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金融機関攻略で経営規模を拡大 空室問題にも独自サービスで対応
志磨村輝オーナー(高知市)は高知市と高知県南国市・四万十市を中心に賃貸経営をしている。その保有戸数は、個人・法人合わせて2025年4月1日時点で9棟146戸だ。
志磨村輝オーナー(50)(高知市)

志磨村家の賃貸経営は、元々志磨村オーナーの祖父の代から保有していたアパート数棟を親が相続したところから始まったという。
「親が賃貸経営についてよくわからないまま、急に継いでしまったのです」(志磨村オーナー)
当初は物件の半数以上が空室で、放置されていたような状態だった。志磨村オーナーは「このままではもったいない」と思い、親を手伝う形で自らアパート経営に参加。何とか満室にできた経験から家主業の面白さに目覚め、自分でもアパートを取得したいと思ったという。
その後、まず志磨村オーナーは、祖父の代から懇意にしていた地方銀行に行った。そして、今の段階で個人としていくら融資をしてもらえるのか上限を確認した。その情報を参考に、購入費用とリフォーム代の合計で2200万円のローンを組むことができた。そして2014年に取得したのが、築35年・ワンルーム・6戸の軽量鉄骨造アパートだった。
「本当に購入のタイミングが良かったと思います」と語る志磨村オーナー。融資上限額を確認したときの支店長はすでに同支店での勤続年数が長く、異動がいつあってもおかしくなかった。金融機関の支店において有志の判断は支店長が大きな影響力を持つ。
「異動前に何としても買おうと急いで探しました。購入して間もなく異動したので、ぎりぎり間に合いましたね」と志磨村オーナーは笑みをこぼす。
銀行と自身の評価基準のギャップを痛感した2棟目購入
1棟目は支店長の異動前に滑り込みで購入できたが、不動産投資で悩む人が多いのが2棟目の融資だ。志磨村オーナーもここで少し苦戦した。インターネットで毎日のように物件を探し、ようやく「これだ!」と思える物件を見つけた。築30年で16戸の軽量鉄骨造アパート。指し値も成功し、想定利回りは15%だった。あとは融資承認を待つだけで、その金額は約3300万円だった。しかし、水路至近という立地や接道条件などの悪さから、銀行評価は低く融資は下りなかった。
購入がうまく進まない日々が続く中、銀行側から提案を受けた。「こういうRC造物件がありますが買いませんか?」と提案を受けた。築17年・15戸のRC造マンションで、金額は7300万円。先日否認された金額の倍を超えていた。
「3300万円の物件への融資を断られた直後だったので、正直驚きました」(志磨村オーナー)
この物件の利回りは約9%。利回り10%を基準に考えていた志磨村オーナーにとって利回りは低い。しかし、物件の銀行評価は高く、30年の長期でフルローンを組むことができた。そのため、利回りが低くても毎月の手残りは悪くないと判断し、購入を決意。RC造なので法定耐用年数がまだ30年近く残っていることが、銀行評価を高めた。また物件のエリア自体はそこまで良くなかったが、接道条件の良さなどからも銀行評価は高くなったという。志磨村オーナーはこの出来事で、評価基準において金融機関と自身の間にはギャップがあることを痛感した。1棟目を購入した翌年のことだった。
その後はすでに2棟を経営している実績から、銀行の融資審査も比較的通りやすくなった。翌16年には高知市に築30年超・1棟10戸の軽量鉄骨造アパートを購入。また18年には南国市にある築30年超の21戸のRC造物件を購入した。この物件は全戸が空室で放置されていたため、市場価格の半値以下にあたる約1500万円で買うことができたという。ただ、手入れがされていなかったこともあり、建物の傷みも激しかった。大規模修繕や空室のリフォームで約2500万円の費用が見込まれ、結果的に4000万円を超えるローンを組んでの購入となった。

18年には全戸空室の物件を格安で購入し再生した
「実はこの物件、リフォームもしっかり行っていたのですが、なかなか満室にならなくて。ようやく今年満室になりそうです」(志磨村オーナー)
賃料アップよりも空室問題解消が最優先
次なる課題は、地方ではより顕著な問題でもある空室対策だ。そこで志磨村オーナーが近年注力しているのが猫飼育者向け物件の展開だ。22年に購入した3DK・6戸の軽量鉄骨造アパートは、元々空室だった5室を
〝猫専用部屋〟にリフォーム。ペットによる破損請求なしというルールを設け、借主側の負担を軽減した。また保護猫飼育者限定で1カ月賃料無料特典を付けるなど、徹底して猫飼育者を歓迎した。
- キャットウオークなどを設置し、猫飼育者に喜ばれる内装にした
- 6戸中5戸が空いていた物件。空室を猫飼育者用にリフォームした
この結果、物件の希少性が高まり、地方都市でありながらリフォーム完了前から入居申し込みが入る珍しい物件となった。
「田舎だとリノベーションで賃料を上げるには限界がある。それならば、こだわるところを限定して空室対策に取り組んだほうがいい」(志磨村オーナー)
コストを抑えつつも魅力的な住空間をつくり、高稼働率を維持することに注力している。
(2025年 7月号掲載)
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