【特集】外国人からの紹介で空室ゼロ、トラブルは審査で防ぐ

賃貸経営入居者との関係づくり

<<入居前が肝心 トラブルを防ぐ 受け入れ方法>>
外国人受け入れを成功させるには、地域の環境や物件によって方法は異なる。不動産会社や不動産オーナーに実例を紹介する。

入居者を審査しトラブルを防ぐ
外国人からの紹介で空室ゼロ

佐藤工祐オーナー(群馬県太田市)

 会社勤めの後、家業である不動産会社を二代目として経営していたが、父親からの相続をきっかけに専業家主になった佐藤工祐オーナー(群馬県太田市)。物件を相続した15年から外国人を受け入れており、現在は入居者のうち9割を外国人が占める。保有しているアパート5棟、戸建て11棟、テナント1戸の合計50戸は満室だ。外国人入居者の場合、同じ国の仲間のつながりが強く、空室が出ても紹介ですぐ埋まるのだという。

 佐藤オーナーが多くの物件を所有している太田市は、自動車メーカーSUBARU(スバル:東京都渋谷区)の生産拠点だ。関連工場が数多くあり、外国人技能実習生や工場勤務の外国人が多く住んでいる。

 自分自身も海外生活を送った経験があり、英語を話せることから外国人の受け入れを始めたが、当初は文化の違いからトラブルが多かったという。例えば、油による配管の詰まりだ。

 「アジア圏の外国人は、調理の際に油を使う場合が多いのですが、揚げ物の油をそのままシンクに流してしまうことがあります。その結果、事業者に1回で2万円も支払う排水管の洗浄を何度も行いました。現在は入居前に油をシンクに流さないように説明したうえで、食用油の凝固剤を渡しています。ただ、凝固剤は安くはないので、新聞紙や余った紙に油を吸収させてから捨てるように指導したところ、排水管の詰まりはほとんどなくなりました」と佐藤オーナーは話す。

 外国人入居者が起こすトラブルは、自国との文化の違いから生じるため、理解できるように説明すれば問題にならないという。「外国人受け入れのトラブルの典型であるごみの分別問題に関していうと、外国では分別せずにまとめてごみ出しできる地域も珍しくありません。ごみ捨てするときに、分別することをしっかり指導すると、ルールを守ってくれます。生活の決まりを説明すれば、外国人だからといって大きなトラブルは起きていません」(佐藤オーナー)

 自主管理をしているため「安心して貸し出せる入居者」を入居審査で見極めることを心がけている。現在は佐藤オーナーが入居審査時に、在留カードやパスポートをチェックしたうえで、来日した経緯や今までどういった賃貸物件に住んでいたのかなどを細かく質問している。人となりを見ることで、トラブルを起こす入居者かそうでないかを判断できるという。

 また複数人で入居する場合は、家族のみ受け入れている。友人同士での入居は不可だ。これは、複数人の男性のみで入居する場合、夜間や週末に飲酒をすることで盛り上がり、騒音トラブルに発展しやすいためだ。

▲佐藤オーナーに感謝の気持ちを表すために入居者が自宅に招いた

生活のサポートも行う とことん寄り添ったサービス

 佐藤オーナーは、日本語が話せない外国人入居者に対して、救急搬送の付き添いや保育施設探しなども行っている。さまざまなサポートをした結果、口コミで「外国人が頼れる家主だ」という評判を得られ、空室が出たら入居したいという空き待ちが出ている状況だ。

 入居者満足度も上がった。ある物件では、更新時期を問わず、全室の家賃を一律10%値上げした。しかし、住人からは不満の声は上がらず、値上げに同意してくれた。物件を訪問すると、佐藤オーナーに感謝の気持ちを伝える目的で、食事に誘われることも多いという。

 そして、賃貸物件に住んでいる入居者から、戸建てがあったら借りたいという相談が来ることから、相続した物件以外に戸建ても購入している。来日当初は単身のため、アパートに住むが、日本での暮らしが安定すると母国から家族を呼び寄せるパターンが多い。そのため、アパートでは手狭になった入居者が戸建てへの引っ越しを希望するのだ。一度入居があると、所有物件内での住み替えもあるため、今後も戸建て物件を仕入れていきたいと考える。

(2025年8月号掲載)
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