著者インタビュー今月の一冊:世界の不動産経済の潮流

賃貸経営不動産投資

世界の不動産経済の潮流

 著者:坪田清 出版社:プラチナ出版 価格:1650円(税込み)

 概要 勤務していた三井不動産で1993年から一貫して海外の不動産市場を見続けている著者が、2015年以降の動きについてコラム形式で記した一冊。アメリカ、欧州、中国、シンガポール、オーストラリアなどの不動産に注目。併せて各地の大都市の住宅価格の推移や、オフィスビル、商業施設、富裕層向け大邸宅などの取引について解説する。日本にはないアメリカの珍しいREITも紹介している。

所有して貸すだけが賃貸経営ではない

 ─近年の世界の不動産市場の動向を教えてください。  

 大きくは不動産と金融の世界の融合が進み、国際間取引が急増しました。これはアメリカから始まり、その象徴がREIT(リート)です。日本でも法律に基づいて不動産投資信託とされ、2001年からJ─REITの取引が開始されました。アメリカでは日本の商店街にあるような商店を数店舗集めた、ごくごく小さなショッピングセンターがREITに組み入れられて、頻繁に売買されています。

─そのような動きを、日本の家主たちはどのように参考にすればいいでしょうか。  

 所有物件を持ち続けて貸すことだけが賃貸経営ではないということです。日本では、土地や建物は持ち主が所有し続け貸し出すスタイルが長年続いてきました。大手不動産会社は1980年代後半のバブル期前から、所有して貸すだけではなくて物件そのものを売ることを始めました。開発したものをREITに売ることも多くあります。一方、中小規模物件の持ち主である家主の間では、物件を所有し続けて賃貸するという考えがいまだに根強いです。ただ、家主もREITを活用できるはずなのです。

─どういった方法がありますか。  

例えば、コンビニエンスストアに特化した「コンビニREIT」があっても面白いと思います。コンビニのフランチャイズチェーン(FC)店を運営するには多額の出店費用がかかります。コンビニREITが店を所有して賃貸する形にすれば、FCオーナーは出店費用や店舗維持費用を抑えられるうえ、賃料を払って運営に専念できるのです。既存のコンビニなら家主は不動産部分だけを現物出資し、REITの投資口を得れば、その後は家賃の代わりに配当を受け取ることになります。

─日本の個人家主が世界の動きを知るために必要なこととは。

 アメリカの動きを勉強するといいと思います。無料で読むことができる開示データが豊富で議論も尽くされており、今後世界の不動産市場で何が起こるかのヒントになります。可能ならば現地の一戸建てを購入して賃貸することをおすすめします。日本の住宅ローンにあたる、アメリカ独特の「モーゲージ・ローン」などの制度の違いや、実際の賃貸経営に関することを実体験で学ぶことができます。

著者プロフィール 坪田清(つぼた・きよし)

1953年、東京都生まれ。東京大学工学部都市工学科卒業後、三
井不動産に入社。1993年から一貫してグローバル不動産経済の
動向調査や海外からの視点による日本の不動産、政治・経済
に対する論調調査、分析に従事。2014年6月、同社を退職し、ジャパン・トランスナショナルを起業。
「グローバル不動産経済研究会」主宰。セミナー講演も多数

(2024年6月号掲載)

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