孤独死を予防する賃貸事業目指す
三⽅よしでエリアの魅⼒も増す
静岡⼤家の会 ⼤⽯⿓之介オーナー
2021年の立ち上げからわずか3年で会員数を110人余にまで増やしている「静岡大家の会」。対面セミナーや「LINE」の活用など同会の活動を聞いた。
大石龍之介オーナー(静岡市)(33)
セミナーや見学会開催のほかLINEで弁護士に相談可能
新型コロナウイルス下の21年、静岡大家の会は大石龍之介オーナー(静岡市)によって立ち上げられた。現在の会員数は112人。所有物件数が多い地主や築古戸建てをDIYして貸し出す若手家主など、会員の顔触れはさまざまだ。
発足当初は、オンラインでのやりとりがメインだったが、22年以降は3〜4カ月に1回の頻度で、対面セミナーや物件見学会を行っている。「会員から好評だったのは、元国税局員による税務調査についてのセミナーです」と話す大石オーナー。国税局で16年のキャリアを持つ友⼈に登壇してもらうなど、自身の幅広い人脈を使ってセミナーを企画しているという。
同会会員はLINEに登録すると、大石オーナーの顧問弁護士に無料で賃貸経営に関する相談ができるのも特徴だ。グループでそのやりとりを共有することで、トラブルの実例を学ぶことができる仕組みにした。
▲セミナーには毎回30〜40人ほどが参加
自立した老後を送れる場所作り在宅診療と賃貸経営をつなげる
本業は医師である大石オーナー。19年より賃貸経営を開始し、静岡県内に4棟22戸の賃貸物件を所有している。
介護施設に入所していた高齢女性の話を聞いたことがきっかけで賃貸経営に興味を持った。その女性には子どもが2人いたが、2人とも静岡県外に住んでいた。⼦どもが住む東京都内に引っ越そうと思っても単身高齢者を受け入れてくれるアパートがなく、やむを得ず介護施設に入居となった。「高齢者が自立した生活を送ることができる賃貸物件を増やす必要があると思いました」(大石オーナー)
一方で、単身高齢者の孤独死を避けたい家主の気持ちは理解できる。リスクを減らし、単身高齢者を受け入れる物件を増やすために、「在宅医療サービスとの連携による孤独死を予防できるビジネスモデル」の確立を目指している。
現在は法人を立ち上げ、賃貸経営を行いながら医療系人材紹介事業も開始。不動産事業で物件数を増やしつつ、人材紹介事業で静岡県内の医療従事者とのつながりをつくっている。
「静岡大家の会の入会理由を聞くと、私のビジョンに賛同したからという人も少なくありません」と大石オーナーは話す。自分一人ではなく、同じビジョンを持った家主が静岡県内に増えることで、ビジネスモデルの展開に弾みがつくと考える。「今後の日本において、高齢者の1人暮らしが増えるのは明白です。賃貸物件に住みながら在宅医療を受けたいと考えるニーズは今後も増えていくでしょう」(大石オーナー)
静岡大家の会の活動を通して、高齢入居者、家主、在宅医療サービス提供者の三方よしのビジネスモデルを広げていきたいと考えている。
(2024年7月号掲載)
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