子どもへの支援は平等に行う
援助には限りがあることを示す
援助に差がつくと不満が出る
今回は「相続について話す」テーマの3回目、「自宅に住む子どもとのコミュニケーション」をお届けします。
子どもが自宅で同居していても、親とは生計が別で、子ども自身が自分の生活を確立している場合は特に問題はありません。私がよく相談を受けるのは、子どもが親に生計を頼っているケースです。
離婚やリストラ、疾病など人生の思わぬアクシデントに遭い、自力で生活ができなくなった子どもが自宅に戻ってくることがあります。親としては力になりたいと思い、金銭的なサポートを含めその子どもの生活を支援するでしょう。
しかし、すでに実家から独立しているきょうだいは、時としてその状況に複雑な感情を持つことがあります。親のサポート期間が長くなればなるほど「自分は親の期待に応えて社会で頑張り自立しているのに、なぜきょうだいはいつまでも親のスネをかじる生活をして実家の資産を減らすのか」という不満を募らせるのです。
さらに問題が深くなるのは、自宅に戻った子どもが「人生がうまくいかないのは親の教育のせい」などと周囲に責任転嫁し、社会復帰に意欲を示さない場合です。こういったケースでは、親にも何らかの心当たりがあり、その罪悪感から生活支援をいつまでも続けてしまうことが少なくありません。
そうすると独立しているきょうだいが「自分は頑張っているがために親からの援助が得られずに損をした気分」という不公平感をさらに高め、ひいてはきょうだい仲も悪くなってしまうことが多く見受けられます。
資産を明示することが大切
親としては悩ましいところですが、相続のことを考慮すると、理由がどうであれ1人の子どもに突出して金銭的な援助をするのは、後にきょうだい間でトラブルに発展する可能性が高くなります。
それを防ぐために、子どもそれぞれに残せる資産を明示したうえで、支援が必要な子どもには早期の社会復帰、経済的自立を促すことをおすすめします。
親はいつまでも子どもの面倒を見られません。社会復帰ができない理由を親のせいにされてもめげずに、できる援助には限りがあること、ほかのきょうだいと差をつけることはしないことを早めに伝えましょう。そして、子どもの人生に対して、子ども自身は今何ができるかを一緒に考え、応援してください。
佐藤 栄子
【プロフィール】
不動産会社で約20年、主に秘書業務を担当。退職後、心理学を学ぶ。現在はインターネット総合サイト「exicite(エキサイト)」を含む3社で電話とメールによる心理カウンセリングや、離れて暮らす親子がつながるための情報サイト「親子ネクト」でコラムの執筆を行う。
(2024年10月号掲載)
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【連載】人生100年時代 中高年のコミュニケーション:9月号掲載
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