激務の企業勤めとの兼業を四半世紀 23年夏、ついに専業家主となる
「長らくサラリーマン家主を続けていましたが、その間の会社勤めはフルタイムの激務でした」と語るのは、神奈川県を中心に賃貸住宅351戸、戸建て20戸のほか、区分所有マンションや駐車場などを所有する出口裕之オーナー(横浜市)。
出口裕之オーナー(53)
(横浜市)
大学卒業後、1993年に大手鉄道会社に総合職として入社。車掌や駅員、駅長などを務めたほか、本社勤務や地方への転勤も複数回経験し、一時期は2000人以上を抱える地方拠点の統括的な立場でもあった。最終的に子会社の役員を務め、2023年6月に退職するまで約30年間を会社員として過ごした。
▲サラリーマン時代、地方拠点の幹部を務めていた頃の出口オーナー
不動産経営を始めたのは2000年。亡き父から区分所有マンション4戸と、青空駐車場2カ所(合計15台分)を相続したのがきっかけだった。出口オーナーは、「初めて家賃が入ってきたときに、『不動産経営は最高だな』と思いました」と振り返る。「その頃、私は29歳で月給が二十数万円でした。一方、区分マンション1戸の家賃が約10万円で、額の大きさに驚きました」(出口オーナー)。ただ、当時は深夜に帰宅することも珍しくないほど多忙で、所有物件をそれ以上増やす余裕はなかった。
物件を買い増していったのは、管理職になっていた05年以降だ。サラリーマンの仕事も手を抜くことはなかった。「当時は、私も含めて社員みんなが全身全霊で働いていました。私も『会社の業務をおろそかにはしない』と固く決心しました」という。不動産経営のために無理して仕事を休むことも、業務中に不動産会社から個人携帯にかかってきた電話に出ることもなかった。そのために、ほかの家主とわずかな時間の差で好条件の物件を買い損ねるなど、悔しい思いも経験した。
終業後と休日は不動産経営に充てた。平日の午後8時を過ぎて、都内の職場から神奈川県の横須賀市や厚木市まで物件を見学に行くこともよくあった。出口オーナーは「家主業が好きだったので、そのためなら夜遅くの行動も苦になりませんでした」と語る。休日には、遠方への家族旅行の機会を利用して、現地の不動産を見学し、後に購入したこともある。
今後は家族経営の体制を構築
出口オーナーの経営スタイルは、長期所有し、物件数を拡大させることだ。キャピタルゲインは狙っていない。投資ではなく、あくまで不動産経営を行っているとの考えからだ。「家主業は自分自身が経営者です。良い話も悪い話も、全部自分に返ってくる。これが面白いとずっと感じていました」と振り返る出口オーナー。定年退職を待たずに体が動くうちに少しでも早く専業で家主業にシフトしたいという思いもあり、23年、子会社の役員の任期満了を機に専業家主となった。
出口オーナーは不動産経営を一生の仕事にと決意する一方、今後は家族経営で拡大していきたいと考えている。既存の資産管理法人とは別に新たな法人も設立し、家族を株主にするなど、将来の事業承継も見据える。
(2024年6月号掲載)
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