不動産経営をする際には、銀行から融資を受けることでよりスピーディーに収益を増やすことができます。
「不動産の賃貸経営をするのに銀行からいくらぐらいの融資が受けられる?」
「銀行から融資を受けるにはどうすればいい?」
「現金の流れ(キャッシュフロー)の計算方法は?」
不動産の賃貸経営をするために、銀行から融資を受ける際の返済方法や金利、キャッシュフローや担保評価の計算方法、また銀行との付き合い方を「家主と地主編集部」が解説します。
融資金額の計画を立てる
不動産経営では、銀行から融資を受けてレバレッジを利かせて収益を増やすことができます。
「レバレッジ」とは、てこの原理を意味し、小さな力で大きな力を得ること。経済活動において、お金を借り入れ収益を高めることをいいます。
土地の購入費や建築費など、不動産の購入価格は高く、アパートやマンションを取得するような額を現金で一気に出せる人は多くありません。
また借り入れにより自己資金だけでは購入できないような、規模の大きい物件を購入できます。
当然、手取り額も多くなり事業成長のスピードが上がります。
借り入れの例
借り入れ | 物件購入費 | 利回り | 年間家賃収入 |
0円 | 1,000万 | 10% | 1,000万円×10%=100万円 |
4,000万円 | 5,000万 | 10% | 5,000万円×10%=500万円 |
例えば、自己資金だけで1,000万円の不動産を購入し、仮に利回りが 10%なら100万円の年間家賃収入になります。
一方、4,000万円を借り入れて5,000万円の不動産を購入した場合は、利回り10%であれば500万円の利益になり、家賃収入が5倍になります。借り入れをすることで、レバレッジを利かせてより多くの利益を得ることができます。
借金ですので、返済のための利息や収入増による税金で支出は増えますが、借り入れを行って不動産経営をしたほうが最終的な手取り額を増やしていけるケースが多いです。
2つの返済方法
不動産経営のために銀行から融資を受けた場合の返済方法には以下2種類があります。
- 元利均等返済
- 元金返答返済
どちらの場合でも、利息は経費計上できますが、元金は経費計上できません。
元利均等返済
元利均等返済は毎月の返済額が同じになる仕組み。返済開始当初は、返済額のうち利息の占める割合が高いので、総支払額は多くなります。ただし、経費計上できる利息部分も穏やかに減って行くので、返済計画が立てやすいのがメリットです。
元金均等返済
元金均等返済は、毎月の元金の返済額が同じで、借入金残高に対して金利をかけて利息を支払っていくため、借入金残高のうち元金部分が毎月同額ずつ減っていきます。そのため、支払う利息分も返済を重ねるごとに少額になります。元金均等返済は、最初は返済額が多くなるものの、何回か返済した後は元利均等返済よりも毎月の返済額は少なくなり、総返済額も元利均等返済より少なくなります。購入時点で現金に余力がある場合がおすすめです。
金利の選択
不動産経営のために銀行から融資を受けた場合の返済金利には以下2種類があります。
- 固定金利
- 変動金利
融資条件 | 毎月の支払額 |
固定金利:全期間2% | 約37万円 |
変動金利:0.5% 3年目に2%金利がアップ | 約30万円⇒約40万円 |
変動金利:0.5% 25年目に2%金利がアップ | 約30万円⇒約31万円 |
(1億円を借り入れ、3年目、25年目で金利が2%上がったケースの比較)
固定金利の場合は、返済額が予測できるので計画が立てやすいです。一方変動金利の場合、返済が多く残っているうちに金利がアップすると返済額が跳ね上がります。とはいえ、返済がある程度終わっていれば影響は少ないでしょう。
固定金利
固定金利は金利上昇リスクに強いですが、変動金利よりも金利が高い傾向にあります。借り換えや売却などで一括返済をするときは、違約金の支払いも必要となります。違約金は借入時の約定によりますが、借入残高の2%ほどになります。
変動金利
変動金利は、金利が低ければ返済額を抑えられますが、金利が上昇した場合、返済額が大きくなる可能性があり、金利が上昇するタイミングも重要なポイント。
返済が進めば、返済金額に占める金利部分は減ってきます。金利が上昇したタイミングが利息分の返済が少ない段階であればダメージは少なくなります。一方、返済利息額が多い時点で金利が急上昇すると返済に窮する事態になりかねません。
不動産投資キャッシュフロー
税引き後キャッシュフロー
不動産経営では、税引き後のキャッシュフローをシミュレーションするのがとても大切。総資産が多くても、手元の現金が少なければ資金繰りが苦しくなります。
所有年数が長くなると減価償却の終了や損金に計上できる利息分の返済が減り、税金が増えてきます。表面利回りにに魅力を感じて購入した結果、数年後に現金が手元に残らなくなり売却するケースは珍しくありません。
借入期間+5年が目安
シミュレーションは、借入期間+5年が目安です。新築であれば 35年分程度、中古であれば 25年分程度になります。
気を付けたいのが「黒字倒産」。黒字倒産とは、税・経費控除後のキャッシュフローが、マイナスになる状況を指します。
通常の不動産経営で収入を得ても、個人の場合は所得税・地方税・個人事業税、法人の場合は、法人税・法人住民税・法人事業税の法人税を払いきれない状況に陥ることがあります。
また、変動金利や期間固定金利で借り入れている場合は、金利の上昇が返済に影響します。変動金利の場合は金利上昇後すぐに影響があり、期間固定金利の場合は、固定期間終了後に大きなダメージを受けることとなります。
10 年目や15年目、20年目の節目で金利が上昇した場合のシミュレーションを作成するといいでしょう。金利が現在よりも2%上がった想定でも税引き後キャッシュフローは出るのかという観点でシビアに数字を見ることが重要です。
不動産の空室率を計算
常に不動産の満室を想定して返済計画を立てるのは危険です。どの程度空室が出たら収支がマイナスになるのかを考慮し、借り入れる必要があります。
例えば10戸の不動産で、家賃が1戸10万円で10戸100万円とした場合、仮に返済が80万円だと返済比率は、80%(返済額÷収入=80万÷100万)になります。2戸空室になっただけで経営危機の状態です。この不動産で半分空室になった場合でも返済可能な状況とするには、返済額は月50万円までが理想といえます。
借入期間
例えば、 借入期間が異なる以下2つを比較します。
- 1億円を元利均等返済で借り入れた場合、金利が1.8%で返済期間が15年の場合、毎月の返済額は約62万円
- 借入金利は3.5%と高めだが、返済期間が 30年だと毎月の返済額は約45万円
たとえ金利が高くて も、返済期間が長ければ月々の返済額を低く抑えられます。上記のケースではその差額は17万円にもなりました。
基本的に、金利が低いほど審査がシビアな傾向にあります。まずは金利が高くても返済期間が長い金融機関で借り入れを行い、数年後、経営実績や、預金や個人年金保険、クレジットカードなどへの協力をネタにして金利引き下げ交渉すると良いでしょう。
不動産担保の計算
借り入れの5原則
金融機関が、融資の可否を判断するには以下の5原則があります。
公共性
安全・安心の快適な住環境を提供しているか。
成長性
賃貸経営において、返済は長期にわたることが多いため、今は問題がなくても将来的に成長するエリアか、時代の変化に対応できる間取りかなどの未来予測をする。
健全性
物件の遵法性や社長の資質、財務状況を検討する。
収益性
賃貸経営で利益を上げられそうかチェックしている。
流動性
何からの事情で返済ができなくなった場合に、物件売却によって返済が可能かを見る。
融資相談時の必要書類
融資を受ける際の必要書類は以下の通りです。
【不動産関係の資料】
- 物件概要書(チラシ)
- レントロール(各部屋の家賃明細)
- 登記簿謄本、公図、建物図面
- 住宅地図・路線価図・売買契約書
- 重要事項説明書 物件の写真 周辺環境の説明
- 検査済証 建築確認書
【所得関係の資料】
- 会社員の場合:源泉徴収票と住民税決定通知書3年分
- 自営業の場合:確定申告書3年分
- 会社役員の場合:会社の決算書第3期分と会社員としての所得資料3年分
【そのほかアピールできそうな資料例】
- 一人っ子であること(家系図と両親の資産)
- 保証人の収入、保有資産、
- 国家資格
【属性の関する資料】
- 経歴書:氏名、住所、電話番号、勤務先、勤務先住所、住民票、免許証、電話番号、所属部署、経歴、勤務年数、家族、家系図
- 金融資産一覧:エビデンスのコピーを添付するとなおよい
- 所有不動産一覧:登記簿謄本、現在のレントロール、住宅地図のコピー
- 返済一覧表:借りた金額と残高、金利はいくらかが明記された銀行作成の返済一覧表
担保評価を計算する
土地と建物の担保評価の合計によって融資の可否や借入可能額が決まります。金融機関側としては、万が一のときには担保を処分することで貸出金を回収できるかどうかが判断軸となります。
担保では融資金額を回収しきれない場合、金融機関は購入する物件以外の担保(共同担保)や、頭金を求めることになります。
担保評価の計算方法を簡便法を用いて考えていきます。担保評価には以下2種類の数字を使います。
- 「評価額」
- 「査定額」
【評価額】
評価額とは、現在の土地の評価額と建物の評価額の合計を表します。
土地の評価額=土地単価×面積
建物の評価額は、建物延床面積 × 1㎡当たりの建築費 ÷ 耐用年数 × (耐用年数 – 築年数)
【査定額】
抵当権の場合は60~80% 根抵当権の場合では50~70%程度になります。
評価額、査定額ともに担保設定額の範囲内なら融資は受けられるでしょう。評価額は担保設定額の範囲内だが査定額が担保設定額に足りない場合は条件付きで融資が可能。評価額・査定額いずれも担保設定額に及ばない場合は融資不可になる場合が多いです。
銀行とのコミュニケーション
継続的なコミュニケーション
金融機関の担当者も返済が滞らない経営状況かどうかは気になるものです。
そのため、年に2〜3回ほど経営の状況を報告すると良いでしょう。また、銀行主催のセミナー集客においても銀行員個人がノルマを課されている場合が多く、参加すると喜ばれます。
金利交渉
借り入れ後も、金利を下げてもらえるように交渉可能です。
「Aさんの金利は自分より低いと聞いた。この人と同じ金利までは下げられるはずだ」と交渉する家主がますが、これは間違いです。リスクと条件に応じて金利を定めているので、金利をほかの人と比べることはできません。
手元の現金に余裕があって、手残りを増やしたい場合に使えるのが、預金をすることで実効金利を上げる方法です。
同じ金額を借りている場合でも、金融機関にとっては融資先からの預金が多いほうがいいため、金融機関が1億円を融資する場合、その金融機関に融資先が3,000万円預金してくれれば、金融機関が調達してくるお金は7,000万円で済みます。
こういった場合は、実効金利が高いので、もう少し金利を下げてほしいという交渉が可能となるのです。
短期間で売却はよくない
銀行は最終返済日まで継続して融資する前提で審査するので、不動産売却による完済は基本的に想定していません。
銀行員にも融資のノルマがあ り、想定外に多額の返済があるとその期の目標が達成できないからです。
まとめ
不動産経営にあたり銀行から融資を受ける場合の以下について解説しました。
- 融資の返済方法
- 金利の選択
- キャッシュフローの計算
- 空き室率の計算
- 借り入れ期間
- 担保計算と必要書類
- 銀行とのコミュニケーションの方法
賃貸経営をするには、地主であってもサラリーマン大家であっても物件購入の際、多くは銀行からの融資を受けることになるでしょう。銀行から融資を受ける際の基本的な事前準備や知識についてまとめました。
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