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ロマンス詐欺に遭った入居者男性新たな幸せつかむまで支え励ます
日頃から、入居者のさまざまな相談に乗っている杉村八千代オーナー(名古屋市)。入居者の母親代わりのような家主だ。
杉村八千代オーナー(56)
名古屋市
2019年、名古屋市中区に建設した新築アパートに、40歳前後の独身男性A氏が入居した。A氏は日頃から「彼女が欲しい。結婚したい」と口にしていたが、ある日突然、A氏から「僕の彼女が困っているので、大家さんも助けてください」と電話がかかってきた。
聞けば彼女というのは、米海軍に勤務する女性だという。「親戚が病気なのでお見舞いに行きたいが、海軍に100万円の権利金を支払わないと外出許可が出ない。送金してほしい」と頼まれ、A氏は手元にある生活費をすべて振り込んだ。ところが、それでもまだ足りないので、「さらに振り込んでほしい」と言っているという。
「A氏の『インスタグラム』を通じて連絡してきたというその外国人女性の写真をインターネットで検索したところ、同じ写真がたくさん出てきたのです。恋愛感情を利用した『ロマンス詐欺』だと直感しました」(杉村オーナー)
杉村オーナーはすぐに警察に相談し、振り込みを中止するよう銀行に話してもらったが、お金はすでにアメリカに振り込まれており、戻ることはなかった。
だまされたと知ったA氏はひどく落ち込み、精神を患い働けなくなった。杉村オーナーはA氏を励まし、知り合いに声がけをして就職先を探すなど、親身に相談相手になった。そのかいあって、最終的にはA氏自身が見つけた会社に就職を果たし、滞納していた家賃も支払えるようになった。
それから3年ほどたった頃、杉村オーナーはA氏が女性と歩いているのを街で見かけ、彼女ができたのだとほほ笑ましく思っていた。そして23年12月、「結婚するので引っ越します」とA氏から電話がかかってきた。
「A氏は今も近所に住んでいます。『彼女ができない、結婚したい』と言っていたとき、『私の物件に住んでいたら、絶対結婚できるから!』とよく話していました。そのとおりになって、本当によかったです」と杉村オーナーは笑顔で語った。
▲A氏が住んでいたアパート。当時は新築だった
(2024年6月号掲載)