【連載】家主の賢いキャッシュフロー改善:4月号

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税金を抑える
~経費の勘違い! 節税商品の実態③~

 キャッシュフローを改善するためには、①収入を上げる②支出を下げる③税金を抑える、この三つしかありません。前回に続き、③の税金を抑える方法を解説します。

 前回、節税商品の仕組みについて伝えました。今回は、節税商品は本当に回収ができるのかについて、話します。

節税商品での失敗

 大家さんから「いい節税商品はありませんか」という質問をよくされます。私はこのような相談を受けるとき、自身の苦い経験を伝えるようにしています。このことから、もう二度と節税商品を紹介しないと誓っています。税理士である私自身が、節税商品で失敗をしているのです。

 それは、クレーンゲーム機の投資詐欺被害に遭ったことです。この事実を公開することは、正直、躊躇ちゅうちょしました。しかし、同じような被害に遭う人を一人でも減らしたいという思いから、あえて共有します。

1年半後、回収不可能に

 話は7年ほど前にさかのぼります。取引銀行の担当者から持ちかけられた投資案件は、一見、とても魅力的なものでした。1台50万円のクレーンゲーム機を購入し、それをゲームセンターに貸し出して設置する。その売り上げから分配金を受け取るというビジネスモデルです。

 このスキームの特徴は以下のとおりでした。

・機械は3年で減価償却可能
・単純な構造であるため故障リスクが低い
・インバウンド需要が見込める
・年利回り24%以上
・償却後に買い取り保証
 
 さらに、銀行担当者が「運営会社の決算書も確認済みで、問題なし」と太鼓判を押していました。これだけの条件がそろえば、魅力的に映らないはずがありません。私は1000万円を投資し、クレーンゲーム機を20台購入する契約をしました。

 少々怪しいと感じながらも、自ら検証するために投資したという側面もあります。

 その後、最初の1年間は、月に20万円程度の分配金がきちんと振り込まれていました。そのため、節税を熱望する一部のお客さまにもこの商品を紹介してしまいました。

 しかし、1年半が経過したところで運営会社は倒産。「コロナによる来客数減少」を理由に挙げていましたが、恐らく以前から資金繰りが逼迫ひっぱくしていたのでしょう。結局、ゲーム機もお金も戻ってきませんでした。

高利回りの商品に潜む危険

 この失敗から学んだ教訓は、「利回りは元本を満額回収できて初めて意味を持つ」ということです。年24%の高利回りも、元本が回収できなければ意味がありません。1年間順調に分配金が支払われたからといって、その後も安全とは限らないのです。満額回収し、問題ないことまで確認してから紹介すべきだったと今でも後悔しています。

 資金繰りに窮した企業が、最後の手段として魅力的な節税商品を作り出すことは、ビジネス界では珍しくない現象です。高利回りや税務メリットをうたう商品ほど、実は危険が潜んでいる可能性があることを知っておいてもらいたいのです。

解説
Knees bee(ニーズビー)税理士法人(東京都千代田区)
代表 渡邊浩滋税理士・司法書士

危機的状況であった実家の賃貸経営を引き継ぎ、立て直した経験から2011年開業。18年大家さん専門税理士ネットワークを設立し、全国の家主を救うべく活動中。22年法人化。「賃貸住宅フェア」などでの講演も多数。

(2025年4月号掲載)

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