空室対策で成功するには?家主さん必見ポイントを解説

賃貸経営空室対策

家主にとって一番の悩みは空室が出ること。いかに空室が出ないように空室対策をするのが家主の腕の見せ所です。

空室が出ると、その分家賃収入が減ってしまいます。1日でも早く入居者が見つかるように家賃や初期費用を下げるというのがよく使われる手段。

しかしちょっとした工夫をすることで競合と差をつけて空室対策をすることができるんです。

家主と地主編集部が家主さんに実際の空室対策を取材しました。ぜひ皆さんの空室対策にお役立てください。

空室対策とは

家主にとって満室経営は最大の目標。いつになっても空室が埋まらないと悩む家主も多いでしょう。原因は、もしかしたら自分にあるのかもしれません。

そこで、空室に悩む家主の六つの習慣をピックアップ。満室経営が遠のく要因を探りつつ、満室を維持する家主の習慣を併せて紹介していきます。

空室対策のアイデアやすごい技 

空室対策としてよく行われるのは家賃や初期費用を下げることです。これ以外にも、募集条件の緩和、募集方法の見直し、設備の見直し、リノベーション、業者とのコミュニケーションなどで付加価値を付けることができます。

家賃、敷金、礼金、仲介手数料、更新手数料、の値下げをする

空室対策の定番は、毎月の家賃や以下の初期費用を下げることです。

  • 敷金:退去時の原状回復費用。使わなければ返還する
  • 礼金:家主さんへの謝礼
  • 仲介手数料:賃貸契約を仲介した不動産事業者に支払う手数料(家賃の1か月分+消費税が上限)
  • 更新手数料:契約更新時に支払う手数料

家賃だけでなく、敷金、礼金、仲介手数料、更新手数料を減額し、入居者にアピールして入居者を増やすことができます。初期費用を抑えたい入居者の心をつかむにはぴったりの手法です。

募集条件の緩和をする

三重県のNオーナーは、所有する物件で半年間埋まらない4戸の空室を抱えていました。そんな時、管理会社の担当者から生活家電付きの物件にしてはどうかという提案を受けました。外国人の派遣社員を抱える企業から、家電付き物件に関する問い合わせがあったためです。

まず1戸を電子レンジ・洗濯機・冷蔵庫付きワンルームとして募集を始めたところ、その企業から法人契約として複数戸を借りたいという連絡がありました。そこで空室になっていた4戸すべてに同様の家電を付けて貸し出しました。

「最終的に売却を見据えていると家賃は下げられません。また100万円かけてリフォームを行っても、物件の場所によっては家賃アップも3,000円程度しか見込めない場合があります。それならば、家電購入費用を家主が負担して、空室対策できれば安いものと考えました」

家電付き物件に変える場合のポイントとしては、入居者にそれらの家具をプレゼントすることだといいます。万が一故障した場合、修理費あるいは買い替えの負担は入居者本人が負担するので家主に手間が発生しません。

募集方法を見直しする 

ターゲットにあうSNSの活用

Twitter、ユーチューブ、インスタグラムなどのSNSを活用して物件の紹介を行っているGオーナー。「三大ポータルサイトだけに頼ることはしない」と話すのには理由があります。

川崎市に所有する物件は築年数も古く3点ユニットのワンルーム。そのためポータルサイト内の検索では条件ではじかれてしまう可能性が高いのです。

「都会でのおしゃれな生活を求めている20代女性というターゲットに絞ってのリノベを訴求するには、ターゲットが日常的に触れているSNSに情報を載せるのが効果的な空室対策だと考えています」と話します。

直近では、TikTokを使って秒で物件紹介を行うヴィダックス(東京都渋谷区)が提供する「30秒内見」も活用しました。

インスタグラムで物件の情報発信を行うのは元入居者が代表を務めるブランディング会社に依頼しています。ツイッターで地域の情報発信を担当するのは現入居者の女性ライターです。

「実際に物件や地域を知っている入居者の意見を反映できるのが強み。また家主1人ではなくチームとして相談相手を持てることは賃貸経営にいい影響を与えていると感じています」

情報発信を手がける担当者が入居者ターゲットと重なっている相乗効果もあり、ターゲットどおりの入居者の獲得につながっています。

内見の部屋に魅力をアピールするポップ作成 

部屋の特徴を書いたポップを室内に張って、仲介会社の担当者の案内に役立ててもらっているのはIオーナー(大阪市)です。「室内物干しがあります」など、追加した設備のポップを作成してアピールしています。

仲介会社の担当者は、一人で多くの物件の内見案内を行うため、一つ一つの物件の細かいアピールポイントをすべてを記憶することは不可能です。そこで、家主が特に内見者に見てもらいたい部分をポップに書いて掲示します。 

 築40年ながら高い入居率を誇るIオーナーの所有物件。商品としての物件に競争力を付けていく重要性を考え、追加で設備を導入し続けています。付加価値となる設備や仕様など、をしっかり内見者にアピールすることにが空室対策になります。

お部屋のパンフ作成 

差別化を図るための充実した設備や特徴的な仕様がある物件を持つオーナーは、物件のパンフレットを作成して空室対策を行う場合もあります。

「分譲マンションはパンフレットがあるのが普通だけれど、賃貸マンションにはありません。でも賃料5万円の物件でも2年間住めば120万円払うことになります。これだけのお金をかけて住む場所なのに、その良さを紹介してじっくり検討してもらうパンフレットがないのはおかしいのではないか」

こう考え、21年にパンフレットを制作したというGオーナー。それぞれ違うテーマでリノベされた部屋の写真とともに入居者がテレワークなどに自由に使える共用スペースやスマートキーなど、物件の設備を紹介する4ページのパンフレットをエントランスに配置し、内見者が手に取ることができるようにしています。

Hオーナーも 19年に物件を新築した際に、パンフレットを制作しました。楽器演奏・ペット飼育が可能であるうえに、共用部の設備を充実させている同物件。

そこで共用部の設備や遮音性など、内見者が気になる仕様の詳細をパンフレットに掲載しました。「内見する時点で、物件に興味を持つ人は『家賃の金額』を頭に入れてきています。

内見者に家賃以上の価値を持った物件だと知ってもらうことが大事だと考えます」と話すHオーナー渾身のパンフレットは40ページにも及びます。

設備の見直しをする 

追加設備導入 

「空室期間が延びていくのをやきもきしながらみているくらいなら、追加設備を導入していく」と話すのはMオーナー。北海道に所有していた物件では過去に28部屋中5部屋が空室になったとことがありました。そこで導入したのがシャンプードレッサーです。

シャンプードレッサーであれば、家賃1カ月程度の投資で導入ができる。2カ月空室になることを考えたら導入を躊躇することはないという考えで入居に繋げました。

共有部の宅配ボックスの位置を工夫

Hオーナーは築 33年、56戸の3階建てマンションの、特に3階の共用部の活用に近年力を入れているといいます。

宅配ボックス自体は物件1階に年に導入しましたが、エレベーター のない物件では3階の住人にとって1階にある宅配ボックスは使い勝手が悪いと考えました。

そこで、内廊下の階段を上り切ったところにあるデッドスペースに8個の宅配ボックスを導入し3階の住人が重い荷物を受け取る際に便利に使ってもらえるようにしたのです。

一回の宅配ボックスの横に「3階の住人向けの荷物は3回のボックスへ」と張り紙をしました。また、3階の宅配ボックスの向かいには、図書コーナーも作り、人気の小説や漫画を置いています。

向かいの壁には造花のグリーンを配して第一印象をアップさせる工夫も行っています。専有部に限らず共用部にもコンスタントに付加価値をつけているHオーナーは

家主が物件に手を入れ続けることで、入居者からも『家主さんがいろいろ色々やってくれている』という印象を持たれます。その印象が結果として長期入居につながり空室対策になると思います」

共有部清掃 

今回、満室経営を実現している家主に「満室時に何をしているか」と取材をすると、多くの家主が「満室時こそ、いつもよりしっかり清掃を行う」と答えました。

「事業者に依頼して、手すりのさびや廊下のカビ・汚れの清掃を念入りに行う」と話すのはNオーナー。「空室があるとそれを埋めることが最優先になってしまいますが、満室時こそ普段は先送りにしている問題点をチェックして改善していく好機と考えます」

特に、エントランス部分に気を配って清掃やメンテナンスをするというのはIオーナー。タイルを新しくして印象を変えたり、照明を追加・変更することで、夜でも明るく安全な物件に仕上げていったりと物件の顔の印象を良くしていきます。

もちろんメンテナンスを行うことで物件の価値を上げ、入居者の契約更新を促すというメリットがあるが、実はそれだけではないといいます。

リフォーム事業者や職人にコンスタントに仕事を出すことが、彼らとの強固な関係性の構築につながります。「定期的に仕事を発注し、さらに無理な値下げ交渉をすることなく適正価格を滞りなく支払うことで、職人から信頼される家主になります」と話すIオーナー。

一度信頼関係が構築されると、いざ繁忙期で空室が出た、あるいは急な故障が起きてしまった。といった場合に優先的あるいは迅速な対応をしてもらえるため、次の空室対策あるいは入居者満足につなげることができます。

ネット配線の速さ

従来は「無料」であることで十分人気の設備となりえたネット。だが、在宅時間が増えている中で、「無料」だけでなく「速さ」を重視する傾向があります。

そこで、「内見者にネットの速度を試してもらう」と話すのはTオーナー。内見者を迎える部屋に、WiFiに接続するためのパスワードを書いた紙を「ネットの速度を実感してください」といった文言を添えて貼っておきます。

内見時に内見者がスマホで接続し、どれくらいのネット環境なのかを確認することで、入居してから「ネットが遅い」といった不満が出ないようにしています。

「契約しているWiFi設備は超高速というわけではないが、それでも動画視聴やオンライン会議利用には問題ない速度」とのこと。

もはやなくてはならないインフラとなったネット。目には見えない居住環境を内見時に実感してもらうことも、空室対策のアイデアの一つです。

DIYを認める 

Tオーナーは、入居希望者の改修受け入れることで1年間空室だった戸建てを埋めることができました。

東京都23区内に所有する戸建て物件は築90年、再建築不可の33㎡の平屋。2Kの間取りでしたが購入時にワンルームにリフォームし、建具の補修やクロスの貼替えを行い空室対策をしていました。

もともと外国人実習生向けの需要を見込んで、2段ベッドを3台つけて借り上げをしてもらっていました。当初13万円の家賃設定でしたが、新型コロナウイルス感染症の流行により需要がなくなってしまったのです。

家賃を半額の6万5,000円に下げても決まりませんでしたが、「改装させてもらえるのであれば入居したい」という問い合わせが入りました。

入居希望者は個人事業主で、地域に「子ども食堂」を開きたいという要望でした。「本来は入居者の改修要望には応じていませんが、地域に根差した事業を始めるということであれば、将来的に購入希望も出るのではないかと考え、改修可能という条件で入居してもらうことにしました」

家具プレゼント

Tオーナーが静岡県に物件を購入した際、16戸中入居は5戸のみでした。対策としてまず講じたのは、1部屋をモデルルームとしたことです。ベッドやテレビといった大きな家具から電気ケトルといった小物家電までひととおりそろえて設置しました。

次に、その家具を希望する入居者にプレゼントすることにしました。ただし、いくつでも好きなだけプレゼントというわけではなく、家具・家電にそれぞれ「ポイント」をつけ、電気ケトルなら1ポイント、ベッドなら5ポイントとという形で値段に応じてポイントを設定しリスト化。

「入居者には5ポイント分まで好きなものを選んでもらえる。ただし、5ポイント分を超えて追加で欲しい家具・家電がある場合、毎月の家賃にプラス 3,000円で5ポイント追加できる」というシステムにしました。

「ただ単に空室を埋めるのではなく、できる限り家賃アップにつなげていきたい」という考えあっての空室対策のアイデアが実を結び、現在・16全戸が満室経営中です。

リノベーションをする

空室が出た物件の築年数がたっている場合、原状回復を行うだけでは、入居者が決まらず、家賃を下げざる得ない可能性もあります。そういった状況下での空室対策は、リノベを検討するでしょう。

だが、漠然とリノベをしても入居者獲得にはつながりません。所有物件のエリアや周辺環境を研究したうえで入居者ターゲットを決め、空室が出た際にはそのターゲットに合ったリノベを施して入居に繋げたのはOオーナー。

2017年に行ったリノベのテーマは「在宅で仕事がしやすい部屋」。最寄りの駅からはJR線ターミナル駅である品川駅まで乗り換えなしで行ける点に注目しました。

ウェブデザイナーやプログラマー、クリエイターといった品川駅付近に所在する企業につとめるIT従事者をターゲットにしてはどうかと考えました。

そこで当時としてはいち早くワークスペース用にカウンターデスクを作りつけにし、住むだけでなく在宅で仕事をするのに快適なリノベを行い入居につなげました。

また19年にリノベを行った部屋は「ペット飼育可賃貸」。このテーマは、物件の周辺地図を見ている際、付近に大きな病院があったことから思いついたといいます。

ターゲットは病院勤務の医療従事者。看護婦などが激務であることを見越し、癒しを求めてペットを飼う可能性を考えました。忙しい医療従事者であれば、癒しを求めてペットを飼うとしても散歩の必要がある犬ではなく猫ではないだろうか。

そこで2DKの間取りを35㎡のワンルームに変え、キャットウォークを備え付けました。結果として、リノベ後に決まった入居者は猫を飼っていませんでした。

しかし「猫がOKという前提があれば今後猫を飼う可能性もある。ペット共生物件がまだ少ない中で、猫を飼えば長期入居者になる見込みもある」と考えています。

コミュニケーションをする

大家の会で情報収集 

家主業は個人事業です。賃貸経営をしていると、孤独を感じることがあるでしょう。そんな時、全国各地の大家の会に参加すれば、目的を同じくする仲間に出会い情報交換することができます。

「大家仲間の物件の内覧会に参加することで最新設備などの情報をアップデートする」と話すのはWオーナーです。自主管理大家のため、満室時には特に積極的に遠方の大家仲間の物件の内覧会にも参加するといいます。

「新築の最新設備の研究やリフォームのアイデアを仲間の実施例から学べるいい機会」だと話します。大家の会で情報収集することで知識を増やすことが空室対策につながります。

管理会社に情報を共有 

Yオーナーは、自分が興味を引かれた新サービスや商品について管理会社の担当者に共有しています。担当者からの提案を引き出すことに有効と考えるからです。

「以前より興味のあったオートロック物件向け『置き配』が、物件のある札幌市でもサービスを開始したと聞き、管理会社の担当者に共有しました」

家主自身が得た情報を共有することで「情報収集をするためにアンテナをしっかり張っている家主」という印象付けにも役立つといいます。

「新しいことに興味があり、受け入れてもらえる家主」と担当者が考えることで、担当者からの積極的な提案やアイデアだしにつながり空室対策につながります。

仲介会社に値下げ権限を与える 

仲介会社の担当者が内見者を案内した際、家賃の減額交渉を求められることもあるでしょう。

そこでWオーナーは1,000から3,000円の値引き交渉には応じられる旨を仲介会社に先に伝えておきます。

「設備の充実はもちろん大切ですが、入居者にとってウエートが大きいのはやはり賃料の上限。そこで、ほかの物件と比較してうちの物件を気に入ってはいるものの、賃料で悩んでいる内見者への最後のひと押しとして担当者に値下げ可能額を伝えておきます」

家賃の値下げは仲介担当者の「最後の武器」のようなものです。値下げ希望があった際に、その都度家主に確認を取っていては、その間に別の物件に決めてしまう可能性もあります。迅速な値下げ対応ができることが、入居者獲得につながり空室対策になるという考えです。

管理会社に競合の設備導入をヒアリング 

リフォームを行う際に、管理会社に周辺物件の設備の導入傾向を聞くというのはNオーナーです。賃貸仲介をしている会社であれば周辺の物件の状況や部屋探しユーザーの要望も知っています。

競合物件にあって自分の物件に足りない設備を効率よく追加し、競争力をつけることは空室対策に有効です。

さらに管理会社担当者がアドバイスしたことを実行するのは彼らの落ちベーションアップにつながると話します。

「担当者の意見を取り入れることで自分の意見に耳を傾けてくれる家主だとやる気を引き出す効果があります。そうなれば、次に空室が出た際も積極的に提案や案内を行ってくれる関係性を築くことができます」

まとめ

空室対策のアイデアやコツとして、

  • 家賃や初期費用の減額をする
  • 募集条件の緩和をする
  • 募集方法を見直しする
  • 設備の見直しをする
  • リノベーションをする
  • コミュニケーションをする

をご紹介しました。家主さんそれぞれの状況でできることは違うと思いますが、出来そうなことを一つ取り入れて見ると、単に家賃を下げるだけでなく空室対策ができるかもしれません。

空室対策は、賃貸経営で最も重要なポイントです。先輩家主さんの情報を取材し、ノウハウが詰まった家主と地主が賃貸経営の大きなヒントになるでしょう。

この記事の続きを閲覧するには
会員登録が必要です

無料会員登録をする

ログインはこちらから

一覧に戻る