隣接する不動産の所有者間で起こり得る敷地利用に関するトラブル。法律に基づいた対応策や解消法を伝えます。
Q.隣地から雨水が流れてきて困っています。ついたてを立ててせき止めてもいいですか?
私が管理するアパートは、少し傾斜がある地区に立っています。そのため、雨が降ると隣地に降った大量の雨水がアパートの土地に流れ込んできます。最近は地球温暖化のためか、流れ込む雨水の量も多く、先日の大雨では、私が季節の花を植えた花壇の土も流されてしまいました。そこで、隣地から私の土地に雨水が流れてこないようにするために、私の土地についたてを設置して水をせき止めてもいいでしょうか?
A.地盛りが原因の場合はついたての設置は可能
土地はどうやっても動かせませんし、水は上から下に流れてきてしまいますので、どうしても近隣の土地との間で水に関するトラブルは生じてしまいます。そこで、民法は以下のような水流に関する規定を置いています。
「土地の所有者は、隣地から水が自然に流れてくるのを妨げてはならない」(民法214条)
このように、土地の所有者は隣地から流れてくる水をせき止めてはならないと定めているのですが、ここでのポイントは、同条が「自然に」流れてくる水について定めている点です。仮に、隣地所有者が土地を地盛りした結果として雨水が流れ込んできた場合、これは「自然に」流れてきた水ではないため、流水をせき止める行為は必ずしも禁止されません。
相談の事案の場合、少し傾斜がある地区に立っているとのことなので、隣地が地盛りされたものではなさそうです。そうであれば、民法214条が適用され、相談者はついたてを設置して水をせき止めることはできないことになります。
これに対して、仮に隣地で地盛りがされており、その地盛りが原因で流水が発生していた場合には、相談者はついたてを設置して水をせき止めることができます。この場合、流水が発生した原因や流水の程度などの個別の事案にもよりますが、相談者は土地についたてなどを設置するだけでなく、隣人に流水が発生しないよう積極的に請求することができる場合もあると考えられます。
「土地の所有者は、隣地から水が自然に流れてくるのを妨げてはならない」(民法214条)
「自然に」流れてくる水をせき止めてはいけません。
ただし、隣地所有者が土地を地盛りしたことが原因で水が流れてくる場合には、流水をせき止める行為は禁止されません。
TMI総合法律事務所(東京都港区)
野間敬和弁護士
1995年、同志社大学大学院法学研究科修了。97年、弁護士登録。2003年、バージニア大学ロースクール修了。04年、ニューヨーク州弁護士資格取得。同年、メリルリンチ日本証券出向。08~11年、筑波大学大学院ビジネス科学研究科講師、12年、証券・金融商品あっせん相談センターあっせん委員。11~14年、最高裁判所司法研修所民事弁護教官。
辻村慶太弁護士
2014年、一橋大学法科大学院修了、15年に弁護士登録。
(2024年12月号掲載)
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【連載】教えて! 弁護士さん 隣地トラブル解消相談:11月号掲載
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