不動産は情報取得で差別化できる
迫る金利上昇局面に立ち向かえ
2016年から導入されてきたマイナス金利政策が終わろうとしている。金利の動向は目が離せない話題だ。今後の金利動向と不動産オーナーに与える影響について、金融知識とITを用いて借り入れや物件価格について分析してきたMFS(東京都千代田区)の塩澤崇取締役COOに聞いた。
MFS(東京都千代田区)
塩澤崇取締役COO(42)
――金利はいつ、どの程度上がると考えますか。
金利は急に上がるのではなく、25~26年ごろの上昇終了となるだろうと考えています。上がったとしても、1%程度になるでしょう。そもそも、金利と賃金は正比例の関係。金利が上がるということは前提として賃金も上がっている、つまり、日本経済はいい状況だということです。金利上昇で路頭に迷う人が続出するということにはならないので安心してください。
――一般的に、金利が上がると不動産価格は下がるといわれています。
サラリーマンがマイホームを購入する際、金利が1%上昇すると価格が20%下がるといわれます。購買力が追い付かず、需要が低くなるからです。賃貸住宅でも同じです。しかし、金利のほかにインフレと人口の二つの要素が影響を与えるのです。
――インフレと人口は不動産価格にどう影響しますか。
今日本ではインフレが進んでいます。貨幣価値が下がっており、不動産価格は上がると考えられます。次に人口の要素です。人口減少の局面では大都市に人が集まります。大都市では不動産価格が上がり、地方では下がるという二極化が進むのです。不動産価格は、金利、インフレ、人口の三つの要素で見ていく必要があります。都市部の優良物件は、金利上昇の局面でも価格が上がるのではないでしょうか。
――そうすると、賃貸経営自体が成り立つのか不安があります。
賃貸経営の収入源は家賃です。契約更新や退去の際に家賃を上げるにせよ、タイムラグがあります。加えて、修繕に際しての資材や人件費も高騰しています。速やかに売り上げ(家賃)をアップさせ、支出(経費)増に立ち向かう。そのために、どのように差別化物件にしていくのか。そのマインドがデフレ時以上に大切になるでしょう。
――難しい時代を迎えますが、それでも感じる不動産投資の魅力を教えてください。
不動産購入の場合は、レバレッジが効くのが最大のメリットです。加えて「情報」も魅力です。不動産の場合、開発や物件の情報を簡単に知ることができます。もし株取引ならインサイダー取引と言われてしまうでしょう。情報を知ったうえで物件を購入できるので、株より確実だと思います。地方や郊外はハイリスクかもしれませんが、都市部は変わらずミドルリスク・ミドルリターンではないでしょうか。
(五林麻美)
06年、東京大学大学院修了。モルガン・スタンレー証券ボストン コンサルティング グループを経て15年より現職。住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」や、AI(人工知能)で不動産価格や純資産が分かるアプリ「INVASE Pro(インベースプロ)」などを運営。
(2024年7月号掲載)
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