3.定期報告の流れと注意点
定期報告を実施するときは、特定行政庁ごとに対象となる建物や点検の年度が異なるため事前に確認が必要だ。定期報告の流れ・注意点について押さえておこう。
事業者への急な依頼で調査費用がかさむ
定期報告は、事業者への予約から検査実施まで、2週間程度の期間がかかる。その後の報告書の作成を考えれば、特定行政庁への報告期限までに最低でも1~2カ月は見ておきたい。
定期報告をするにあたっては建築物の検査済証、竣工図書、行政からの通知書などが必要だ。予約時に事業者から必要書類が伝えられるため、準備しておくとよい。
所要時間は、建築設備定期検査・特定建築物定期調査・防火設備定期検査でそれぞれ半日程度となるケースが多いという。しかし、これら三つの点検をまとめて行った場合でも、かかる時間は半日~1日程度とほぼ変わらない。まとめて行うのがおすすめだ。
特定行政庁への報告期限は12月や3月であるケースが多く、その2~3カ月前から事業者には予約が殺到するため、早めに依頼しよう。
建物の立地により異なる点検内容・タイミング
定期報告は特定行政庁によって、点検対象設備や報告期限が異なる。例えば、大阪市では建築設備定期検査のうち、給排水設備の点検は実施しなくても問題ない。
そのほか、特定建築物定期調査のタイミングは3年ごとと定められている地域が多いが、神奈川県は特定行政庁が管轄する地域によっては、年1回となっている。また大阪市は建物の種類ごとに点検する年度を決めているが、埼玉県は建ててからの年数で点検するタイミングを定めている。
茶橋社長は「共同住宅の場合、大阪府では建築設備定期検査は対象外になることが大半です。しかし、東京都では共同住宅の多くが検査の対象になります。複数の都道府県に賃貸物件を所有しているオーナーは、検査の対象になるのか地域ごとに確認する必要があります」と話す。
そもそも定期報告が必要だという旨の通知をしてくれない特定行政庁もある。督促状が届いてから報告を忘れていることに気付き、急いで定期報告をするケースが少なくない。
このように、特定行政庁ごとに細かい決まりがある。タイミングや点検の内容が知りたいオーナーは、所有物件の所在地を管轄する特定行政庁や定期報告を請け負う事業者に質問しよう。
なお建築士も定期報告のできる有資格者だが、主な仕事は図面作成や設計をすること。建築士が定期報告を実施している事務所はほとんどない。実際に、テックビルケアではオーナーの相談を受けた建築会社や設計事務所からの依頼も多いという。
4.定期報告にかかる費用
定期報告に要する費用は、建物を管轄する特定行政庁が定めた検査内容によって異なる。費用について見ていこう。
定期報告の費用は、賃貸住宅の広さや階層などの条件によって異なるが、木造3階建て30戸程度のマンションで見ていく。この物件では建築設備定期検査と特定建築物定期調査、防火設備定期検査がそれぞれ6万~7万円程度かかるため、三つすべてを実施すると18万~21万円程度が目安となる。さらに手数料としての費用の内訳は、現地調査(検査)費用や特定行政庁への申請代行諸経費、初回報告書作成費などだ。
急ぎで依頼した場合、人員や機材の確保のため点検費用がかさむケースも珍しくない。定期報告の費用を抑えるためには早めの予約がこつとなる。
一方、共同住宅の場合は、防火設備定期検査が対象になるケースはほとんどないという。自動で閉まる防火扉や防火シャッターが設置されている共同住宅は、地下駐車場を設置している物件やタワーマンション以外にほとんどないからだ。
なお特定建築物と防火設備の検査は、新築であれば初回は免除する自治体も多い。
(2025年 2月号掲載)
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