今だから知っておきたい 不動産の売却法

法律・トラブル不動産関連制度

仲介でスムーズに売るための事業者の選び方

 所有する賃貸不動産を売却したいとき、その方法には「自分で買主を探して売る」「不動産会社に買い取ってもらう」「不動産会社に買主を探してもらい売買の仲介も依頼する」の三つがある。ただし不動産を個人間で売買することは難しく、また不動産会社に買い取ってもらう場合は仲介よりも売却額が低くなるため、不動産会社に売買の仲介を依頼するのが一般的だ。仲介での売却をスムーズに行うための事業者選定のポイントと媒介契約について解説する。

■余裕を持った売却計画

 納得のいく売却を行うためには、不動産会社にいきなり査定を依頼するのではなく、事前準備をしっかり行うことが肝要だ。周辺相場の調査や書類の準備に加え、希望の売却額、いつまでに売りたいか、といった希望条件を明確にしておくといい。特に時間的な余裕がなければ、安売りせざるを得なくなる場合もあるため、できるだけ余裕を持ったスケジュールを立てるのが望ましい。

 売却完了までの道筋をイメージし(図1)、見通しを立てておこう。

■物件の査定と事業者選び

 売却価格の相場を把握したうえで、不動産仲介事業者に査定を依頼する。査定額は事業者によって異なるため、複数の事業者に依頼しよう。

 オーナーは査定額を高く提示する事業者に引かれがちだが、査定額が高いからといっていい事業者だとは限らない。周辺相場と比較して高すぎると買い手が見つからず、後々値引きが必要になることもある。本当にその価格で売れそうなのか、見極めることが重要だ。

 事業者を選ぶ際のポイントは、投資用不動産物件を扱っていること。居住系の不動産と収益不動産では得意とする事業者が異なる。さらに収益不動産の中でも一棟マンションや区分マンションなど得意分野が分かれるため、スムーズな売却を目指すなら、自身の物件の条件に強い事業者を慎重に選びたい。
 それに加えて投資用不動産の場合は賃借人がいるため、賃貸借契約内容の引き継ぎが必要になる。契約内容や設備点検などの建物維持に関する引き継ぎ事項を事業者が熟知していることが望ましい。

 また賃貸管理の状況が査定額に影響することもあるため、賃貸管理にも詳しい事業者であればより安心できる。

 どの事業者も同じように見えてしまうという人は「賃貸不動産経営管理士」「投資不動産取引士」がいるかどうかや、最近の売買実績を尋ねてみるといいだろう。

■三つの媒介契約から選ぶ

 仲介事業者に実際に仲介を依頼するときには、その事業者と媒介契約を結ぶことになる。

 媒介契約には専属専任媒介、専任媒介、一般媒介の3種類があり、それぞれ異なる特徴がある。(図2)

 専属専任媒介契約と専任媒介契約は契約できる事業者は1社のみになるが、事業者は売主に対して売買状況の報告義務があり、また顧客に販売できれば事業者の利益も上がるため、売却活動に力を入れてくれる。特段の事情がなければ、専任媒介契約で1社と契約するのがおすすめだ。

 一般媒介契約は何社でも契約を結べるが、事業者に売買状況の報告義務はなく、専任媒介契約に比べると力の入れ具合が違ってくる。また多くの会社に依頼しすぎると事業者のやる気をそいでしまったり、オーナーが売買契約完了の連絡をし忘れるなどのトラブルが発生したりする場合もある。一般媒介契約を選ぶのであれば3社程度にするのが現実的だろう。

■任せっ放しはNG

 不動産売却時の仲介手数料は、売却価格によって、宅地建物取引業法で上限が定められている。売却価格が400万円を超える場合は「仲介手数料の上限=(売却価格の3%+6万円)+消費税」と計算できる。

 そして仲介手数料は売主・買主の双方から受け取ることができるため、一つの事業者が売主と買主の両方を仲介すれば、手数料収入が2倍になる。

 仲介事業者にとっては自社で買い手を探したいあまりに「REINS(レインズ)」に登録しないなどの売却情報の秘匿(囲い込み)をしたり、相場より大きく値下げをしたりすることもある。専任媒介契約だからと仲介事業者任せにせずに、オーナーも目を光らせておくことが重要だ。

(2025年 2月号掲載)

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