【連載】眠っているお宝 目の付けどころ:vol.4

相続コラム眠っているお宝相続財産の評価額

焼き物

 焼き物の産地や種類は多岐にわたり、また同じ産地でも複数の窯元がある。歴史も長く、中国や朝鮮の陶磁器も含めれば1万年にも及ぶ。偽物も多く出回っており、素人にとって価値がわかりにくい「お宝」の一つだといえる。

 「京都は旧家が多く、茶道が盛んな土地柄です。昔は隠し財産として骨董こっとうや美術品を収集する家も多かったので、お宝が多く眠っています。ところが、それを受け継いだ今の世代は骨董に興味がない人が多い。価値のあるものと、それを必要とする人を橋渡ししたいとの思いから、鑑定に取り組んでいます」と語るのは、骨董・古美術店の安尾京栄堂(京都市)の安尾栄介店主だ。20代から茶道をたしなみ、茶道具と明治時代の焼き物に造詣が深い。

 

 最近、安尾店主が出張鑑定に行った資産家の家で出合ったのは、京都生まれの陶芸家として名高い北大路魯山人の焼き物だ。贈答品とのことで桐箱に入っていた。かつて京都の富裕層の間では、魯山人のような巨匠の作品が贈答品として選ばれることがあったという。安尾店主は約20万円で買い取った。

 また別の旧家では、桃山時代の斑唐津のぐい飲みの逸品が出てきて驚いたこともあった。「それは一つ280万円で買い取りました。コレクターが最も欲しがる焼き物の一つです。古美術商が血眼になって探しているのですが、めったにお目にかかれません。末端価格なら600万円はする逸品でした」(安尾店主)

付属する箱も大切に保管を

 焼き物の価値は、作者や所有者の銘、署名などが書かれた「箱書き」が指標の一つになる。茶道具の場合は、流派ごとに宗匠の箱書きがある。箱書きがあるだけで、10万円単位で値段が上がるのだという。

 「骨董に付属する箱というのは、日本独特の文化なのです。箱には『共箱』『書き付け箱』『極め箱』の3種類があります。共箱は作家が作品の内容を書いた箱、書き付け箱は茶道の家元や高僧・大名などが作品の品名を書いた箱、極め箱は作家の親族や後継者、鑑定者が本人の作品であると認定した箱のことです。同じ作品でも箱の有無で査定額が変わる場合があるので、箱も大切に保管してください」(安尾店主)

 次に見るのが裏印だ。裏印とは器の底や胴部、高台内などに刻印された文字や印のことで、「窯印」とも呼ばれる。基本的にすべての陶器には裏印が刻印されており、そこから焼き物の種類や窯元、作者などがわかる。

 同じ窯であっても時代区分や作家、希少性などによって価値が異なる。詳しい専門家に査定を依頼したほうが安心だろう。

 

お話を聞いた鑑定のプロ

安尾京栄堂(京都市)
安尾栄介店主

安尾京栄堂の3代目。約30年の鑑定歴を持ち、明治時代の焼き物を得意とする。毎年秋に京都で開催される「寺町美術まつり」実行委員会の会長も務める。

■店舗情報
古美術品などの展示・販売のほか、店での鑑定や出張査定も行う。京都府で2店舗、埼玉県で1店舗を展開。

(2025年 6月号掲載)

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