【特集】基本を知れば怖くない 税務調査への 対応策:②実地調査決定から当日まで

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実地調査決定から当日まで

Q4:調査対象の選定から調査までの流れはどのようなものか
A:電話や書面で来訪連絡が来るのが通常

【所得税・法人税・相続税】
 全国の国税局と税務署(以下、税務署など)は国税総合管理(KSK)システムで結ばれており、所得税申告などの納税者情報を共有している。つまり、過去からの情報を一元管理しているのだ。税務署などはこのシステムを税務調査の対象とふるい分けるために活用している。申請内容と、これまでの経緯や周辺の納税情報を比べて「異常値」が出た場合、調査が入る確率がぐっと上がる仕組みだ。

 税務署などは、所得税・法人税と相続税は連続したものとして見ている。「一つの申告だけを取り繕っても、全体のつじつまが合っていないと異常値が出るということです。最近はKSKシステムにAI(人工知能)が導入されて効率が良くなっており、ますますスクリーニングの精度が上がってくるでしょう」(花光税理士)

 実際の税務調査は8~12月に行われることが多いという。調査官にとっては7月からが新事務年度。「年度内に追徴課税などの実績を上げられればその評価が翌年の人事に直結するため、新事務年度が始まった秋が最も調査が入りやすい時期と言えるでしょう」(飯塚税理士)

 年度内に調査を終わらせる意味で4月ごろまでは調査が続くが、3月前後の確定申告時期は調査官も多忙なため、税務調査の件数自体は少なくなる。「4月以降の調査は、いわば調査官の件数稼ぎの側面があります。大きな事案になることは多くはないでしょう」(松木税理士)

 実地調査で来訪するのは所轄税務署の調査官で通常は2人。ただし、重要・重大な事案だと国税局が担当することもあるのだという。国税局調査官や「トッカン」(特別国税調査官)、統括官が担当なら、力の入った調査といえる。「税務調査の連絡が入ると、担当する調査官の人事履歴を調べます。その調査官の過去の昇進状況からは、調査官の力量や税務署の本気度を事前に測ることができるからです」(飯塚氏)。花光税理士も、「税理士が持つ税務職員の名簿や税理士向けの専門サイトでの検索で調査官の経歴を知り、イメージをつかんでいます」と話す。

 調査が1日の場合、当日の流れは以下のとおり。所得税、法人税、相続税とも午前中は概況調査となり、世間話のような和やかな雰囲気で調査が進むという。午後からは資料や現場を確認し、調査官が非違だとにらんだ点の確認をする。

 「昔は机にペンをたたきつけて相手の恐怖をあおって口を割らせるという調査官もいましたが、最近は違います。まずは親身に話を聞いて心を開かせ、それとなく重要なことを聞き出します。外堀を埋めながら徐々に論点を絞っていくのです」(松木税理士)

【実地調査の選定から実際の訪問までのイメージ】

所得税・法人税
❶ 税務申告
❷ 税務署などから税務調査をしたい旨の
電話がかかってくる
税務代理権限証書にて、調査に関する通知を代理人(税理士)に通知することに同意する旨のチェックをした場合は納税者本人ではなく税理士に連絡が入る。
❸ スケジュール調整
来訪の場合は、納税者や顧問税理士の都合が合う日を調整する。花光税理士の経験では、電話から2~3週間後となることが多い。
❹ 来訪内容の確認
何の税に対する調査か、来訪する調査官の名前、調査の目的を税務署などに確認しておく。通常は直近の3年分を調査される(ただし悪質な場合にはさらに2年分追加される場合もある)。用意する資料は帳簿、領収書などとなる。
❺ 来訪当日
2日間、午前10時~午後4時くらい(昼休憩あり)の日程で来訪するケースが多い。2人1組のことが多いが、1~5人のことも。税務署の本気度を人数から察することが可能だ。

【相続発生から実際の訪問までのイメージ】

相続税
❶ 相続発生
税務署などは被相続人が亡くなったことを市村町との連携で自動的に把握。
❷ 準確定申告
相続人全員連名で、亡くなった人の死亡日までの所得税の確定申告をすること。亡くなってから4カ月以内に行う。
❸ 相続税申告・納税
相続発生を知った翌日から10カ月後までが相続税の申告と納税の期限。
❹ 税務署での調査対象の選定
エビデンスとの齟齬がないか、申告書の計算に誤りがないか、事前把握している情報と照らして財産内容は適切か、亡くなる10年以内に贈与や資産移動がなかったか、財産について被相続人・相続人の過去の不適切な行動はないかなどが基準。
❺ 税務署などから税務調査をしたい旨の
電話がかかってくる
相続税の申告後、翌事務年度(7月から翌々年の6月ごろまで)のスタート時期から、納税者本人、税理士が税務代理・申告書を作成した場合は税理士に連絡が入る。
❻ 来訪目的の確認
税務調査の目的や来訪する調査官について確認。事前通知の段階で、税理士が問題点を聞き出し、対応することにより調査省略になる場合もある。相続税の調査の場合に用意するものは申告書の控えや資料原本、通帳など。相続人の中から立ち会い者を誰か1人決めておく。
❼ 来訪当日
来訪する場所は被相続人の自宅など。「まず故人に線香をあげる調査官はやり手です」と飯塚税理士は分析。
【ワンポイント】 
●相続税の納税が必要になりそう、あるいは確実に必要になる場合には封書が届く
 生前の財務状況や、準確定申告により相続税の申告が必要かもしれない場合は、申告ナンバーの付された封書が郵送される。相続税の納付があるかどうか判断分かれ目にいる人には、納税が必要かを確認するためのチェックリストが入った封書やはがきが届く。「マイナンバー制度が徹底して、預金のひも付けや不動産登記の名寄せが進めば、より選定は厳密になるでしょう」と飯塚税理士は指摘する。

Q5:税務調査員の質問にどう対応するか
A:税理士の回答を待って、税理士に聞かれた時だけ答える

【所得税・法人税】
 「当日は和やかに世間話をしてくることが多いです。それゆえ、世間話が盛り上がって余計な一言を発してしまう人は多いと思います」と話す花光税理士。
 飾ってあるカレンダーから未記載の取引先を、趣味の話から経費計上のあらをと、どこからほころびが出るか油断ならない。しらみつぶしに探せばどんな申告書類にも不備が見つかる可能性がある。余計な情報を調査官に与えて状況を悪くするのは避けたいものだ。
【相続税】
 飯塚税理士によると、相続税の税務調査における最大の悪手は「わかりません」と言えないことだという。「オーナーは相手の求めに何とか応じようとする優等生タイプが多い印象です。調査官に『これはどうですか』と聞かれた際に、何か答えなければならないような気持ちになるのか、聞かれていないことまで答えてしまう人は多いのです」と指摘する。まさに税務調査官の狙いはそこだ。

 調査官の質問にパニックになって暴走してしまう人も多い。かつて飯塚税理士が担当した事案で、調査官に「お父さんから贈与はありませんでしたか」と聞かれ、焦って即座に「ありません! このネックレスだけです」と叫んだ長女がいた。しかし、実際には以前から贈与分をきっちり申告していたのである。税理士がその場で過去の申告について説明したため、事なきを得たという。

 「調査官からの質問には、まず税理士が答えます。調査官が相続人に直接聞いてきても、税理士の回答を待って、税理士から聞かれたときに答えるようにしましょう」(松木税理士)

 飯塚税理士は「親の財産なんて知らなくて当たり前。『わからないことは答えない』が正しいのだと知ってほしいです」と話す。

Q6:税務調査の対象になりやすい条件はありますか
A:収入と支出が合わない、重加算税を課された過去などが要因

【所得税・法人税】
花光税理士によると、所属税・法人税の税務調査の対象になりやすいのは以下の三つのケースだ。
【1】税務署などが持っている情報と申告内容の差が大きい
 税務署などは、納税者の申告内容以外にもさまざまな情報を持っている。賃貸経営に関係するところだと、借主が家賃を経費にする場合は、借主側の支払調書に記載して提出している。また、家賃相場と所有物件の状況を見比べて矛盾を突くことも。家主の収入額と借主の支払った家賃が見合わないと、申告の誤りや脱税の疑いを持たれるのである。
【2】法人化して3~5年のタイミング
 花光税理士は、「一般的には、設立した後3~5年経過したあたりから調査の可能性は高まると考えられています。直近3年分を調査対象とすることが多いので、ある程度情報がたまってきたタイミングで対象になりやすくなるということでしょう」と話す。
税務署などは、税務調査として来訪した際に経営者の人柄や帳簿の整理の状況をチェックしている。その際にずさんな管理をしていることが露呈するとその後も調査対象になりやすくなるのはいうまでもない。
【3】黒字の法人である
法人全体で見ると、税務調査の対象になる確率は高くない。しかし、黒字の会社のほうが圧倒的に税務調査の対象になりやすいのだという。追徴課税を多く取ることができるからだ。国税庁が23年に公表した資料によると、21年度の赤字の法人の割合は65・3%。黒字の法人は全体の3分の1ほどであり、黒字の法人だけで見れば税務調査の対象となる確率は跳ね上がる。
「もちろん赤字の法人に税務調査が入ることはゼロではありません。しかし、黒字の法人のほうが対象になりやすい傾向があります。特に、黒字に転じるようなタイミングではより気を引き締めて帳簿類を作成しておくのがいいと思います」(花光税理士)
【相続税】
 資産の額が多いと対象になりやすいのは前述したとおり。このほか、被相続人の生前の申告状況が影響を与えることがある。「例えば、被相続人が生前、所得税や法人税申告で仮装・隠蔽行為をして重加算税を支払っていたことが挙げられるでしょう。ほかには、無記名債券を買っていた場合。これは現在では取り扱いがないのですが、脱税の手口として有名になってからは税務署では必ずチェックの対象になるようです」(松木税理士)

 それに加えて、財産債務調書を提出していて、その内容が相続税申告と齟齬がある人、国外財産を持つ人もチェックの対象だ。

【やっておくと役立つチェックリスト】

税務調査が決まったら
□担当調査官の名前や一緒に来る人の名前を聞く。役職が高いほど、また、出世が早い人ほど、手ごわい相手である傾向が強い
□税理士に依頼していない場合は依頼を検討
□必要書類の準備・精査
□税務調査のやりとりの練習をする

【SNSにご用心】
 社員研修の名目で家族旅行をして経費計上。そもそも言語道断な行いだが、SNSの投稿から足がついたという点は教訓になる。日頃から疑いを持たれるような投稿をしないよう心がけたい。税務署はこういったところまで細かく見ている。

Q7:税務調査の対象になる確率を下げる方法はあるか
A:申告内容へのお墨付き書面を税理士が付けることで確率を下げることができる

【所得税・法人税・相続税】
「そもそも疑われるような申告書を作成しないこと、エビデンスを明確にすることが大事です。エビデンスがない場合には税理士が説明書を作成して添付するのがいいでしょう」と松木税理士は話す。調査官がチェックしやすいような書面を作るよう心がけるのも肝要だ。疑問の余地がなければ税務調査の対象になることはないからだ。

 さらには、税の申告の際、申告書には税理士や税理士法人が「税理士法33条の2書面」という税理士の意見書を添付することができる。書面には、計算事項など、税理士法33条の2で定められた事項を記載する。22年度は相続税23・4%、法人税10・0%、所得税1・5%の添付率だった。あまり活用されていないのが現状ではあるが、そのメリットは大きい。

 税務調査の対象になったとき、同書面が添付されていれば、税務署などは調査日時を通知する前段階で、代理人である税理士に意見を述べる機会を与えなければならない。しかも、意見聴取で問題が解決すれば実地調査には移行しないのだ。適正申告とされた場合は、「特に問題とすべき事項は認められず、現在までのところ調査は行わないこととしましたので、お知らせします」という「意見聴取結果についてのお知らせ」が税理士あてに送付される。「意見聴取で問題点がクリアになれば、実際の税務調査に至ることはありません。当社では税理士法33条の2書面添付による意見聴取を受けて、実地調査が行われたケースはゼロです」(飯塚税理士)と非常に大きなメリットがある。

 花光税理士も、「税務署の立場で考えた場合、実地調査に移行するまでにハードルが一つ増えることも大きいのだと思います」と話した。
 実地調査にオーナーにとってストレスのあるものなので、担当税理士に同書面の作成を打診するのも一法だ。

【相続税の申告を依頼する際は税理士に家の実情を正直に伝える】


 松木税理士は、「税理士に依頼する場合は、家族間や財産についての問題点を、不都合なことも含め率直に伝えてほしいです」と話す。
税理士は、弁護士と違い相続人全員からの代理委任を受けるのが前提。法務・税務面で、相続人全員にとって最善の結果となるように、全力で解決するうえで、すべて知っていたほうがスムーズに事が運ぶ。

(2024年7月号掲載)

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