家主である強みを生かして税務対応

 全国に税理士は約8万人、事務所は約5000ある。その中で不動産に強い税理士は一部に過ぎないだろう。ましてや税理士自身も賃貸経営をしているケースは限られる。今回は税理士法人を経営しつつ、約300戸の不動産を所有する税理士法人佐久間会計事務所(さいたま市)の代表税理士である佐久間大介に、不動産事業の強みをどのように税務業務に生かして展開しているのかを聞いた。

税理士法人佐久間会計事務所 佐久間大介 代表税理士(49)

 税理士法人佐久間会計事務所は、1970年に設立し、現在、1000社を超えるクライアントを抱える。クラウド会計の導⼊や、経理の効率化の⽀援、不動産オーナーへの⽀援、相続税申告や、2次相続対策も含めた⽣前対策など、税務に限らず幅広い困りごとに対応している。

 従業員は49人(2024年4月時点)おり、チーム制で顧客を担当。17年からは国税OBの税理⼠が在籍し、申告書の品質チェックを⾏っているため、税務調査にも強い。不動産特化型の税理士法人として、23年の売り上げは10年ほど前の約7・4倍。さいたま市内でも成長著しい税理士法人として注目を集めている。

 代表税理士の佐久間大介氏は、かつて代表だった父親が亡くなり、08年に代表に就任。先代は「お客さま第一主義」を貫き、顧客のために寝食を忘れるタイプだった。「当時は自宅の隣に事務所があったため、子どものときは土曜・日曜関係なくいつも仕事をしている印象でした。それだけいつもお客様のために働いていたと思います」と父親について振り返る。

 その先代の信念を引き継ぎ、30代にJC(青年会議所)に入会し、地元の経営者との人脈を広げた。事業拡大意欲があった佐久間氏は、JCを卒業した40代から、営業を強化し、クライアント数を増やしていった。

 同事務所の強みは地元企業へのネットワークと、佐久間代表が不動産オーナーであること。今では税理士兼不動産オーナーの二刀流であることを最大の武器としている佐久間氏は、24年3月末時点で292戸のマンションを所有。実体験に基づいた不動産関連のサポートを得意とする。また銀⾏融資や資⾦繰り、節税対策の経験や実績が豊富である点も強みだという。

 佐久間氏が不動産オーナーになったきっかけは、11年に区分所有マンション投資をしたこと。だが、この区分所有マンション投資で苦い経験をした。電話による営業を受けて3戸を一度に購入したのだが、金利が高く大して利益がなかったため、数年後に売却。次は14年に地方都市のアパートを3棟購入。大きな収益にはならなかったが、キャッシュフローは区分所有マンションよりも良いことを知ったという。

 家主の会にも入り、いろいろな情報を集めていく中で、着目したのが消費税還付だった。そこで一気に顧客を拡大した。

 そんな同事務所は、別会社で宅地建物取引事業の免許を取得して5年ほど前から不動産事業部を立ち上げ展開している。「23年以降は相続相談に絡む不動産売買相談にも関り、今後も幅広い相続相談を受けていきます」(佐久間氏)
24年は東京の「賃貸住宅フェア」にブースを出展し、さまざまなセミナーを開催していくつもりだ。

(2024年7月号掲載)

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