秋田に根差した企業寮で地域との共栄を図る
エネルギー・食材の地産地消で地元経済に貢献
電子部品メーカーのTDK(東京都中央区)の企業寮「ZiNOBA(ジノバ)」は、2023年9月のオープンから約8カ月が経過した。地域との交流や共栄のために、日々取り組みが進められている。
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▲社員と地域住民が交流できるジバノジバ 写真=ナカサ&パートナーズ
TDK 総務本部 秋田・庄内総務部
(秋田県にかほ市)
中杉仁一氏(45)
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まちとつながる企業寮
ZiNOBAは、秋田県由利本荘市にあるTDKの企業寮だ。名前の由来は、事業化の目的である磁性材料フェライト。磁石の特性と同じく、地域においても多くの人を引きつける磁力となる場を目指すという思いがネーミングに込められている。
ZiNOBAは社員が入居する住居棟と共用棟「ジバノジバ」から成る。住居棟はすべて単身者向け。約350戸は、ほぼ満室だ。
その特徴は、日ごろから寮内に地域の人々が集うこと。共用棟のジバノジバには、コインランドリーやコミュニティールーム、スポーツジム、食堂、シェアキッチンがある。地域の高齢者が集まってランチをしたり、高校生が勉強したりと多世代が過ごすことができる交流の場となっている。
また、地元経済の活性化にもこだわる。「ZiNOBAの食堂では、地元の食材を積極的に使っています。秋田県は山のものも海のものもおいしいですから。電力の多くは秋田県で発電した自然エネルギーを利用。可能な限り地産地消を心がけています」とTDKの秋田・庄内総務部の中杉仁一氏は話す。
実は、TDKの創業の地は秋田県。同社は地域と共に歩んできた歴史があり、今も地域共栄のDNAが受け継がれている。
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▲若手社員の意見を生かした住居棟の一室
▲地域住民も利用できるジム
まちづくりプロジェクト発足
ZiNOBAは、まちづくりプロジェクトの柱の一つとしての顔も持つ。隣地に病院、特別養護老人ホーム、小学校、商業施設などがつくられる予定だ。
18年に由利本荘市に同社が社員寮の用地について相談したところ、地域側にも小学校の統合や病院不足などの悩みがあることがわかった。そして、一番堰エリアの課題を解決する「一番堰まちづくりプロジェクト」が発足した。北都銀行(秋田市)が協議会の事務局を担いながら、病院や特別養護老人ホームの民間事業者、由利本荘市も一体となって活動して今の計画にこぎ着けたのだという。
イベントから生まれたつながり
人口減が見込まれる中でも、エリアとして成長し、楽しむ部分を担うZiNOBA。イベントの開催にも力を入れている。
寮の開業を記念した9月の「ZiNOBA OPENING FES!!!」には、約800人が参加。「食べる・遊ぶ・つくる」をテーマに、石窯ピザづくり体験、TDK軽音楽部によるライブ、地元大工によるDIY教室などが行われた。
その後も、月1回程度はイベントを開催している。例えば、施設内にあるスポーツジムと食堂がコラボレーションした、「シックスパックをつくる会」。1週間にわたって食堂で栄養士監修のもと高タンパク質の食事を取り、ジムで筋力トレーニングを行い、筋肉量を競った。イベント後には、ジムの利用者が増えたという。
メディアでも取り上げられ、ZiNOBAに訪れる人も増加した。「イベントをきっかけにTDK社員と地域のつながりは深まっています」と中杉氏は話す。ZiNOBAを通じて、国内外から集まる社員や地域の人との新たなコミュニティーが生まれている。また、イベントの参加者は若者から高齢者まで幅広く、多世代間の交流にもつながっているのだという。
「介護施設や小学校が完成すれば、今以上に多世代が集まるエリアとなります。世代間交流が活発になり、一番堰の魅力になるでしょう」(中杉氏)
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▲ジバノジバでの地域交流イベント ▲ZiNOBA全景
(2024年6月号掲載)