【連載】家主の賢いキャッシュフロー改善:4月号掲載

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税金を抑える~経費の勘違い! 経費にならないもの5選

 キャッシュフローを改善するためには、①収入を上げる②支出を下げる③税金を抑える、この三つしかありません。
 前回に続き、③の税金を抑える方法を解説していきます。

 何が経費になるのか、何が経費にならないのかの判定は難しいものです。実際に事業で必要な支出なのかは、検証(事実認定といいます)しないとわかりません。
 まずは、経費になるものよりも先に、経費にならないものを理解しておくといいでしょう。

①借入金の元本返済金額

「家賃収入が月30万円、借入金の返済が月30万円で、利益がゼロだから税金がかからない」などと言う人がいますが、これは間違いです。
 このような人は、なぜお金が出ていっているのに、それが経費にならないのかが、なかなか理解できないのでしょう。
 自己資金(現金)1億円で建物を建築した場合と、借入金1億円で建物を建築した場合を見てみましょう。
 自己資金の場合、返済がないので、経費としては建物の減価償却費が主なものになります。
借り入れをした場合も、建物の減価償却費は経費になります。それに加えて、返済額(元本部分+利息部分)をすべて経費にしようとすると、減価償却費と元本部分で、建物部分が二重計上されることになってしまいます。
 このことから、借り入れの元本部分まで経費にできるという考えは、おかしいことがわかります。借り入れのうち、経費になるのは利息部分のみです。

②所得税、住民税、社会保険料

 固定資産税や消費税などの税金は経費になりますが、所得税と住民税は経費になりません。所得税や住民税は、収入から経費を差し引いた所得に対して課税される税金です。経費を引いて算出した所得にかかる税金が、さらに経費になるというのはおかしいので、これらも経費に計上できません。
 また、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料などの社会保険料は、経費ではなく、所得控除(社会保険料控除)として所得から控除できるものです。

③駐車違反などの罰金、科料および過料など

 罰則という意味合いのため、経費になりません。

④同一生計親族に支払う地代家賃、借入金の利息の支払い、給与の支払い

 同一生計親族とは、同じ財布で生活している家族のことです。同居する親族は同一生計親族と推定されます。
 しかし、同居親族でなければ同一生計親族ではないのかというと、厳密には異なります。例えば、別居している親族でも、仕送りなどの生活費のやりとりがあれば、同一生計親族になります。
 同一生計親族との間でやりとりした金銭は、同じ財布の中でのことになるため、経費になりません。また、受け取った親族にとっても、収入になりません。
 唯一の例外は、青色事業専従者給与です。事業的規模や届け出などの要件を満たした青色事業専従者給与のみ、経費になります。

⑤個人事業主の福利厚生費

 福利厚生費は従業員のためのものです。個人事業主に対する福利厚生費は認められません。
また、家族従業員に対する福利厚生費も、家族以外の従業員がいない場合は、経費として計上することは難しくなります。

POINT
「経費にならないもの」を押さえておく

 解説
Knees bee(ニーズビー)税理士法人
(東京都千代田区)代表 渡邊浩滋税理士・司法書士

危機的状況であった実家の賃貸経営を引き継ぎ、立て直した経験から2011年開業。18年大家さん専門税理士ネットワークを設立し、全国の家主を救うべく活動中。22年法人化。「賃貸住宅フェア」などでの講演も多数。

(2024年4月号掲載)

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