【連載】教えて! 弁護士さん 隣地トラブル解消相談:2月号

法律・トラブル不動産関連制度

隣接する不動産の所有者間で起こり得る敷地利用に関するトラブル。法律に基づいた対応策や解消法を伝えます。

Q.隣地から越境してきた柿の木の枝や竹やぶ。柿の実やタケノコは採って食べてもいいですか?

 隣の柿の木や竹やぶがだんだん大きくなってきています。今後、隣地の枝が私の敷地に越境してきたら、私の花壇に日光が当たらなくなってしまいます。また地下を通って木の根やタケノコも越境して、花が駄目になってしまわないか心配です。越境してきた枝やタケノコは、私が切っても問題ないでしょうか? 私の庭に落ちてきた柿の実や、生えてきたタケノコは採って食べてもいいでしょうか。

A.柿の実は隣人の所有物 タケノコは採取OK

 相談者の土地に越境してきた枝やタケノコは、元々は隣地の所有物であった柿の木や竹やぶが大きくなったものです。これらが相談者の所有する土地に越境してきた場合、相談者の土地の所有権を侵害していると評価することになります。

 この点、民法の大原則として、土地の所有権を侵害されたからといって、所有者が実力行使によって物を撤去することは許されません。裁判所に訴訟を提起して勝訴判決をもらって「強制執行」という手続きを利用して、国の力で物を撤去してもらうことが必要になります。ただし、隣地から枝や根が越境してきている場合には、民法に特別なルールが設けられています。

 隣地から枝が越境している場合、原則として相談者自らがこれを切除することは許されず、まずは隣地の木の所有者に越境している枝を切るよう請求する必要があります(民法233条1項)。ただし、切除を請求したが、隣地所有者が相当期間に切除しない場合や、隣地所有者が不明もしくはその所在が不明な場合、または、急迫した事情があるときは、例外的に相談者自ら枝を切ることも認められます。

 これに対して、隣地からタケノコが越境してきた場合には、タケノコは枝の場合と異なり、相談者自らがタケノコを切り取ることが許されます。(民法233条4項)

 では、隣地から越境した木の枝から落下した柿の実や、越境したタケノコを相談者が食べてもいいのでしょうか。この点、柿は、元々は隣人の所有物である柿の木に実った物なので、相談者の庭に落下したとしても柿の実は隣人の所有物であると考えられます。

 一方、地面から生えているタケノコは相談者の土地の一部になり、相談者が切り取ったタケノコは相談者の所有物になると考えられています。そのため、相談者は、柿の実は食べては駄目ですが、タケノコは食べて大丈夫だと考えられます。

【ここがポイント!】

☑枝から落下した柿の実
⇒柿の木は隣人の所有物であるため実も同様であり、食べてはいけない
☑自分の所有地に生えてきたタケノコ
⇒自分の土地の一部になるため、採って食べてもOK

私たちが答えました!

TMI総合法律事務所(東京都港区)
野間敬和弁護士

1995年、同志社大学大学院法学研究科修了。97年、弁護士登録。2003年、バージニア大学ロースクール修了。04年、ニューヨーク州弁護士資格取得。同年、メリルリンチ日本証券出向。08~11年、筑波大学大学院ビジネス科学研究科講師、12年、証券・金融商品あっせん相談センターあっせん委員。11~14年、最高裁判所司法研修所民事弁護教官。

辻村慶太弁護士

2014年、一橋大学法科大学院修了、15年に弁護士登録。

(2025年2月号掲載)

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