【連載】円滑に承継を進めるための相続対策 5月号掲載

相続相続手続き

サブリース大家さんの認知症対策 永続経営のための必須知識を解説

先祖から受け継いだ不動産と家業を次世代に承継させていきたいという地主・家主にとって、親や自身の認知症発症は大きなリスクだ。本連載では認知症などによる承継リスクに備えた対策について解説。不動産オーナーの「円満家族」 と「永続経営」の実現へ向け、家族信託をはじめとした事前にできる対策を紹介する。

●サブリース契約の仕組み

 「サブリース契約をしているから認知症対策はしなくていい」そう思っていませんか? しかし、高齢の不動産賃貸オーナーが認知症になると、問題が生じます。オーナーとサブリース事業者との力関係が崩れ、オーナーの主導権が奪われる危険性があります。

今回は、サブリース契約をしている不動産賃貸オーナーが見逃せない、サブリースと認知症の問題、その対策について解説します。

サブリース経営での注意 メリットとデメリット

 サブリース契約は、不動産の賃貸経営を一括してサブリース事業者に任せることができるため、オーナーの業務負担が軽減され、なおかつ毎月安定的な家賃が入ってくるという、とても魅力的な方法です。

 しかし、注意点も多く存在します。サブリース事業者から家賃減額交渉をされる危険、同事業者が相場より低い家賃を設定してオーナーの収入が減少する危険、また借地借家法が同事業者に有利に働く危険など、主導権を取られ振り回されることが問題になっています。

 後継者に価値ある状態で不動産を承継するためには、オーナーが主導権を握りサブリース事業者へ対抗できることが重要です。

オーナーの主導権 認知症により奪われる

 賃貸不動産オーナーが認知症になり契約能力が失われると、サブリース事業者との契約更新や家賃の交渉など、賃貸経営に必要な意思決定が困難になります。

 特に注意すべきは借地借家法に定められた家賃減額請求です。これは、借主であるサブリース事業者が、裁判所を通して、家賃減額を請求できる制度です。

 家賃減額請求がされると、まずは調停を行います。調停が整わないと判断されると、訴訟に移行します。このとき、オーナーの判断能力に問題がなければ、サブリース事業者の請求に適切に対処することができます。

 しかし、判断能力がなくなっていると、 欠席裁判となり、サブリース事業者の主張を一方的に受け入れざるを得ない不利な状況になります。残念ながら、後継者に所有権がなければ、後継者には裁判の権限はなく、何もできないのです。

 欠席裁判を防ぐためには成年後見制度の利用が必要になりますが、家族が後見人に選ばれるかはわかりません。家族ではなく専門家が選ばれた場合は、その後の不動産管理も専門家の後見人が行います。そのとき、専門家の後見人が必ずしも家族の希望に沿ってくれるとは限らないのです。

後継者との家族信託契約で主導権を維持する

 サブリース事業者に対してオーナーおよび後継者が権限を保つために有効な手段が、家族信託です。家族信託により、不動産の管理権限が委託者である親から受託者である子に移行し、子が法的権限を持ってサブリース事業者と交渉できます。

 これにより、家賃減額の交渉や更新契約、建物の修繕など、賃貸経営に関わる意思決定を後継者である子が行うことができるのです。

建物だけを家族信託サブリースオーナーの事例

 目的がサブリース事業者に対抗できる権限を持つことで、 今後融資を受ける予定がない場合には、建物だけ家族信託契約を結ぶことも有効です。 土地を含めない分、導入コストを抑えられる可能性があります。

 実際に、建物のみの家族信託をサポートしたオーナーがいます。所有者である高齢の父親が脳梗塞で倒れたのですが、運良く回復したタイミングで、後継者と家族信託契約を結びました。

 融資銀行やサブリース事業者が家族信託に不慣れだったため、事前の説明や社内稟議も必要でしたが、無事に稟議も通り、進めることができました。父親はその後もずっと施設で暮らし、判断能力も低下していったので、家族信託契約を結べて助かった事例でした。

まとめ

サブリースの場合には、経営や入居者との契約に直接関わらないため、認知症対策の重要性を見落としがちです。しかし、重い認知症になると主導権を失い、サブリース事業者との力関係が崩れます。残念ながら後継者に所有権がない場合には、法的な権限を持つことができません。
後継者にスムーズに不動産を引き継ぐためには、事前の対策が必要なのはサブリースも変わらないのです。

●サブリース契約でもオーナーの対応は必要


Profile

司法書士法人ソレイユ
(東京都中央区)司法書士 友田純平 氏

 不動産オーナー、会社経営者の認知症・相続対策に向き合い、法人での累計資産額は100億円以上。依頼主は50筆超の土地を所有する地主をはじめ多岐にわたる。「経営をストップさせない」視点からの家族信託提案を行う。

▲司法書士法人ソレイユホームページ内動画
友田先生が本記事の内容をわかりやすく解説しています
https://votre-soleil.com/blog/jinushi/6503/

(2024年5月号掲載)

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