブエノスアイレスの都心部や市内北部の富裕層エリアの物件は「売買も家賃も米ドルが当たり前」という世界で、ペソ建ての一般的な物件に比べて圧倒的な勝ち組になっています。
新築区分が約3000万円
そして、勝ち組の米ドル建て物件でさえも、国際比較のうえでは割安といえます。例えば私が内見した都心の新築レジデンスは、専有面積49㎡で販売価格が21万1000ドルからで、坪単価にすると200万円程度。想定家賃が月800ドル、表面利回りが4%台後半でした。
「人口1400万人の大都市の中心部で、新築マンションが約3000万円で買える」のは割安だと感じます。文化的に洗練された都会のど真ん中ですから、間違いなくお値打ちですね。
アジア太平洋大家の会
代表 鈴木 学

[PROFILE] 海外不動産に精通し、6カ国語を操るアナリスト。国際不動産エージェントの取締役としても多数のセミナーを主催する。自身も6カ国で物件を所有し、投資・経営を行うグローバル家主。
(2025年 5月号掲載)
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