【連載】教えて! 弁護士さん 隣地トラブル 解消相談:1月号

法律・トラブル不動産関連制度

隣接する不動産の所有者間で起こり得る敷地利用に関するトラブル。法律に基づいた対応策や解消法を伝えます。

Q.塀をどこに設置すればいいか悩んでいます 隣の敷地との境界線上でもいいですか?

 所有している土地にアパートを建築することになりました。この土地にはまだ隣地との塀がなく、隣地には住居があるため、この機会に一緒に塀を設置しようと考えています。私の土地を有効利用してアパートの庭の花壇も大きくしたいため、私の土地と隣地との「境界線上」に立てることを検討中です。塀を設置すれば隣地の建物所有者にとってのプライバシー保護にもなると思いますが、隣地との境界線上に塀を設置することは可能ですか。

A.隣人との「共有」になり 自由に変更ができない

 塀を境界線上に設置するということは、塀の幅の半分程度は隣地を使用することになりますね。そのような場合には、基本的に隣地所有者に承諾してもらう必要があります。
もっとも、隣地所有者から承諾してもらえない場合であっても、相談者は、自身の所有する建物と隣地の建物との間の空き地に、プライバシー保護のために、塀や生け垣などを設置することを求めることができます(「囲障設置権」民法225条)。この場合、塀の設置費用は、隣地所有者との共同の費用となります。ただし、以下の点に注意が必要です。
●囲障設置権は、隣地所有者に共同して塀の設置を求めることができる権利です。相談者が隣地所有者に無断で塀を設置して、設置費用を請求することは認められていません。
●設置した塀は、相談者と隣地所有者との「共有」(共同所有)となり、基本的には、相談者と隣地所有者が同じ割合で共同所有していると取り扱われることになります。(民法250条)
●相談者自身の意思決定のみで塀を建て替えることができず、隣地所有者と共同して行う必要があります。
●塀の色や形状も、自身の意思決定のみで変更することはできません。
なお隣地所有者に承諾してもらう場合でも、建物が隣接した土地の境界線上に設けた塀は、基本的には、隣地所有者との共有物であると取り扱われることになります。(民法299条)
 このように、境界線上に塀を設置する場合には「共有」という厄介な問題が生じてしまいます。実際には境界線から自己所有地側に後退した部分に自身の費用で塀を設置して「共有」が発生しないようにしている場合が多いのではないでしょうか。

【ここがポイント!】

隣地との境界線上に塀を設置する場合

☑隣地所有者の承諾が必要
☑隣地所有者との「共有」(共同所有)と取り扱われる(費用も同じ割合)
☑建て替えや塀の色・形状の変更は、共同して行う必要がある
→自身の意思決定のみで変更できない

私たちが答えました!

TMI総合法律事務所(東京都港区)
野間敬和弁護士

1995年、同志社大学大学院法学研究科修了。97年、弁護士登録。2003年、バージニア大学ロースクール修了。04年、ニューヨーク州弁護士資格取得。同年、メリルリンチ日本証券出向。08~11年、筑波大学大学院ビジネス科学研究科講師、12年、証券・金融商品あっせん相談センターあっせん委員。11~14年、最高裁判所司法研修所民事弁護教官。

辻村慶太弁護士

2014年、一橋大学法科大学院修了、15年に弁護士登録。

(2025年1月号掲載)

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